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17-15 罠
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未だに落ち込むエルウィンを部屋に残し、廊下に出てきたシュミットとエデルガルトが話し合いをしていた。
「駄目だ、今のエルウィン様は完全に使い物にならなくなっている。15年間、エルウィン様を見てきたがあのようなお姿は初めてだ。この状態で今、敵が攻めて来れば非常にまずいことになりそうだ」
エデルガルトは腕組みしながら苦虫を潰したような顔をしている。
「ええ。そうなのですよ………本当に困ったものです。それにしても流石はエデルガルト様ですね」
「何がだ?」
シュミットの言葉にエデルガルトは首を捻る。
「いえ、先程のことですよ。エルウィン様のあのお姿を見て、よく笑わずにいられるものだと感心しておりました」
「何を言う。それを言うのはこちらの方だ。シュミットこそよく我慢できたな?私は心の中で笑い転げていたわ」
「そうだったのですか……冷静に対応されていたので、何とも思われていないのかと思いましたが……。それでもやはり流石は素晴らしい武人です。本心を隠すことが出来るのですから」
「うむ……まぁな。数多の戦場を駆け抜けて行きてきたからそれ位はどうにでもなるが……す、すまない!一旦場所を変えよう!」
エデルガルトが肩を震わせる。
「え、ええ。そうですね一度ここを離れましょう!」
そしてシュミットとエデルガルトは急いで執務室の前を離れ……一番通路の奥にある部屋に閉じこもり、内鍵を掛けると部屋の中で大笑いをするのだった――。
****
一方、その頃――。
アリアドネとヨゼフは、自分達以外誰もいない食堂でお茶を飲んでいた。
このお茶は店の主人の善意によって、提供された飲み物だった。
「このお茶、とても美味しいですね」
アリアドネは食器を下げに来た口髭の主人に声を掛けた。
「そうですか?それは良かったです」
にこやかに笑みを浮かべる主人。
「本当に美味しいですよ。今まで飲んだことが無いお茶です。それに何だか独特の香りもする」
ヨゼフはお茶の香りを吸い込んだ。
「ええ。このお茶は少し独特の成分がありますからね。今回、お客様の為に特別に調合したお茶ですから」
「まぁ?そうなのですか?それはありがたいですね」
「ええ。こちらもとても幸運でしたよ。あなた方のようなお客様にいらして頂いて」
宿屋の主人も嬉しそうに笑みを浮かべた――。
****
静かになった宿屋。
椅子の上ではアリアドネとヨゼフが座ったまま眠りについている。
「……よし、完全に眠っているな」
宿屋の主人が2人に近付き、覗き込んだ。
「しかし、まさかこんな寂れた宿屋で上玉に出会うとは思わなかった」
店の奥からガラの悪そうな男が出てくる。
「ああ、300万レニーもの大金を持っているし、中々この美貌もお目にかかれない。何処かの貴族令嬢と従者かもしれんぞ」
「なら、奴隷商人に高く売りつけてやるか?爺の方はどうせ売れないだろうから、この女とまとめて売りつけてやろう」
厨房から出てきた大柄の男はニヤリと笑った。
「よし!野郎ども!この女と年寄は倉庫に閉じ込めて鍵をかけておけ!これより仲間達と合流してアイゼンシュタット城を襲撃し、あの生意気な城主の首を取るのだ!!我等カルタン族の誇りを掛けて!」
この宿屋の主人に扮していた男が声を上げた。
その言葉に、宿屋にいた男全員が大きな声で返事をする。
実は彼らは、越冬期間に入る前にエルウィン達に返り討ちにされたカルタン族の残党達だったのである。
彼らはアイゼンシュタット城とエルウィンに報復する為に、越冬期間が終わるの待っていたのだ。
そして手始めに城から一番遠くにある、この宿場村を占拠していたのだった――。
「駄目だ、今のエルウィン様は完全に使い物にならなくなっている。15年間、エルウィン様を見てきたがあのようなお姿は初めてだ。この状態で今、敵が攻めて来れば非常にまずいことになりそうだ」
エデルガルトは腕組みしながら苦虫を潰したような顔をしている。
「ええ。そうなのですよ………本当に困ったものです。それにしても流石はエデルガルト様ですね」
「何がだ?」
シュミットの言葉にエデルガルトは首を捻る。
「いえ、先程のことですよ。エルウィン様のあのお姿を見て、よく笑わずにいられるものだと感心しておりました」
「何を言う。それを言うのはこちらの方だ。シュミットこそよく我慢できたな?私は心の中で笑い転げていたわ」
「そうだったのですか……冷静に対応されていたので、何とも思われていないのかと思いましたが……。それでもやはり流石は素晴らしい武人です。本心を隠すことが出来るのですから」
「うむ……まぁな。数多の戦場を駆け抜けて行きてきたからそれ位はどうにでもなるが……す、すまない!一旦場所を変えよう!」
エデルガルトが肩を震わせる。
「え、ええ。そうですね一度ここを離れましょう!」
そしてシュミットとエデルガルトは急いで執務室の前を離れ……一番通路の奥にある部屋に閉じこもり、内鍵を掛けると部屋の中で大笑いをするのだった――。
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一方、その頃――。
アリアドネとヨゼフは、自分達以外誰もいない食堂でお茶を飲んでいた。
このお茶は店の主人の善意によって、提供された飲み物だった。
「このお茶、とても美味しいですね」
アリアドネは食器を下げに来た口髭の主人に声を掛けた。
「そうですか?それは良かったです」
にこやかに笑みを浮かべる主人。
「本当に美味しいですよ。今まで飲んだことが無いお茶です。それに何だか独特の香りもする」
ヨゼフはお茶の香りを吸い込んだ。
「ええ。このお茶は少し独特の成分がありますからね。今回、お客様の為に特別に調合したお茶ですから」
「まぁ?そうなのですか?それはありがたいですね」
「ええ。こちらもとても幸運でしたよ。あなた方のようなお客様にいらして頂いて」
宿屋の主人も嬉しそうに笑みを浮かべた――。
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静かになった宿屋。
椅子の上ではアリアドネとヨゼフが座ったまま眠りについている。
「……よし、完全に眠っているな」
宿屋の主人が2人に近付き、覗き込んだ。
「しかし、まさかこんな寂れた宿屋で上玉に出会うとは思わなかった」
店の奥からガラの悪そうな男が出てくる。
「ああ、300万レニーもの大金を持っているし、中々この美貌もお目にかかれない。何処かの貴族令嬢と従者かもしれんぞ」
「なら、奴隷商人に高く売りつけてやるか?爺の方はどうせ売れないだろうから、この女とまとめて売りつけてやろう」
厨房から出てきた大柄の男はニヤリと笑った。
「よし!野郎ども!この女と年寄は倉庫に閉じ込めて鍵をかけておけ!これより仲間達と合流してアイゼンシュタット城を襲撃し、あの生意気な城主の首を取るのだ!!我等カルタン族の誇りを掛けて!」
この宿屋の主人に扮していた男が声を上げた。
その言葉に、宿屋にいた男全員が大きな声で返事をする。
実は彼らは、越冬期間に入る前にエルウィン達に返り討ちにされたカルタン族の残党達だったのである。
彼らはアイゼンシュタット城とエルウィンに報復する為に、越冬期間が終わるの待っていたのだ。
そして手始めに城から一番遠くにある、この宿場村を占拠していたのだった――。
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