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10-18 スティーブの悲しみと怒り
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「何故止めるっ?!こいつは…アリアドネに何をしようとしたのか、お前は分かっているのかっ?!」
振り下ろした剣を寸前で止めたエルウィンはスティーブに怒鳴りつけた。
「分かっていますっ!アリアドネ…様から直接話を伺いましたからっ!ですが、それでも剣を収めてください!その者は『カフィア』国の第一王子なのですよ!万一彼を殺せば『レビアス』国まで巻き込んでしまいます!戦争を起こすつもりですか?!陛下がそのようなこと、お許しになるとお思いですかっ?!」
「グッ…!」
スティーブの『国を巻き込んだ戦争』と言う言葉にエルウィンは下唇を噛んだ。
幾ら感情が高ぶり、自分の足で踏みつけられているダリウスがどんなんに憎くても、エルウィン自らが戦争を起こすわけにはいかなかった。
辺境伯の役割…。
それは他国からの敵の侵略を阻む為の防波堤となって、国を…そして人々を守らなければならない。
自分たち自ら戦争を起こすなどと言うことは断じてあってはならないことなのだ。
「だったら…どうすればいいというのだ…?俺は今すぐにでも、こいつを八つ裂きにして殺してやりたいくらいなのに…?」
エルウィンはぎりぎりと歯を食いしばり、剣を向けたままダリウスを睨みつけている。
「……」
ダリウスは無言でエルウィンの憎悪に満ちた視線を受け止めていた。もはや抵抗する気力すらなかったからだ。
「…とりあえず、彼らの拠点を聞き出し…全ての武器を取り上げて『カフィア』国へ返しましょう。ただし、ダリウスは人質として地下牢へ入れればよろしいかと」
スティーブの言葉にエルウィンは忌々し気に舌打ちした。
「チッ!仕方あるまい…。貴様が王族でなければ即刻首をはねていたところだ!」
そして視線をスティーブに向けた。
「スティーブ!」
「はっ!」
敬礼するスティーブにエルウィンは命じた。
「ダリウスを拘束しろっ!」
「御意っ!」
スティーブは腰につけていたロープを外すと未だ床の上に倒れているダリウスに近付き、襟首をつかんで引き起こした。
「ウッ…!」
痛みで呻くダリウスにスティーブは容赦がない。両腕を腰に回させると、ロープで縛りあげていく。
エルウィンは少しの間その様子を見つめ、スティーブに声を掛けた。
「俺はアリアドネの様子を見てくる」
「はい」
スティーブの返事を聞くとエルウィンは剣を鞘に納め、部屋を出て行った。
「…いいのか?」
縛られながらダリウスがスティーブに尋ねて来た。
「何がだ」
ようやくダリウスを縛り上げたスティーブは返事をした。
「エルウィン…アリアドネの元へ行ったぞ」
「ああ…それがどうした。アリアドネ様は元々エルウィン様に嫁ぐ為にアイゼンシュタット城にいらした方なのだ。いいも悪いも無い」
「フン…強がり言いやがって。お前、アリアドネのことが好きなんだろう?俺だったら好きな女をみすみす渡すつもりはないがな。例え、どんな手を使ってでも…」
そして鼻で笑った。
「黙れっ!ダリウスッ!」
ついにその言葉にスティーブは切れ、ダリウスの襟首を掴んで引き起こすと拳で激しく殴りつけた。
バキッ!!
激しい音と共に床に再び倒れこむダリウス。
「貴様は虫唾が走るくらい最低な奴だっ!!王族でなければ俺がとっくに貴様の首をはねていたところだっ!!」
しかし、殴られたショックで気絶したダリウスにスティーブの声が届くはずなどなかった――。
振り下ろした剣を寸前で止めたエルウィンはスティーブに怒鳴りつけた。
「分かっていますっ!アリアドネ…様から直接話を伺いましたからっ!ですが、それでも剣を収めてください!その者は『カフィア』国の第一王子なのですよ!万一彼を殺せば『レビアス』国まで巻き込んでしまいます!戦争を起こすつもりですか?!陛下がそのようなこと、お許しになるとお思いですかっ?!」
「グッ…!」
スティーブの『国を巻き込んだ戦争』と言う言葉にエルウィンは下唇を噛んだ。
幾ら感情が高ぶり、自分の足で踏みつけられているダリウスがどんなんに憎くても、エルウィン自らが戦争を起こすわけにはいかなかった。
辺境伯の役割…。
それは他国からの敵の侵略を阻む為の防波堤となって、国を…そして人々を守らなければならない。
自分たち自ら戦争を起こすなどと言うことは断じてあってはならないことなのだ。
「だったら…どうすればいいというのだ…?俺は今すぐにでも、こいつを八つ裂きにして殺してやりたいくらいなのに…?」
エルウィンはぎりぎりと歯を食いしばり、剣を向けたままダリウスを睨みつけている。
「……」
ダリウスは無言でエルウィンの憎悪に満ちた視線を受け止めていた。もはや抵抗する気力すらなかったからだ。
「…とりあえず、彼らの拠点を聞き出し…全ての武器を取り上げて『カフィア』国へ返しましょう。ただし、ダリウスは人質として地下牢へ入れればよろしいかと」
スティーブの言葉にエルウィンは忌々し気に舌打ちした。
「チッ!仕方あるまい…。貴様が王族でなければ即刻首をはねていたところだ!」
そして視線をスティーブに向けた。
「スティーブ!」
「はっ!」
敬礼するスティーブにエルウィンは命じた。
「ダリウスを拘束しろっ!」
「御意っ!」
スティーブは腰につけていたロープを外すと未だ床の上に倒れているダリウスに近付き、襟首をつかんで引き起こした。
「ウッ…!」
痛みで呻くダリウスにスティーブは容赦がない。両腕を腰に回させると、ロープで縛りあげていく。
エルウィンは少しの間その様子を見つめ、スティーブに声を掛けた。
「俺はアリアドネの様子を見てくる」
「はい」
スティーブの返事を聞くとエルウィンは剣を鞘に納め、部屋を出て行った。
「…いいのか?」
縛られながらダリウスがスティーブに尋ねて来た。
「何がだ」
ようやくダリウスを縛り上げたスティーブは返事をした。
「エルウィン…アリアドネの元へ行ったぞ」
「ああ…それがどうした。アリアドネ様は元々エルウィン様に嫁ぐ為にアイゼンシュタット城にいらした方なのだ。いいも悪いも無い」
「フン…強がり言いやがって。お前、アリアドネのことが好きなんだろう?俺だったら好きな女をみすみす渡すつもりはないがな。例え、どんな手を使ってでも…」
そして鼻で笑った。
「黙れっ!ダリウスッ!」
ついにその言葉にスティーブは切れ、ダリウスの襟首を掴んで引き起こすと拳で激しく殴りつけた。
バキッ!!
激しい音と共に床に再び倒れこむダリウス。
「貴様は虫唾が走るくらい最低な奴だっ!!王族でなければ俺がとっくに貴様の首をはねていたところだっ!!」
しかし、殴られたショックで気絶したダリウスにスティーブの声が届くはずなどなかった――。
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