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7-20 戻ってきたアリアドネ
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「ギャアアーッ!!」
男の悲鳴が上がった。
「!」
アリアドネは男の悲鳴が恐ろしく、思わず耳をふさいだ。
「おいっ!マットッ!しっかりしろっ!」
1人の兵士が駆け寄る。
「貴様っ!何しやがるっ!」
別の兵士がロイに襲いかかる。
ヒュッ!
ヒュッ!
ロイの両手が同時に動いた、次の瞬間―。
「グアアアアアッ!!」
飛びかかろうとした兵士から悲鳴があがる。いつの間にか兵士の両太腿にはダガーが1本づつ突き刺さっていた。
「ウグッ!」
あまりの激痛に兵士は呻きながらその場にうずくまった。
「ロイ…き、貴様…何しやがるんだ…?」
1人、傷を負わされていない兵士が恐ろしい形相でロイを睨みつけた。
「この女はオズワルド様が目を掛けられた人物だ。よって手出しは許さない」
冷たい声で言い放つロイ。
「な、何だと…?まだガキのくせに生意気な…」
ダガーが突き刺さっている兵士は額に脂汗をにじませながら、激しい怒りの眼差しをロイに向けている。
一方、手を切られた兵士はその場にうずくまり、切り裂いた布で傷を押さえているものの、布は血で真っ赤に染まっている。
ロイはその兵士を冷たい目で一瞥すると言った。
「早いところ、そいつを医務室に運んだほうがいい。指が取れかかっているからな」
「な、何だってっ?!き、貴様…っ!いつか殺してやるっ!」
ダガーを突き立てられた兵士が憎々しげにロイを睨みつけるも、ロイは全く表情を変えない。
無表情な顔で恐ろしいことを言ってのけるロイの姿にアリアドネはゾッとした。
(い、いや…怖いわ…この人…。平気で恐ろしい事を言うなんて…あんなに綺麗な顔をしているのに…)
震えるアリアドネにロイは声を掛けた。
「行くぞ」
「は、はい…!」
ロイは3人の兵士たちに目もくれずに歩き始め、アリアドネは慌ててロイの後を追った。
「貴様…覚えてろよっ!!」
兵士の怒鳴り声が大きく廊下に響き渡るのを聞きながら―。
****
長い沈黙…。
息詰まる空気の中、ようやく仕事場へ続く階段に辿り着くとロイが振り返った。
「着いたぞ。ここから先は1人でもう帰れるだろう?」
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございました」
アリアドネは丁寧に頭を下げた。
「オズワルド様の御命令だからな」
ロイはそれだけ言うと一度もアリアドネに視線を合わす無く元来た地下通路を歩き去って行った。
「ふぅ…」
1人になって、ようやくロイから開放されたアリアドネは安堵のため息をつくと目の前の階段を登り仕事場へと戻った。
するとすぐにダリウスが駆けつけてきた。
「アリアドネッ!」
「あ…ダリウス」
「アリアドネ、大丈夫だったのか?何も危険な目に遭わなかったか?」
駆け寄ってきたダリウスはアリアドネの肩を掴んで尋ねてきた。
「え、ええ…私なら平気よ。何も危険な目に遭っていないわ」
アリアドネは嘘をついた。
(絶対にさっきの話は出来ないわ…。ダリウスが心配してしまうもの)
「そうか…。それなら良かった」
ダリウスが安堵のため息をついた時―。
「アリアドネッ!大丈夫だったのかい?!」
マリアとイゾルネが駆けつけてきた。彼女たちもアリアドネが連れ去られていく様子を見ていたのだ。ただ、相手がこの城の騎士だった為に成すすべもなかったのである。
「はい、大丈夫です。この通り、何でもありませんから」
アリアドネは2人に笑みを浮かべた。
「すまなかったね…相手が騎士様だったので、どうすることも出来なかったんだよ」
マリアが申し訳無さげに頭を下げた。
「何しろ、この城では騎士は特別な存在だから…」
イゾルネは唇を噛んだ。
「いいんです。手荒なことは一切受けていませんから。ただ…」
アリアドネの表情が曇った。
「どうしたんだ?」
ダリウスが声を掛けた。
「わ、私…オズワルド様からミカエル様とウリエル様の専属メイドになるように命じられました…」
俯くアリアドネの言葉に、その場にいた3人は息を飲んだ―。
男の悲鳴が上がった。
「!」
アリアドネは男の悲鳴が恐ろしく、思わず耳をふさいだ。
「おいっ!マットッ!しっかりしろっ!」
1人の兵士が駆け寄る。
「貴様っ!何しやがるっ!」
別の兵士がロイに襲いかかる。
ヒュッ!
