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13−22 浮かれる人々
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午前10時――
朝食を取り終えたエルウィン達一行は、王都へ向けて出発することになった。
「アリアドネ。後2時間半程南下すれば、いよいよ王都『レビアス』に到着する。途中休憩は無いが、何かあればカインにいつでも声を掛けろ」
エルウィンは馬車に乗ったアリアドネに説明していた。
「はい、ありがとうございます……あの、ところでエルウィン様……」
アリアドネは遠慮がちにエルウィンに声を掛けた。
「どうした?」
「そのマフラー……使っていただいているのですね?」
アリアドネは恥ずかしそうにエルウィンの首元を見た。
そこにはアリアドネが編んだ紺色のマフラーが巻かれている。
「ああ、当然だろう?お前が俺の為に編んでくれたマフラーだからな。ありがたく使わせて貰っている。どうだ?似合っているか?」
恥ずかしげもなく、堂々と尋ねてくるエルウィンにアリアドネは頬を赤らめながら頷いた。
「は、はい……とてもお似合いです……」
「そうか。俺も自分に良く似合っていると思っているんだ。それじゃ出発だ。寒いから窓は閉めておけよ」
「は、はい。分かりました……」
「それではまたな」
そしてエルウィンは上機嫌で去っていった。
その様子を肩を震わせてカインが見ていたのは言うまでも無かった。
当然、他の騎士たちも――。
****
その頃、『レビアス』国の現国王が執務室でステニウス伯爵家から届いた招待状の返事を読んでいた。
「フフフ…そうか。ステニウス伯爵も城にやってくるのか……。娘のミレーユは連れてくるのだろうか?何しろ男に奔放な娘として世間では有名だからな……」
すると、側に控えていた50代半ばと思しき男が声を掛けてきた。
「ステニウス伯爵はアイゼンシュタット辺境伯がこの城にやってくるのをご存知なのですか?」
「まさか、知るはずは無いだろう?それにしても伯爵め……。この私が誰を辺境伯の妻に差し出したのか、気付いていないとでも思っているのだろうか?」
「…おそらく存じ上げてはいないのでしょうね」
「あやつのことだ。もしかすると娘のミレーユを遠縁の娘とでも称して連れてくるかもしれんぞ?夫探しをさせる為にな……これは面白いことになりそうだ……」
その時――。
コンコン
扉をノックする音が聞こえてきた。
「どちら様でしょうか?」
国王に使えていた男性が扉越しに声を掛ける。
『私です。ベアトリスです』
すると、たちまち国王の顔が破顔した。
「ベアトリスか?入るがいい」
その言葉に扉を開く男性。
カチャ……
すると国王、『レビアス13世』の一人娘のベアトリスが姿を見せた。
ベアトリスは亜麻色のウェーブがかかった美しい娘だった。
「どうしたのだ?ベアトリス」
一人娘には甘い父親は笑顔でベアトリスに語りかける。
「はい、お父様。実は家臣から、本日あの噂の辺境様が婚約者を連れて城に来ると言う話を耳にしたので話を聞きたくて伺いました」
「そうか。もうお前の耳にも入ったのか」
「はい、何しろあの血に飢えた辺境伯様ですから。『戦場の暴君』と恐れられる辺境伯さまの婚約者だなんて…どのような方か興味がありますわ。噂では辺境伯様の仮面の下は獣のような恐ろしい顔が隠されていると言われておりますし」
「なるほど……本日開かれる夜会でその姿を見ることが出来るだろう。今宵は面白い夜になりそうだな……」
そして『レビアス13世』は不敵な笑みを浮かべた――。
朝食を取り終えたエルウィン達一行は、王都へ向けて出発することになった。
「アリアドネ。後2時間半程南下すれば、いよいよ王都『レビアス』に到着する。途中休憩は無いが、何かあればカインにいつでも声を掛けろ」
エルウィンは馬車に乗ったアリアドネに説明していた。
「はい、ありがとうございます……あの、ところでエルウィン様……」
アリアドネは遠慮がちにエルウィンに声を掛けた。
「どうした?」
「そのマフラー……使っていただいているのですね?」
アリアドネは恥ずかしそうにエルウィンの首元を見た。
そこにはアリアドネが編んだ紺色のマフラーが巻かれている。
「ああ、当然だろう?お前が俺の為に編んでくれたマフラーだからな。ありがたく使わせて貰っている。どうだ?似合っているか?」
恥ずかしげもなく、堂々と尋ねてくるエルウィンにアリアドネは頬を赤らめながら頷いた。
「は、はい……とてもお似合いです……」
「そうか。俺も自分に良く似合っていると思っているんだ。それじゃ出発だ。寒いから窓は閉めておけよ」
「は、はい。分かりました……」
「それではまたな」
そしてエルウィンは上機嫌で去っていった。
その様子を肩を震わせてカインが見ていたのは言うまでも無かった。
当然、他の騎士たちも――。
****
その頃、『レビアス』国の現国王が執務室でステニウス伯爵家から届いた招待状の返事を読んでいた。
「フフフ…そうか。ステニウス伯爵も城にやってくるのか……。娘のミレーユは連れてくるのだろうか?何しろ男に奔放な娘として世間では有名だからな……」
すると、側に控えていた50代半ばと思しき男が声を掛けてきた。
「ステニウス伯爵はアイゼンシュタット辺境伯がこの城にやってくるのをご存知なのですか?」
「まさか、知るはずは無いだろう?それにしても伯爵め……。この私が誰を辺境伯の妻に差し出したのか、気付いていないとでも思っているのだろうか?」
「…おそらく存じ上げてはいないのでしょうね」
「あやつのことだ。もしかすると娘のミレーユを遠縁の娘とでも称して連れてくるかもしれんぞ?夫探しをさせる為にな……これは面白いことになりそうだ……」
その時――。
コンコン
扉をノックする音が聞こえてきた。
「どちら様でしょうか?」
国王に使えていた男性が扉越しに声を掛ける。
『私です。ベアトリスです』
すると、たちまち国王の顔が破顔した。
「ベアトリスか?入るがいい」
その言葉に扉を開く男性。
カチャ……
すると国王、『レビアス13世』の一人娘のベアトリスが姿を見せた。
ベアトリスは亜麻色のウェーブがかかった美しい娘だった。
「どうしたのだ?ベアトリス」
一人娘には甘い父親は笑顔でベアトリスに語りかける。
「はい、お父様。実は家臣から、本日あの噂の辺境様が婚約者を連れて城に来ると言う話を耳にしたので話を聞きたくて伺いました」
「そうか。もうお前の耳にも入ったのか」
「はい、何しろあの血に飢えた辺境伯様ですから。『戦場の暴君』と恐れられる辺境伯さまの婚約者だなんて…どのような方か興味がありますわ。噂では辺境伯様の仮面の下は獣のような恐ろしい顔が隠されていると言われておりますし」
「なるほど……本日開かれる夜会でその姿を見ることが出来るだろう。今宵は面白い夜になりそうだな……」
そして『レビアス13世』は不敵な笑みを浮かべた――。
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