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10-9 目覚めたアリアドネ
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その頃―
「う…」
ガタガタと揺れる荷馬車の中でアリアドネは目覚めた。
「え…?ここは…?」
自分が荷馬車の中で寝袋と毛布にくるまれていることを知ったアリアドネは戸惑った。
荷馬車にはしっかり幌が掛けてあり、外の景色が見えない。
「一体どうなっているの…?」
荷馬車には大きな麻袋に、木箱といった様々な物が積まれている。
自分の置かれている状況を知る為に、アリアドネは毛布を身体に巻きつけると背後の幌を少しめくった。
「え…?」
見ると、アリアドネを乗せた荷馬車はまだ雪が残る林の中を走っていた。
そしてまるで護衛するかのように、マント姿の浅黒い肌の青年が直ぐ側で馬を走らせていた。
「あ!お目覚めですかっ?!」
青年がアリアドネの姿に気付き、声を掛けてきた。
「え?え、ええ…」
「お待ち下さいっ!すぐにダリウス様に報告して参りますのでっ!」
青年は嬉しそうに笑みを浮かべると、前方に馬を走らせていった。
「ダリウス様…?一体どういうことなの…?」
自分の置かれた状況がさっぱり理解出来無かったアリアドネはポツリと呟いた時、突然それまで動いていた馬車が止まった。
「馬車が止まった…?」
その時―。
「アリアドネッ!目が覚めたのかっ?!」
前方の幌がまくられ、馬にまたがったマント姿のダリウスが現れた。
「ダ、ダリウスッ?!」
その時アリアドネはダリウスに布で口を塞がれて、意識を失ったことを思い出した。
「なかなか目が覚めないから本当に心配したよ。」
ダリウスは笑みを浮かべてアリアドネを見つめている。
「ダリウス…一体これはどういうことなの?」
警戒しながらアリアドネはダリウスに尋ねた。
「ああ、君をアイゼンシュタット城から救い出してあげたんだよ」
「え…?何ですって…?」
悪怯れる様子もなく、自分を拉致した事を説明するダリウスが信じられなかった。
「どうしてそんな事をしたの?私は一度だって助けを求めていなかったのに?」
その時―。
「ダリウス様。一刻も早く次の目的地へ向かわなければ…」
先程とは別の青年がダリウスに近づき、声を掛けてきた。
「ああ、確かにそうだな…。よし、行くぞ!」
ダリウスは青年と一緒に馬車から離れようとした。
「ダリウスッ!待って!話はまだ終わっていないわ!」
これ以上遠くに連れて行かれてはたまらない。
そう思ったアリアドネは必死で叫んだ。
「すまない。今は詳しく説明している時間がない。いい子だからその荷馬車の上でじっとしていてくれ。外はまだ寒いからそこの毛布を身体に巻いていればいい。よし、荷馬車を走らせてくれ」
ダリウスは御者に告げると、アリアドネに背を向けた。
「待って!ダリウスッ!行かないで!」
しかし、ダリウスはアリアドネの訴えにも耳を課さずに荷馬車から去ってしまった。
「そ、そんな…」
アリアドネは成すすべも無く、動く荷馬車の上に取り残されてしまった。
「一体、どうすればいいの…?私がいなくなったらミカエル様とウリエル様のお世話は…。それに…ヨゼフさん…」
アリアドネの頭にあるのはミカエルとウリエル、それにヨゼフのことだけであった。
この時のアリアドネは、自分を取り戻す為にエルウィン達が出立の準備をしているとは思いもしていなかったのだ―。
「う…」
ガタガタと揺れる荷馬車の中でアリアドネは目覚めた。
「え…?ここは…?」
自分が荷馬車の中で寝袋と毛布にくるまれていることを知ったアリアドネは戸惑った。
荷馬車にはしっかり幌が掛けてあり、外の景色が見えない。
「一体どうなっているの…?」
荷馬車には大きな麻袋に、木箱といった様々な物が積まれている。
自分の置かれている状況を知る為に、アリアドネは毛布を身体に巻きつけると背後の幌を少しめくった。
「え…?」
見ると、アリアドネを乗せた荷馬車はまだ雪が残る林の中を走っていた。
そしてまるで護衛するかのように、マント姿の浅黒い肌の青年が直ぐ側で馬を走らせていた。
「あ!お目覚めですかっ?!」
青年がアリアドネの姿に気付き、声を掛けてきた。
「え?え、ええ…」
「お待ち下さいっ!すぐにダリウス様に報告して参りますのでっ!」
青年は嬉しそうに笑みを浮かべると、前方に馬を走らせていった。
「ダリウス様…?一体どういうことなの…?」
自分の置かれた状況がさっぱり理解出来無かったアリアドネはポツリと呟いた時、突然それまで動いていた馬車が止まった。
「馬車が止まった…?」
その時―。
「アリアドネッ!目が覚めたのかっ?!」
前方の幌がまくられ、馬にまたがったマント姿のダリウスが現れた。
「ダ、ダリウスッ?!」
その時アリアドネはダリウスに布で口を塞がれて、意識を失ったことを思い出した。
「なかなか目が覚めないから本当に心配したよ。」
ダリウスは笑みを浮かべてアリアドネを見つめている。
「ダリウス…一体これはどういうことなの?」
警戒しながらアリアドネはダリウスに尋ねた。
「ああ、君をアイゼンシュタット城から救い出してあげたんだよ」
「え…?何ですって…?」
悪怯れる様子もなく、自分を拉致した事を説明するダリウスが信じられなかった。
「どうしてそんな事をしたの?私は一度だって助けを求めていなかったのに?」
その時―。
「ダリウス様。一刻も早く次の目的地へ向かわなければ…」
先程とは別の青年がダリウスに近づき、声を掛けてきた。
「ああ、確かにそうだな…。よし、行くぞ!」
ダリウスは青年と一緒に馬車から離れようとした。
「ダリウスッ!待って!話はまだ終わっていないわ!」
これ以上遠くに連れて行かれてはたまらない。
そう思ったアリアドネは必死で叫んだ。
「すまない。今は詳しく説明している時間がない。いい子だからその荷馬車の上でじっとしていてくれ。外はまだ寒いからそこの毛布を身体に巻いていればいい。よし、荷馬車を走らせてくれ」
ダリウスは御者に告げると、アリアドネに背を向けた。
「待って!ダリウスッ!行かないで!」
しかし、ダリウスはアリアドネの訴えにも耳を課さずに荷馬車から去ってしまった。
「そ、そんな…」
アリアドネは成すすべも無く、動く荷馬車の上に取り残されてしまった。
「一体、どうすればいいの…?私がいなくなったらミカエル様とウリエル様のお世話は…。それに…ヨゼフさん…」
アリアドネの頭にあるのはミカエルとウリエル、それにヨゼフのことだけであった。
この時のアリアドネは、自分を取り戻す為にエルウィン達が出立の準備をしているとは思いもしていなかったのだ―。
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