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11-27 抱擁と涙

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 地下牢にいた東塔の騎士、及び兵士達は全員がエルウィンの傘下に下ることが決定した。
それはやはりエルウィンを恐れての事だった。

『戦場の暴君』。
時にはその圧倒的強さから『軍神』の異名を持つエルウィンの闘気に圧されたからであった――。



**


「やはり、全員エルウィン様の傘下に入りましたな」

作戦会議室でエデルガルトが嬉しそうにエルウィンに話しかけた。

「そうですね。肝心の叔父上のオズワルドももういない。それに俺の傘下に入らなければその場で粛清されるとなると、奴らの取るべき道は1つしかありませんからね」

エルウィンはアイゼンシュタット城の地図を見つめている。

「それで?この後はどうするおつもりですか?」

エデルガルトの質問にエルウィンは少し考え込む素振りを見せ…自分の考えを述べ始めた。

「まずは東塔と南塔の兵の区別を廃止し、新たに隊の編成を組み直そうかと思っています。その後は……もう越冬期間も終わったことなので、あの忌々しい娼婦共を城から追い出し、二度とこの城には上げません」

「なるほど、エルウィン様らしいですな。けれどそうなると今度は越冬期間中の騎士や兵士たちの欲求のはけ口を解消させる方法を別に考えなければなりませんな」

「師匠……それは……」

その言葉にたちまちエルウィンは不機嫌になる。

「誰もが、皆エルウィン様のような人間ばかりではありませんからね」

そこまでエデルガルトが話した時――。


「エルウィン様っ!スティーブたちが戻って参りました!アリアドネ様もご一緒です!」

シュミットが作戦会議室に飛び込んできた。

「何っ!そうかっ!すぐに行くっ!師匠、申し訳ありません!一旦席を外させてくださいっ!」

エルウィンは立ち上がり、一礼すると駆け足で作戦会議室を出ていった。
その後姿を見送ると、エデルガルトは呟いた。

「アリアドネ様か……。エルウィン様に影響を与えそうだな。少しはあの方の考えも変わるかもしれないな…」

そしてエデルガルトは目を細めた――。



****

城門に辿り着いたスティーブは馬から降りると、1台目の荷馬車に乗っていたアリアドネに声を掛けた。

「アリアドネ、着いたぞ」

「はい、ありがとうございます」

荷馬車から姿を現したアリアドネにスティーブは手を差し伸べた。

「降りるだろう?手を貸すよ」

「はい」

アリアドネがスティーブに手を差し出そうとした時……。

「アリアドネーッ!!」

城からエルウィンがアリアドネの方へ向かって駆けてくるのが2人の目に入った。

「え?た、大将?」

驚いたスティーブは荷馬車から離れた。

「エルウィン様……?」

アリアドネはこちらへ向かって駆けつけてくるエルウィンの姿を荷馬車の上で緊張しながら見守っていた。

「アリアドネ……」

エルウィンは息を整えながら、荷馬車の中にいるアリアドネを見つめ……手を差し伸べてきた。

「降りるのだろう?手を貸そう」

「ありがとうございます……」

アリアドネがエルウィンの方に手を伸ばした。

「え……?キャア!」

するとエルウィンは驚くべき力でアリアドネを抱き上げ、地上に下ろすとそのまま強く抱きしめてきた。

「え………?エルウィン様……?」

あまりの突然のエルウィンの抱擁にアリアドネが頬を赤らめた時……エルウィンの口から驚くべき事実を聞かされた。

「アリアドネ……。落ち着いて聞いてくれ……。ロイが…死んだ…。オズワルドに撃たれて……殺されたのだ……」

「え……?」

「すまなかった……彼を犠牲にしてしまって……」

苦しげに耳元で語るエルウィンの言葉は真実なのだとすぐにアリアドネは理解した。

「そ、そんな……ロイが……?」

アリアドネは目を見開き……次の瞬間目に大粒の涙が溢れ出した。

そして……アリアドネはエルウィンの胸の中で、肩を震わせて嗚咽し続けた。


「アリアドネ……」

そんな2人を、スティーブは悲しみの表情で見守っていた――。

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