ヒュッ!
ロイの両手が同時に動いた、次の瞬間―。
「グアアアアアッ!!」
飛びかかろうとした兵士から悲鳴があがる。いつの間にか兵士の両太腿にはダガーが1本づつ突き刺さっていた。
「ウグッ!」
あまりの激痛に兵士は呻きながらその場にうずくまった。
「ロイ…き、貴様…何しやがるんだ…?」
1人、傷を負わされていない兵士が恐ろしい形相でロイを睨みつけた。
「この女はオズワルド様が目を掛けられた人物だ。よって手出しは許さない」
冷たい声で言い放つロイ。
「な、何だと…?まだガキのくせに生意気な…」
ダガーが突き刺さっている兵士は額に脂汗をにじませながら、激しい怒りの眼差しをロイに向けている。
一方、手を切られた兵士はその場にうずくまり、切り裂いた布で傷を押さえているものの、布は血で真っ赤に染まっている。
ロイはその兵士を冷たい目で一瞥すると言った。
「早いところ、そいつを医務室に運んだほうがいい。指が取れかかっているからな」
「な、何だってっ?!き、貴様…っ!いつか殺してやるっ!」
ダガーを突き立てられた兵士が憎々しげにロイを睨みつけるも、ロイは全く表情を変えない。
無表情な顔で恐ろしいことを言ってのけるロイの姿にアリアドネはゾッとした。
(い、いや…怖いわ…この人…。平気で恐ろしい事を言うなんて…あんなに綺麗な顔をしているのに…)
震えるアリアドネにロイは声を掛けた。
「行くぞ」
「は、はい…!」
ロイは3人の兵士たちに目もくれずに歩き始め、アリアドネは慌ててロイの後を追った。
「貴様…覚えてろよっ!!」
兵士の怒鳴り声が大きく廊下に響き渡るのを聞きながら―。
****
長い沈黙…。
息詰まる空気の中、ようやく仕事場へ続く階段に辿り着くとロイが振り返った。
「着いたぞ。ここから先は1人でもう帰れるだろう?」
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございました」
アリアドネは丁寧に頭を下げた。
「オズワルド様の御命令だからな」
ロイはそれだけ言うと一度もアリアドネに視線を合わす無く元来た地下通路を歩き去って行った。
「ふぅ…」
1人になって、ようやくロイから開放されたアリアドネは安堵のため息をつくと目の前の階段を登り仕事場へと戻った。
するとすぐにダリウスが駆けつけてきた。
「アリアドネッ!」
「あ…ダリウス」
「アリアドネ、大丈夫だったのか?何も危険な目に遭わなかったか?」
駆け寄ってきたダリウスはアリアドネの肩を掴んで尋ねてきた。
「え、ええ…私なら平気よ。何も危険な目に遭っていないわ」
アリアドネは嘘をついた。
(絶対にさっきの話は出来ないわ…。ダリウスが心配してしまうもの)
「そうか…。それなら良かった」
ダリウスが安堵のため息をついた時―。
「アリアドネッ!大丈夫だったのかい?!」
マリアとイゾルネが駆けつけてきた。彼女たちもアリアドネが連れ去られていく様子を見ていたのだ。ただ、相手がこの城の騎士だった為に成すすべもなかったのである。
「はい、大丈夫です。この通り、何でもありませんから」
アリアドネは2人に笑みを浮かべた。
「すまなかったね…相手が騎士様だったので、どうすることも出来なかったんだよ」
マリアが申し訳無さげに頭を下げた。
「何しろ、この城では騎士は特別な存在だから…」
イゾルネは唇を噛んだ。
「いいんです。手荒なことは一切受けていませんから。ただ…」
アリアドネの表情が曇った。
「どうしたんだ?」
ダリウスが声を掛けた。
「わ、私…オズワルド様からミカエル様とウリエル様の専属メイドになるように命じられました…」
俯くアリアドネの言葉に、その場にいた3人は息を飲んだ―。
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