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15-2 夜会前 2
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エルウィンの部屋にはマティアスが訪ねていた。
「いいですか?エルウィン様。今夜はしっかりアリアドネ様をエスコートして下さいね?」
マティアスは椅子に座り、剣の手入れをしているエルウィンに話しかけている。
「何だ?重要な話って……その事だったのか?」
エルウィンはマティアスの方を振り向くことも無く、剣を磨いている。
「夜会は今夜ですよ?他にどのような重要な話があると言うのですか?」
マティアスはつい、大きな声を上げてしまった。
「全く煩い奴だ……。大体、本当に参加する必要があると思うか?」
突然の言葉にマティアスは思わず固まってしまった。
「エルウィン様……今、何と仰いましたか?」
「だから、本当に夜会に参加する必要があるのかと聞いているんだ。考えてもみろ?俺は既に陛下に呼ばれた晩餐会に参加している。あの晩餐会には有力貴族ばかり揃っていた。そこで俺は素顔を晒して自己紹介しているんだぞ?」
そして不貞腐れたように剣を鞘に納めた。
エルウィンの言葉にマティアスは目眩を起こしそうになった。
「エルウィン様……正気ですか?元々、我らがこの城にやってきたのは陛下にアリアドネ様を連れて夜会に参加する様に命じられたからではないですか?」
エルウィンがマティアスを指さした。
「そう、それだ。そこが問題なんだ」
「問題?何がですか?」
「いいか?マティアス。陛下は我らを騙したんだぞ?大体アリアドネを虐待していたステニウス伯爵家が呼ばれていると知っていれば、誰がわざわざ来るものか」
「ですが、アリアドネ様はステニウス伯爵家の御令嬢ですよ?エルウィン様と顔合わせをする機会を陛下が下さったのではありませんか?」
するとエルウィンは眉を吊り上げた。
「お前、分かっているのか?奴らはアリアドネをメイドとして扱っていたんだぞ?それどころか、ミレーユの身代わりにしたんだぞ?俺の噂がどれほど酷いか知っての上でな!くそ!気分が悪い!変なことを言わせるな!」
(全く……いくら『戦場の暴君』として世間で悪名高くても自分で自分を悪く言うのは面白くない!)
すっかり不貞腐れた様子のエルウィンにマティアスは声を掛けた。
「ですが良かったではないですか?アリアドネ様のような良い御令嬢をエルウィン様の元に送って下さったのですから。それともミレーユ様の方が良かったですか?」
「ミレーユだと?あのアバズレ女として名高い?冗談じゃない!アリアドネの方が良いに決まっているだろう?!」
そこまで言って、エルウィンはマティアスがニヤニヤと笑いながら自分を見つめていることに気付いた。
「あ‥…」
思わず赤面するエルウィンにマティアスは声を掛けた。
「エルウィン様、アリアドネ様を思っていらっしゃるならもっと優しくしてあげるべきです。そして夜会にパートナーとしてご一緒に参加して、他の貴族の方たちにどれほど素晴らしい女性か披露してあげるのです」
「アリアドネを披露……?」
「ええ、そうです。これはアリアドネ様を世間に認めさせるチャンスですよ?」
マティアスは手ごたえを感じていた。
「そうか……分かった。そうだな、夜会に参加してアリアドネを貴族連中に見せつけて認めさせよう!」
満足そうに頷くエルウィン。
彼は自分がマティアスに乗せられたことに、当然気付く由も無かった――。
「いいですか?エルウィン様。今夜はしっかりアリアドネ様をエスコートして下さいね?」
マティアスは椅子に座り、剣の手入れをしているエルウィンに話しかけている。
「何だ?重要な話って……その事だったのか?」
エルウィンはマティアスの方を振り向くことも無く、剣を磨いている。
「夜会は今夜ですよ?他にどのような重要な話があると言うのですか?」
マティアスはつい、大きな声を上げてしまった。
「全く煩い奴だ……。大体、本当に参加する必要があると思うか?」
突然の言葉にマティアスは思わず固まってしまった。
「エルウィン様……今、何と仰いましたか?」
「だから、本当に夜会に参加する必要があるのかと聞いているんだ。考えてもみろ?俺は既に陛下に呼ばれた晩餐会に参加している。あの晩餐会には有力貴族ばかり揃っていた。そこで俺は素顔を晒して自己紹介しているんだぞ?」
そして不貞腐れたように剣を鞘に納めた。
エルウィンの言葉にマティアスは目眩を起こしそうになった。
「エルウィン様……正気ですか?元々、我らがこの城にやってきたのは陛下にアリアドネ様を連れて夜会に参加する様に命じられたからではないですか?」
エルウィンがマティアスを指さした。
「そう、それだ。そこが問題なんだ」
「問題?何がですか?」
「いいか?マティアス。陛下は我らを騙したんだぞ?大体アリアドネを虐待していたステニウス伯爵家が呼ばれていると知っていれば、誰がわざわざ来るものか」
「ですが、アリアドネ様はステニウス伯爵家の御令嬢ですよ?エルウィン様と顔合わせをする機会を陛下が下さったのではありませんか?」
するとエルウィンは眉を吊り上げた。
「お前、分かっているのか?奴らはアリアドネをメイドとして扱っていたんだぞ?それどころか、ミレーユの身代わりにしたんだぞ?俺の噂がどれほど酷いか知っての上でな!くそ!気分が悪い!変なことを言わせるな!」
(全く……いくら『戦場の暴君』として世間で悪名高くても自分で自分を悪く言うのは面白くない!)
すっかり不貞腐れた様子のエルウィンにマティアスは声を掛けた。
「ですが良かったではないですか?アリアドネ様のような良い御令嬢をエルウィン様の元に送って下さったのですから。それともミレーユ様の方が良かったですか?」
「ミレーユだと?あのアバズレ女として名高い?冗談じゃない!アリアドネの方が良いに決まっているだろう?!」
そこまで言って、エルウィンはマティアスがニヤニヤと笑いながら自分を見つめていることに気付いた。
「あ‥…」
思わず赤面するエルウィンにマティアスは声を掛けた。
「エルウィン様、アリアドネ様を思っていらっしゃるならもっと優しくしてあげるべきです。そして夜会にパートナーとしてご一緒に参加して、他の貴族の方たちにどれほど素晴らしい女性か披露してあげるのです」
「アリアドネを披露……?」
「ええ、そうです。これはアリアドネ様を世間に認めさせるチャンスですよ?」
マティアスは手ごたえを感じていた。
「そうか……分かった。そうだな、夜会に参加してアリアドネを貴族連中に見せつけて認めさせよう!」
満足そうに頷くエルウィン。
彼は自分がマティアスに乗せられたことに、当然気付く由も無かった――。
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