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19-6 限界のシュミット
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翌朝――
いつものように朝9時にシュミットはエルウィンの執務室へとやってきた。
「ふぅ……」
扉の前で足を止めるとシュミットは少しだけ考えた。
(結局昨日エルウィン様は一度も部屋から出ることは無かった。扉の前に置いておいたワゴンから食事は手を付けていらっしゃったし、アリアドネ様もエルウィン様のお部屋から出た気配は無い。ということはつまり昨日、お二人は……うん、そういうことなのだろう)
「ひょっとすると今日もエルウィン様は執務室にいらっしゃらないのかもしれないな……」
何しろエルウィンは初めて恋愛に目覚め、暴走してしまっている。すっかりアリアドネに溺れて仕事どころでは無いだろうとシュミットは考えていたのだ。
一応、シュミットは扉をノックすることにした。
コンコン
するとすぐに扉越しから声が聞こえてきた。
『シュミットか?入れ』
「え?エルウィン様?」
慌てて扉を開けると、そこにはエルウィンが書斎机に向かって座っていた。
「おはよう、シュミット」
「あ?は、はい。おはようございます。エルウィン様。まさか……もう執務室にいらっしゃっていたとは……」
シュミットは執務室に入ると、自分の席に腰掛けた。
「ああ。ここ最近……ろくに仕事をしていなかったからな。しかも大事な仕事があるし」
エルウィンは何やら書類に目を通しながら返事をする。
「大事な仕事……ですか?」
(一体何のことだろう?今年度の城の予算の割り振りについてのことだろうか?まさか、訓練場を拡大しろと仰るのでは……?)
首を傾げていると、エルウィンが顔を上げシュミットに話しかけてきた。
「シュミット……そ、その昨日は……一日自室に籠もっていて……その、悪かった」
そう言うと、エルウィンは顔を赤らめた。
「え……?」
思わずシュミットは手にしていた書類をハラリと机の上に落としてしまう。
(う、嘘だろう……?あの、エルウィン様が顔を赤らめながら謝ってくるとは……)
「いえ。エルウィン様にも止むに止まれぬ事情があるでしょうから……」
「や、止むに止まれぬ……?う、うむ……。確かにそういう時もあるな」
ますます顔を赤らめるエルウィンにシュミットは、もう限界に近かった。
「ええ……そうですね……ハハハ……」
(勘弁してくれ……!今にもおかしすぎて吹き出してしまいそうだ……!)
その時――。
コンコン
丁度良いタイミングで扉がノックされた。
(良かった!誰だか知らないが助かった!)
「誰かいらしたようですね?すぐに見てまいります」
「あ、今のは……」
エルウィンが何やら言いかけていたが、シュミットは構わず誰かも確認せずに扉を開けた。
「あ、お、おはようございます。シュミット様」
「あ……おはようございます。アリアドネ様」
目の前に立っていたのは青いドレス姿のアリアドネだった。
そしてこの後、シュミットはますます笑いを堪えなければならない事態を目の当たりにすることになる――。
いつものように朝9時にシュミットはエルウィンの執務室へとやってきた。
「ふぅ……」
扉の前で足を止めるとシュミットは少しだけ考えた。
(結局昨日エルウィン様は一度も部屋から出ることは無かった。扉の前に置いておいたワゴンから食事は手を付けていらっしゃったし、アリアドネ様もエルウィン様のお部屋から出た気配は無い。ということはつまり昨日、お二人は……うん、そういうことなのだろう)
「ひょっとすると今日もエルウィン様は執務室にいらっしゃらないのかもしれないな……」
何しろエルウィンは初めて恋愛に目覚め、暴走してしまっている。すっかりアリアドネに溺れて仕事どころでは無いだろうとシュミットは考えていたのだ。
一応、シュミットは扉をノックすることにした。
コンコン
するとすぐに扉越しから声が聞こえてきた。
『シュミットか?入れ』
「え?エルウィン様?」
慌てて扉を開けると、そこにはエルウィンが書斎机に向かって座っていた。
「おはよう、シュミット」
「あ?は、はい。おはようございます。エルウィン様。まさか……もう執務室にいらっしゃっていたとは……」
シュミットは執務室に入ると、自分の席に腰掛けた。
「ああ。ここ最近……ろくに仕事をしていなかったからな。しかも大事な仕事があるし」
エルウィンは何やら書類に目を通しながら返事をする。
「大事な仕事……ですか?」
(一体何のことだろう?今年度の城の予算の割り振りについてのことだろうか?まさか、訓練場を拡大しろと仰るのでは……?)
首を傾げていると、エルウィンが顔を上げシュミットに話しかけてきた。
「シュミット……そ、その昨日は……一日自室に籠もっていて……その、悪かった」
そう言うと、エルウィンは顔を赤らめた。
「え……?」
思わずシュミットは手にしていた書類をハラリと机の上に落としてしまう。
(う、嘘だろう……?あの、エルウィン様が顔を赤らめながら謝ってくるとは……)
「いえ。エルウィン様にも止むに止まれぬ事情があるでしょうから……」
「や、止むに止まれぬ……?う、うむ……。確かにそういう時もあるな」
ますます顔を赤らめるエルウィンにシュミットは、もう限界に近かった。
「ええ……そうですね……ハハハ……」
(勘弁してくれ……!今にもおかしすぎて吹き出してしまいそうだ……!)
その時――。
コンコン
丁度良いタイミングで扉がノックされた。
(良かった!誰だか知らないが助かった!)
「誰かいらしたようですね?すぐに見てまいります」
「あ、今のは……」
エルウィンが何やら言いかけていたが、シュミットは構わず誰かも確認せずに扉を開けた。
「あ、お、おはようございます。シュミット様」
「あ……おはようございます。アリアドネ様」
目の前に立っていたのは青いドレス姿のアリアドネだった。
そしてこの後、シュミットはますます笑いを堪えなければならない事態を目の当たりにすることになる――。
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