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19-7 パニックを起こすシュミット
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「アリアドネ様?このように朝早いお時間から執務室をお訪ねになるとは……一体どうされたのですか?」
「はい、実は……」
シュミットの問いかけにアリアドネが返事をしようとしたその時。
「俺がアリアドネを呼んだのだ。早く入ってこい」
背後からエルウィンの声が聞こえてきた。
「え?エルウィン様に呼び出されたのですか?これは失礼致しました。どうぞお入り下さい」
「はい、失礼致します」
シュミットが扉の前から身体を避けると、アリアドネは遠慮がちに部屋の中へと足を踏み入れた。
「お、おはようございます。エルウィン様」
執務室の真ん中で足を止めたアリアドネは朝の挨拶をした。
「ああ、おはよう。アリアドネ。その青いドレス……とても良く似合っている。今日も綺麗だぞ」
満面の笑みを浮かべながらエルウィンはアリアドネに声を掛ける。
「あ、ありがとうございます……」
その言葉に頬を染めるアリアドネ。
一方のシュミットは驚きのあまり、思わず固まってしまった。
(そんなまさか……!あの全く気配りが出来ず、女性に上手な言葉の一つも掛けられなかったエルウィン様が笑いながら女性を褒めるなんて……ありえない……!)
しかし、エルウィンはもはやシュミットの存在をまるで忘れたかのようにアリアドネに手招きした。
「何をしている?アリアドネ。そんな部屋の真ん中で立ち止まっていないで、こちらへ来い」
「はい、エルウィン様……」
言われるままアリアドネはエルウィンに近付き……書斎机の前に立った。すると何故か怪訝そうな表情を浮かべるエルウィン。
「何故立っている?座るといい」
「え?す、座る……?」
(座るって何処に?!)
アリアドネは慌てて辺りを見渡した。
エルウィンに近くに来るように言われたものの、椅子は無い。あるのは部屋の中央に置かれたソファセットだ。
(きっと、あのソファに座るという意味なのね)
アリアドネがソファに向かおうとすると、再びエルウィンが声を掛けた。
「何処へ行く?アリアドネ」
「え?あ、あの……座るように言われましたのでソファに……」
「違う、そうじゃない。とにかく俺の側に来い」
「はい……」
(ひょっとしてエルウィン様の側に椅子が置かれているのかしら?)
特に疑うことも無く、アリアドネはエルウィンの書斎机をまわって彼に近づいた。
その途端……。
「え?!」
突然アリアドネはエルウィンに右手首を掴まれ、気づいたときにはエルウィンの膝の上に座らされていた。
「「ええっ?!」」
じっと今まで固まったまま様子を見ていたシュミットとアリアドネが同時に驚きの声を上げた。
エルウィンの膝の上に座らされた上に、目を見開いてこちらを見ているシュミットの視線が恥ずかしくてたまらない。
「あ、あの!は、離して下さい。エルウィン様!」
アリアドネは真っ赤になりながらエルウィンの膝の上で身を捩った。
「おい、じっとしていろ。今から2人で一緒に書類を確認しないとならないのだから、おとなしくするんだ」
「え?しょ、書類の確認……?」
戸惑うアリアドネを他所に、扉付近で固まっているシュミットにエルウィンは声を掛けた。
「何をしている、シュミット。お前にも確認してもらわないとならないのだから、早くこっちへ来い」
「……あ!は、はい!す、すぐに!」
シュミットは頭の中がパニックになりながら、返事をした――。
「はい、実は……」
シュミットの問いかけにアリアドネが返事をしようとしたその時。
「俺がアリアドネを呼んだのだ。早く入ってこい」
背後からエルウィンの声が聞こえてきた。
「え?エルウィン様に呼び出されたのですか?これは失礼致しました。どうぞお入り下さい」
「はい、失礼致します」
シュミットが扉の前から身体を避けると、アリアドネは遠慮がちに部屋の中へと足を踏み入れた。
「お、おはようございます。エルウィン様」
執務室の真ん中で足を止めたアリアドネは朝の挨拶をした。
「ああ、おはよう。アリアドネ。その青いドレス……とても良く似合っている。今日も綺麗だぞ」
満面の笑みを浮かべながらエルウィンはアリアドネに声を掛ける。
「あ、ありがとうございます……」
その言葉に頬を染めるアリアドネ。
一方のシュミットは驚きのあまり、思わず固まってしまった。
(そんなまさか……!あの全く気配りが出来ず、女性に上手な言葉の一つも掛けられなかったエルウィン様が笑いながら女性を褒めるなんて……ありえない……!)
しかし、エルウィンはもはやシュミットの存在をまるで忘れたかのようにアリアドネに手招きした。
「何をしている?アリアドネ。そんな部屋の真ん中で立ち止まっていないで、こちらへ来い」
「はい、エルウィン様……」
言われるままアリアドネはエルウィンに近付き……書斎机の前に立った。すると何故か怪訝そうな表情を浮かべるエルウィン。
「何故立っている?座るといい」
「え?す、座る……?」
(座るって何処に?!)
アリアドネは慌てて辺りを見渡した。
エルウィンに近くに来るように言われたものの、椅子は無い。あるのは部屋の中央に置かれたソファセットだ。
(きっと、あのソファに座るという意味なのね)
アリアドネがソファに向かおうとすると、再びエルウィンが声を掛けた。
「何処へ行く?アリアドネ」
「え?あ、あの……座るように言われましたのでソファに……」
「違う、そうじゃない。とにかく俺の側に来い」
「はい……」
(ひょっとしてエルウィン様の側に椅子が置かれているのかしら?)
特に疑うことも無く、アリアドネはエルウィンの書斎机をまわって彼に近づいた。
その途端……。
「え?!」
突然アリアドネはエルウィンに右手首を掴まれ、気づいたときにはエルウィンの膝の上に座らされていた。
「「ええっ?!」」
じっと今まで固まったまま様子を見ていたシュミットとアリアドネが同時に驚きの声を上げた。
エルウィンの膝の上に座らされた上に、目を見開いてこちらを見ているシュミットの視線が恥ずかしくてたまらない。
「あ、あの!は、離して下さい。エルウィン様!」
アリアドネは真っ赤になりながらエルウィンの膝の上で身を捩った。
「おい、じっとしていろ。今から2人で一緒に書類を確認しないとならないのだから、おとなしくするんだ」
「え?しょ、書類の確認……?」
戸惑うアリアドネを他所に、扉付近で固まっているシュミットにエルウィンは声を掛けた。
「何をしている、シュミット。お前にも確認してもらわないとならないのだから、早くこっちへ来い」
「……あ!は、はい!す、すぐに!」
シュミットは頭の中がパニックになりながら、返事をした――。
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