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12-17 訳の分からない苛立ち
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「え……?」
エルウィンはアリアドネの口から出た言葉に、自分でも驚くほどにショックを受けていた。
(この俺に……大切な女が出来た時の為にドレスを取っておけだと……?)
次に、申し訳無さげにこちらを見ているアリアドネの姿を見ているとエルウィンの中に言いしれぬ怒りのようなものが湧いてきた。
(アリアドネ……!やはり、それはつまりこの城を出る気持ちに変わりがないってことなのか…?そんなにここを出たいのか……?!)
そして拳をぐっと握りしめた。
確かに一番初めに無慈悲にも剣を向け、アリアドネを追い払ったのは紛れもなく自分だ。
エルウィンは性病で死んでいった祖父を情けなく思っていた。娼婦を平気で城にあげるランベールを汚らわしいと思っていた。
そして、何かと自分にすり寄ってくる女たちを軽蔑し……貴族同士の関わリを断っていた。国王に謁見する時は必要な時以外は甲冑姿に鉄仮面姿で自分の顔を見られないようにしていたのだ。
(お前は他の貴族令嬢とは違うと思ったからこそ、俺は……!)
一方、アリアドネの方もエルウィンの変化に戸惑っていた。
じっと自分を見つめたまま身じろぎもしないエルウィンに対し、どうすれば良いのか分からなかった。
(エルウィン様…一体どうされたのかしら?私、何かお気に召さないことを口にしてしまったのかしら……?)
「あ、あの……エルウィン様…」
たまらず、ついにアリアドネは自分から声を掛けた。
すると――。
「アリアドネ。実は国王に謁見する為にここを出発するのが3日後に決定したのだ。だから今から出掛けられる準備をしておいてくれ」
エルウィンは感情を押し殺し、アリアドネに説明した。
「え?!み、3日後ですか?」
あまりにも急な話でアリアドネが驚いたのは無理もなかった。
「すまない。あまりに突然過ぎて驚いたか?」
「そ、それは……少し…。でも分かりました。3日後ですね?準備をしておきます」
「ああ、頼む。それで…『レビアス』国へ行くにあたり……専属メイドか侍女のような者は必要か?なんなら今すぐ手配をするが」
「いえ、大丈夫です。私には必要ありませんから」
アリアドネはきっぱり断った。
「そ、そうか?本当にいいのか?」
戸惑いながらもエルウィンは尋ねた。
「はい、大丈夫です」
答えながらアリアドネは思った。
自分はエルウィンの妻でもなく、ただのメイドなのに勿体ない…と。
「分かった。アリアドネ専用に馬車を1台用意する。そこに必要な荷物を積み込めばいいだろう」
「はい。お気遣い頂き、どうもありがとうございます」
深々と頭を下げるアリアドネ。
「……とりあえず出発まではミカエルとウリエルのことは他の者に頼む。アリアドネはその間、出発の準備をするんだ」
「はい、かしこまりました」
「よし、それではまたな」
エルウィンはそれだけ告げると、大股で部屋を出ていった。
訳の分からない苛立ちを胸に秘めつつ――。
エルウィンはアリアドネの口から出た言葉に、自分でも驚くほどにショックを受けていた。
(この俺に……大切な女が出来た時の為にドレスを取っておけだと……?)
次に、申し訳無さげにこちらを見ているアリアドネの姿を見ているとエルウィンの中に言いしれぬ怒りのようなものが湧いてきた。
(アリアドネ……!やはり、それはつまりこの城を出る気持ちに変わりがないってことなのか…?そんなにここを出たいのか……?!)
そして拳をぐっと握りしめた。
確かに一番初めに無慈悲にも剣を向け、アリアドネを追い払ったのは紛れもなく自分だ。
エルウィンは性病で死んでいった祖父を情けなく思っていた。娼婦を平気で城にあげるランベールを汚らわしいと思っていた。
そして、何かと自分にすり寄ってくる女たちを軽蔑し……貴族同士の関わリを断っていた。国王に謁見する時は必要な時以外は甲冑姿に鉄仮面姿で自分の顔を見られないようにしていたのだ。
(お前は他の貴族令嬢とは違うと思ったからこそ、俺は……!)
一方、アリアドネの方もエルウィンの変化に戸惑っていた。
じっと自分を見つめたまま身じろぎもしないエルウィンに対し、どうすれば良いのか分からなかった。
(エルウィン様…一体どうされたのかしら?私、何かお気に召さないことを口にしてしまったのかしら……?)
「あ、あの……エルウィン様…」
たまらず、ついにアリアドネは自分から声を掛けた。
すると――。
「アリアドネ。実は国王に謁見する為にここを出発するのが3日後に決定したのだ。だから今から出掛けられる準備をしておいてくれ」
エルウィンは感情を押し殺し、アリアドネに説明した。
「え?!み、3日後ですか?」
あまりにも急な話でアリアドネが驚いたのは無理もなかった。
「すまない。あまりに突然過ぎて驚いたか?」
「そ、それは……少し…。でも分かりました。3日後ですね?準備をしておきます」
「ああ、頼む。それで…『レビアス』国へ行くにあたり……専属メイドか侍女のような者は必要か?なんなら今すぐ手配をするが」
「いえ、大丈夫です。私には必要ありませんから」
アリアドネはきっぱり断った。
「そ、そうか?本当にいいのか?」
戸惑いながらもエルウィンは尋ねた。
「はい、大丈夫です」
答えながらアリアドネは思った。
自分はエルウィンの妻でもなく、ただのメイドなのに勿体ない…と。
「分かった。アリアドネ専用に馬車を1台用意する。そこに必要な荷物を積み込めばいいだろう」
「はい。お気遣い頂き、どうもありがとうございます」
深々と頭を下げるアリアドネ。
「……とりあえず出発まではミカエルとウリエルのことは他の者に頼む。アリアドネはその間、出発の準備をするんだ」
「はい、かしこまりました」
「よし、それではまたな」
エルウィンはそれだけ告げると、大股で部屋を出ていった。
訳の分からない苛立ちを胸に秘めつつ――。
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