279 / 376
15-9 波乱の夜会 7
しおりを挟む
バルコニーへ出て来たエルウィンとミレーユ。
「素敵な星空ですわね~」
ミレーユは手すりに両手を置くと、いつも男を誘惑するときに使う色気のある流し目をエルウィンに送る。
しかし、初めからミレーユを軽蔑している……ましてや色気を振りまく女性を嫌悪するエルウィンに通用するはずは無い。
「……そうだな」
間を開けながら返事をするエルウィンはミレーユをじっと観察した。
(なんて下品なドレスなんだ。真っ赤な色は血を連想させて気分が悪い。おまけにあの胸元の大きく開いたドレス……。くそっ!あの時の不快な記憶を思い出してしまうじゃないかっ!)
不快な記憶とは言うまでも無く、まだ14歳の時に娼婦に襲われた時の記憶だった。
あの時の心の傷は癒えることなく、エルウィンは女性全般を嫌うようになってしまった。ただ一人、アリアドネを除いては。
しかし、肝心のエルウィン本人は自分の中に芽生えた気持ちにまだ気づいてはいない。
一方、そっけない返事をしただけで一言も話をしないエルウィンの態度にミレーユはヤキモキしていた。
大抵の男はミレーユの先ほどの視線で虜になり……中には情を交わす関係にいたる場合が多いのに、エルウィンは無反応だった。
それがどうしてもミレーユは気に入らなかったのだ。
そこで、再度ミレーユはエルウィンに話かけた。
「そう言えば、まだ貴方のお名前を伺っていませんでしたわね。教えて頂けませんか?」
「別に教えても構わないが……その前にお前にいくつか尋ねたいことがある。それに答えてもらおうか?」
エルウィンは腕組みした――。
****
「貴方も大勢人が集まる場所は苦手だったのですね。私もそうですから」
アリアドネは仮面の青年に同情した。すると口元に笑みを浮かべる青年。
「ええ、そうなのです。私の顔は人の注目を浴びてしまうので…‥このような公の場では顔を隠すようにしているのです。私の素顔を見れば、騒ぎになってしまう可能性もあるので」
「まぁ、それは……お気の毒ですね」
人から注目されて後ろ指を指されることがどれだけ恥ずかしい事か、アリアドネは良く理解していた。
「何だか貴女とは気が合いそうですね。お連れの方もまだいらっしゃらないようですし……出来ればもう少し私の話にお付き合い願えませんか?」
「ええ。いいですよ」
別に話をする程度なら構わないだろう。そう思ったアリアドネは頷いた。
「そうですか。ではここは人目が付きますので、場所を移しませんか?」
「い、いえ。それはお断りいたします。ここで待っているようにと連れの方に言われましたので」
「そうでしたか……。それなら仕方ありませんね。ではここでお話致しましょう。少し待ってもらえますか?」
「はい」
すると青年はすぐ傍にあるテーブルからアルコールの入ったグラスを2つ手に取り、アリアドネに差し出した。
「どうぞ」
「は、はい。ありがとうございます」
本当はエルウィンが持ってくるスパークリングワインを待っていたが、折角飲み物を差し出されて断るわけにはいかなかった。
(この方はどう見ても高貴な方だわ。そんな方のお誘いを断って……後に不敬罪に問われたら大変だわ……)
そこでアリアドネは差し出されたグラスを手にすると、青年は笑みを浮かべた。
「それでは乾杯しましょう」
「え、ええ。そうですね」
「「乾杯」」
アリアドネと青年は互いのグラスを鳴らし、2人はアルコールを口にした――。
「素敵な星空ですわね~」
ミレーユは手すりに両手を置くと、いつも男を誘惑するときに使う色気のある流し目をエルウィンに送る。
しかし、初めからミレーユを軽蔑している……ましてや色気を振りまく女性を嫌悪するエルウィンに通用するはずは無い。
「……そうだな」
間を開けながら返事をするエルウィンはミレーユをじっと観察した。
(なんて下品なドレスなんだ。真っ赤な色は血を連想させて気分が悪い。おまけにあの胸元の大きく開いたドレス……。くそっ!あの時の不快な記憶を思い出してしまうじゃないかっ!)
不快な記憶とは言うまでも無く、まだ14歳の時に娼婦に襲われた時の記憶だった。
あの時の心の傷は癒えることなく、エルウィンは女性全般を嫌うようになってしまった。ただ一人、アリアドネを除いては。
しかし、肝心のエルウィン本人は自分の中に芽生えた気持ちにまだ気づいてはいない。
一方、そっけない返事をしただけで一言も話をしないエルウィンの態度にミレーユはヤキモキしていた。
大抵の男はミレーユの先ほどの視線で虜になり……中には情を交わす関係にいたる場合が多いのに、エルウィンは無反応だった。
それがどうしてもミレーユは気に入らなかったのだ。
そこで、再度ミレーユはエルウィンに話かけた。
「そう言えば、まだ貴方のお名前を伺っていませんでしたわね。教えて頂けませんか?」
「別に教えても構わないが……その前にお前にいくつか尋ねたいことがある。それに答えてもらおうか?」
エルウィンは腕組みした――。
****
「貴方も大勢人が集まる場所は苦手だったのですね。私もそうですから」
アリアドネは仮面の青年に同情した。すると口元に笑みを浮かべる青年。
「ええ、そうなのです。私の顔は人の注目を浴びてしまうので…‥このような公の場では顔を隠すようにしているのです。私の素顔を見れば、騒ぎになってしまう可能性もあるので」
「まぁ、それは……お気の毒ですね」
人から注目されて後ろ指を指されることがどれだけ恥ずかしい事か、アリアドネは良く理解していた。
「何だか貴女とは気が合いそうですね。お連れの方もまだいらっしゃらないようですし……出来ればもう少し私の話にお付き合い願えませんか?」
「ええ。いいですよ」
別に話をする程度なら構わないだろう。そう思ったアリアドネは頷いた。
「そうですか。ではここは人目が付きますので、場所を移しませんか?」
「い、いえ。それはお断りいたします。ここで待っているようにと連れの方に言われましたので」
「そうでしたか……。それなら仕方ありませんね。ではここでお話致しましょう。少し待ってもらえますか?」
「はい」
すると青年はすぐ傍にあるテーブルからアルコールの入ったグラスを2つ手に取り、アリアドネに差し出した。
「どうぞ」
「は、はい。ありがとうございます」
本当はエルウィンが持ってくるスパークリングワインを待っていたが、折角飲み物を差し出されて断るわけにはいかなかった。
(この方はどう見ても高貴な方だわ。そんな方のお誘いを断って……後に不敬罪に問われたら大変だわ……)
そこでアリアドネは差し出されたグラスを手にすると、青年は笑みを浮かべた。
「それでは乾杯しましょう」
「え、ええ。そうですね」
「「乾杯」」
アリアドネと青年は互いのグラスを鳴らし、2人はアルコールを口にした――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,819
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる