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13 彼女の質問

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「クレア様。おまたせしました」

食事をトレーに乗せて、僕は彼女が待つ席へ戻って来た。

「さ、どうぞ温かいうちに召し上がってください」

トレーをテーブルに乗せると、クレアの前に本日のおすすめセットを置いた。
コーンスープに野菜サラダ、サンドイッチにイチゴババロア。
これだけで、ワンコインで食べられるので本当にお得だ。

「まぁ……とても美味しそうですね。ありがとうございます。でも……クリフ様はもしかして何も注文されなかったのですか?」

クレアは僕が自分の料理を持ってこなかったのを見て眉をひそめる。

「あ、僕はいいんですよ。実は自分のお昼の食事は持ってきてるんです」

肩から下げていた小ぶりのリュックを下ろすと、僕は中から蓋付きの紙ボックスを取り出した。

「それがお食事ですか?」

「はい、そうです」

蓋を開けると中には様々な具材のサンドイッチが入っている。実は今給料前で金欠気味なので、厨房に頼んで持ち運べる食事を用意して貰っていた。

「まぁ、美味しそうですね。でも……申し訳ございません」

何故かシュンとした様子でクレアが謝ってきた。

「え? 何故あやまるんですか?」

「お食事を持ってきていたのなら、わざわざ学食に来る必要が無かったわけですよね? それなのにお付き合いさせてしまったからです」

「そんなこと、気にしないで下さいよ! 元々友人との食事も学食で食べようとしていたのですから」

「でも……それさえも、私にお付き合いして頂いたためにお友達と食事が出来なかったわけですよね?」

「クレア様……」

駄目だ、彼女は何を言っても謝ってくる。僕はジュリオという横暴な主に仕えているおかげで謝るのは得意になったけど、謝られるのは正直言って苦手だ。
さっさとこんな状況は終わらせたい。

「そ、そんな話はもう終わりにしましょう。食事が冷めてしまいますから食べませんか?」

「そうですね。ではいただきますね」

そして奇妙な関係の僕達は向かい合わせで食事を始めた。

「ところでクレア様。僕に何か聞きたいことがあるのですよね?」

「はい、そうです」

スープを飲みながら頷くクレア。

「いいですよ。僕に答えられることならなんでもお聞きください」

クレアが聞きたいのはジュリオのことだ。こうなったらジュリオのありとあらゆる情報を彼女に伝え、お見合いがスムーズな流れで成功するように導くのが僕の務めだ。あんな未来なんて、断固お断りだ。

「はい、では質問させてください。どうして先程、この席が空くと分かったのですか? 教えてください」

「ええ!?」

思いもよらない質問に、僕は危うくサンドイッチを喉に詰まらせそうになってしまった。

「ゴ、ゴホ……」

「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫……です…‥」

クレアに差し出された水を何とか飲み干して落ち着くと、何故か彼女は目をキラキラさせながら僕をじっと見つめていた――
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