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16-9 目覚めと自覚
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翌朝、午前6時――。
アリアドネは温かなぬくもりの中で目が覚めた。
「ん……」
目を開けて驚いた。
何と眼前に美しいエルウィンの寝顔があったからだ。
(エ、エルウィン様……!い、一体これは……!)
そして一気に昨夜のことが思い出された。
(そうだわ、私は昨夜お酒で酔っていたエルウィン様とダンスを踊って……余計に酔わせてしまったのだわ。そして介抱しようとしたときに、突然抱きしめられてそのまま……)
まさか自分がエルウィンに抱きしめられたまま、眠りに就いてしまうとは思ってもいなかった。
(一体どうしたら……今なら抜け出せるかしら)
試しに自分の体を抱きしめている右腕をそっと押して見ると動かすことが出来た。
(これなら抜け出せそうね)
エルウィンを起こさないように腕をそっとどかすと、アリアドネはベッドから起き上がった。
そして静かにベッドから降りると、エルウィンの身体にダウンケットを掛け直した。
少しの間、アリアドネはエルウィンを見つめ……語りかけた。
「エルウィン様、昨夜は申し訳ございませんでした。でも……一緒にダンスを踊る事が出来て楽しかったです。後は……」
アリアドネは少しの間を開けると、再びエルウィンに語りかけた。
「昨夜は……その、エルウィン様のお陰で……よ、よく眠ることが出来ました……。それでは失礼致します」
眠っているエルウィンに丁寧に頭を下げると、アリアドネはまるで逃げるように部屋から出て行った。
パタン……
部屋の扉が閉ざされ、パタパタと足音が遠ざかっていく音を聞いたエルウィンはようやく、ベッドから身体を起こした。
「参ったな……」
顔を赤らめ、エルウィンはクシャリと髪をかきあげるとため息をついた。
実はアリアドネが目覚めた時、眠ってなどはいなかった。明け方には目が覚め、腕の中にいるアリアドネの寝顔をじっと見つめていたのだった。
小さな幸せを感じながら。
「それにしても……俺が誰かの隣でこんな風に眠れるとは思わなかった……」
エルウィンはポツリと呟いた。
辺境伯として、国を守る為に越冬期間以外は戦場に身を置くエルウィンは日頃から暗殺の危機に晒されている。
その為人の気配には人一倍敏感であり、誰かが隣にいる状態で眠るなどあり得ないことだった。
「いくら酔っていたとはいえ、アリアドネを隣に……しかも抱きしめたまま眠ってしまういとは……どうかしている……」
顔を赤く染めながら、エルウィンは再びため息をついた。
(もう、これではっきり分かった。俺は……アリアドネのことが好きなのだ……)
エルウィンはついに自分の恋心を自覚するのだった――。
アリアドネは温かなぬくもりの中で目が覚めた。
「ん……」
目を開けて驚いた。
何と眼前に美しいエルウィンの寝顔があったからだ。
(エ、エルウィン様……!い、一体これは……!)
そして一気に昨夜のことが思い出された。
(そうだわ、私は昨夜お酒で酔っていたエルウィン様とダンスを踊って……余計に酔わせてしまったのだわ。そして介抱しようとしたときに、突然抱きしめられてそのまま……)
まさか自分がエルウィンに抱きしめられたまま、眠りに就いてしまうとは思ってもいなかった。
(一体どうしたら……今なら抜け出せるかしら)
試しに自分の体を抱きしめている右腕をそっと押して見ると動かすことが出来た。
(これなら抜け出せそうね)
エルウィンを起こさないように腕をそっとどかすと、アリアドネはベッドから起き上がった。
そして静かにベッドから降りると、エルウィンの身体にダウンケットを掛け直した。
少しの間、アリアドネはエルウィンを見つめ……語りかけた。
「エルウィン様、昨夜は申し訳ございませんでした。でも……一緒にダンスを踊る事が出来て楽しかったです。後は……」
アリアドネは少しの間を開けると、再びエルウィンに語りかけた。
「昨夜は……その、エルウィン様のお陰で……よ、よく眠ることが出来ました……。それでは失礼致します」
眠っているエルウィンに丁寧に頭を下げると、アリアドネはまるで逃げるように部屋から出て行った。
パタン……
部屋の扉が閉ざされ、パタパタと足音が遠ざかっていく音を聞いたエルウィンはようやく、ベッドから身体を起こした。
「参ったな……」
顔を赤らめ、エルウィンはクシャリと髪をかきあげるとため息をついた。
実はアリアドネが目覚めた時、眠ってなどはいなかった。明け方には目が覚め、腕の中にいるアリアドネの寝顔をじっと見つめていたのだった。
小さな幸せを感じながら。
「それにしても……俺が誰かの隣でこんな風に眠れるとは思わなかった……」
エルウィンはポツリと呟いた。
辺境伯として、国を守る為に越冬期間以外は戦場に身を置くエルウィンは日頃から暗殺の危機に晒されている。
その為人の気配には人一倍敏感であり、誰かが隣にいる状態で眠るなどあり得ないことだった。
「いくら酔っていたとはいえ、アリアドネを隣に……しかも抱きしめたまま眠ってしまういとは……どうかしている……」
顔を赤く染めながら、エルウィンは再びため息をついた。
(もう、これではっきり分かった。俺は……アリアドネのことが好きなのだ……)
エルウィンはついに自分の恋心を自覚するのだった――。
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