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19-14 セリアの説得 ①
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「成程、エルウィン様が御自分の部屋にアリアドネを住まわせようとしているのですね?」
シュミットとエルウィンの部屋へ向かいながら、セリアが尋ねた。
「そうなのです、ただでさえ越冬期間明けも様々な事件が起こって仕事が滞っているのにですよ?この私に結婚式の段取りや準備だけでなく、挙句にご自身の部屋にアリアドネ様の引っ越し迄私に振って来るのですから」
余程シュミットは堪えているのか、ため息をついた。
「確かにそれは大変ですね……エルウィン様が恋に狂ってしまったという表現も納得できます」
「なので、セリアさんにエルウィン様の説得をお願いしたいのです。セリアさんの言うことなら流石にエルウィン様も話を聞いて下さると思いますから」
「どうでしょうか……?でも出来る限り、説得を試みてみますね」
「ありがとうございます!セリアさん!」
セリアの頼もしい言葉にシュミットは笑みを浮かべた――
****
「全く、シュミットの奴……話の途中で一体何処へ行ってしまったのだ……」
ソファに座ったエルウィンはアリアドネが淹れてくれたコーヒーを飲みながらブツブツ文句を言っている。
「エルウィン様。ですがシュミット様は……その、色々とお忙しい方ですから……」
エルウィンの隣に座るアリアドネが躊躇いがちに声を掛けた。
「だがこれは俺達2人にとって大切なことなのだぞ?俺はシュミットを信頼しているから、あいつに全て託そうと思ったのに……」
「エルウィン様……」
(困ったわ。どうすれば話を聞いて下さるのかしら……)
アリアドネが困り果てていた時、部屋の扉がノックされた。
コンコン
『エルウィン様。シュミットです』
「シュミットか!?すぐに入って来い!」
苛立ち紛れにエルウィンが扉に向かって声を掛けた。
「失礼致します……」
「この忙しい時に今迄一体何処へ行っていた!ん?お前……セリアじゃないか。一体どうしたんだ?」
執務室に入って来たシュミットにエルウィンは声を荒げ……次に首を捻った。
「セリアさん!」
アリアドネはセリアの姿を見て、ほっとした表情を浮かべる。
「エルウィン様、僭越ながら……アリアドネ様との件ですが、少々私の話を聞いて頂けないでしょうか?」
「ああ、いいぞ。そうだな、女性の意見も大事だ。しかも他ならぬセリアの話なら聞くぞ?」
「はい。まず初めに申し上げたいことですが、こちらのお部屋にアリアドネ様も暮らすということですが……それはおよしになられた方が良いかと思います」
「何故だ?この部屋が剣まみれだから?剣は別の場所に移動させろとシュミットに命じたぞ?」
腕組みするエルウィンに首を振った。
「いいえ、そういう問題ではありません。よろしいですか?いくらお2人が近い将来夫婦になられるとしても、互いのプライバシーは守らなくてはなりません。いえ、それどころか世間からアリアドネ様は自分専用の部屋を与えて貰えないと言われかねません」
「何だと?」
エルウィンの眉間にしわが寄る。
「アリアドネ様は辺境伯に嫁いだ為に冷遇されているという根も葉もない噂話が広がったらどうされるおつもりですか?王侯貴族たちからどのような目で見られるか分かったものではありません」
「それは違うぞ!俺はアリアドネとずっと一緒に居たいから部屋を一緒にしろと命じただけだ!」
臆面もなく、きっぱり言い切るエルウィンにアリアドネは顔を赤らめる。
一方、セリアとシュミットが呆れたのは言うまでも無かった――
シュミットとエルウィンの部屋へ向かいながら、セリアが尋ねた。
「そうなのです、ただでさえ越冬期間明けも様々な事件が起こって仕事が滞っているのにですよ?この私に結婚式の段取りや準備だけでなく、挙句にご自身の部屋にアリアドネ様の引っ越し迄私に振って来るのですから」
余程シュミットは堪えているのか、ため息をついた。
「確かにそれは大変ですね……エルウィン様が恋に狂ってしまったという表現も納得できます」
「なので、セリアさんにエルウィン様の説得をお願いしたいのです。セリアさんの言うことなら流石にエルウィン様も話を聞いて下さると思いますから」
「どうでしょうか……?でも出来る限り、説得を試みてみますね」
「ありがとうございます!セリアさん!」
セリアの頼もしい言葉にシュミットは笑みを浮かべた――
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「全く、シュミットの奴……話の途中で一体何処へ行ってしまったのだ……」
ソファに座ったエルウィンはアリアドネが淹れてくれたコーヒーを飲みながらブツブツ文句を言っている。
「エルウィン様。ですがシュミット様は……その、色々とお忙しい方ですから……」
エルウィンの隣に座るアリアドネが躊躇いがちに声を掛けた。
「だがこれは俺達2人にとって大切なことなのだぞ?俺はシュミットを信頼しているから、あいつに全て託そうと思ったのに……」
「エルウィン様……」
(困ったわ。どうすれば話を聞いて下さるのかしら……)
アリアドネが困り果てていた時、部屋の扉がノックされた。
コンコン
『エルウィン様。シュミットです』
「シュミットか!?すぐに入って来い!」
苛立ち紛れにエルウィンが扉に向かって声を掛けた。
「失礼致します……」
「この忙しい時に今迄一体何処へ行っていた!ん?お前……セリアじゃないか。一体どうしたんだ?」
執務室に入って来たシュミットにエルウィンは声を荒げ……次に首を捻った。
「セリアさん!」
アリアドネはセリアの姿を見て、ほっとした表情を浮かべる。
「エルウィン様、僭越ながら……アリアドネ様との件ですが、少々私の話を聞いて頂けないでしょうか?」
「ああ、いいぞ。そうだな、女性の意見も大事だ。しかも他ならぬセリアの話なら聞くぞ?」
「はい。まず初めに申し上げたいことですが、こちらのお部屋にアリアドネ様も暮らすということですが……それはおよしになられた方が良いかと思います」
「何故だ?この部屋が剣まみれだから?剣は別の場所に移動させろとシュミットに命じたぞ?」
腕組みするエルウィンに首を振った。
「いいえ、そういう問題ではありません。よろしいですか?いくらお2人が近い将来夫婦になられるとしても、互いのプライバシーは守らなくてはなりません。いえ、それどころか世間からアリアドネ様は自分専用の部屋を与えて貰えないと言われかねません」
「何だと?」
エルウィンの眉間にしわが寄る。
「アリアドネ様は辺境伯に嫁いだ為に冷遇されているという根も葉もない噂話が広がったらどうされるおつもりですか?王侯貴族たちからどのような目で見られるか分かったものではありません」
「それは違うぞ!俺はアリアドネとずっと一緒に居たいから部屋を一緒にしろと命じただけだ!」
臆面もなく、きっぱり言い切るエルウィンにアリアドネは顔を赤らめる。
一方、セリアとシュミットが呆れたのは言うまでも無かった――
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