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冒険者~修行~

隠し部屋

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あれからフェリーチェたちは、アルベルトがガイを粉々にするのをなんとか阻止した。

「アルが落ちたのはどんな所だったの?」

「最初は炎の道で、次が吹雪の道だったんだ。その後、分かれ道になったからモヤモヤした方に行ったんだ~。そしたら、毒霧が充満してるしスライムに囲まれちゃって進めなかったから、横穴開けて進んでたら足下からムカつく気配がしたから、ブラックドラゴンになって脅かしたんだよ」

「横穴開けちゃったの?大丈夫かな?」

「穴は塞いできたから大丈夫だよ」

「問題なのはそこじゃないと思うが。まぁ、お互い無事で何よりだ。ところでアルベルト、それを渡してもらおうか?」

オースティンが差し出した手を見ながら、アルベルトは首を傾けた。

「何を渡すのさ」

「オースティンさん?」

「俺は誤魔化されんからな。ソレだソレ」

オースティンは、しらを切るアルベルトの腹部を指差した。
フェリーチェたちの視線がアルベルトの腹部に集中すると、少しして腹部が蠢きだした。

「おい、アルベルトの腹が!?」

「動いてる!?」

「クネクネしてます!」

「アル、いったい何を隠してる」

「だいたい想像できますけどね」

「もしかして……ズル~イ!私にはダメって言ったのに!」

「はぁ~……分かったよ」

アルベルトが観念して服の中から取り出したのは、1匹のスライムだった。
どうやら横穴を開けた時に、1匹だけ持ってきたようだ。

「お前な~」

「ちゃんと面倒見るよ。ねぇ、良いでしょ?」

「そいつは、ポイズンスライムだぞ。どうしても持って帰るなら、フェリーチェの従魔契約も自由にするんだよな?」

「そうだ、そうだ!」

「えぇ~……しょうがないな~返してくるよ」

「返すの!?せっかく契約できると思ったのに~」

スライムを持って帰るのと、フェリーチェの従魔契約を天秤にかけて、スライムを諦める事にしたアルベルトは、スライムを戻すために天井の穴へ跳び上がって行った。
それをフェリーチェは、ションボリしながら見送った。
アルベルトが戻って来たので、意気消沈しているガイに案内させて、どうにかあの部屋に辿り着く事ができた。
初めて来たアダムたちが、恐る恐る部屋に入るなか、フェリーチェとアルベルトはスキルを使い、部屋の中を物色し始めた。

「僕は右から行くから、フェリは左からね」

「は~い」

フェリーチェは、持ち上げたものを元の場所にちゃんと戻すが、アルベルトの方はポイポイと放り投げるので、ガイがキャッチしていた。

「ああいうのは性格が出ますよね」

「だな。確か、ここのものは持ち出し禁止と言ってたから、書写して行くか」

「では、私は向こうを見てきます」

ミゲルとネイサンは、2人の行動の意味を知っていたので、自分たちの目的を果たすために動き出した。
一方、アダムたちは訳が分からず、オースティンに尋ねた。

「叔父上、2人は何を探してるんだ?」

「ん?たぶん、隠し部屋だろうな」

「「「隠し部屋!?」」」

「あぁ、あの2人は楽しみにしてたからな」

「俺も探す!」

アダムがフェリーチェの方へ走って行き、それを見たオースティンとディランは、生暖かい眼差しをしていた。

((アルベルトよりフェリーチェの方が扱いが優しいからな~))

「グレースはどうする?」

「隠し部屋も気になりますけど……書物を見たいです」

「そう。じゃあ一緒に行こうね」

「俺はアダムを見張ってるから、何か変な物があったら知らせるんだぞ」

「「はい」」

それからフェリーチェたちは、一通り部屋のものや壁を調べたが、成果はなく隠し部屋はまだ見つかっていなかった。

「何処にもないね」

「ここじゃないのかな~」

「なぁ、そっちのドアじゃないのか?」

アダムが指差したのは、前回ガイが邪魔で入れなかったドアだった。

「アダム、‘隠し部屋’だよ?隠してる部屋なんだよ」

「分かってるよ!だけど、ドアに‘隠し部屋’って書いてるだろ!」

「はぁ?」「え?」

アダムに言われて、フェリーチェとアルベルトはドアを良~く見る。
すると、確かにそこにはかなり掠れた文字で‘隠し部屋’と書いてあった。

「「…………ガイ」」

「いや、あの……い、言おうとしたんだけど、あのっほら………僕って、うっかり屋さんだから!ハハハッ……ハハッ……」

「お前……それで誤魔化されると思ってるのか?」

「まさか‘隠し部屋’を堂々と目の前に置いてるなんて思わなかったね。全然、隠れてないし」

良い笑顔で迫ってくるフェリーチェとアルベルトに怯えて、ガイはオースティンの後ろに隠れた。

「まぁ、わざとじゃないなら許してやれ。それより部屋に入らないのか?」

「入るけど……まぁ良いよ」

「鍵は……あれ?鍵穴がないよ?」

「押しても引いても動かないぞ?」

開けようにも開けられず、視線がガイに集中したので、ガイは慌ててドアを指差した。

「‘隠し部屋’の文字の下に、何か書いてあるだろ?僕は読めなかったんだ」

「あぁ、確かに何か書いてるな?俺も読めないぞ。どこの文字だ?」

「これって、ニホンゴじゃない?」

「本当だ!え~と、‘このドアに鍵はない。何故開かないのか不思議だろう。ヒントをやろう!俺は日本人だ!’だって」

「……分からん。叔父上は?」

「さっぱりだ」

「僕も分かんないや。フェリは?」

「ドア……日本人って、もしかして」

何か思い付いたのか、フェリーチェがドアノブに手を伸ばして、おもむろに横にスライドさせた。

「「「開いた!?」」」

「やっぱり、スライドドアだったんだ」

「まさか横に動かすとはな」

「これだけなの?カラクリが趣味って書いてたから、何か仕掛けがあると思ってたのに」

「開いたんだから入ろうぜ!」

5人が部屋に入ると、自動でランプに火が着いて明るくなった。
しかし、部屋の中には豪華な剣が壁に飾られているだけだった。

「剣しかないぞ?しかも、この剣は本物じゃないよな?」

「以外……アダム、分かるんだ?」

「失礼だな!?剣は母上に叩き込まれてるし、俺も好きだから、いろいろ見てきたんだ」

「まぁ、これくらい見分けないとな。しかし、他にはないのか?」

「僕は初めて入ったから知らないぞ」

「ねぇねぇ、ここに何か仕掛けてるのかもしれないよ」

「だとしたら、剣だよね。取り合えずガイ、壁から下ろしてみてよ」

「何で僕が!?…………やらせていただきます」

アルの提案を断ろうとしたガイだったが、ひと睨みされてしぶしぶ剣に手を伸ばした。
しかし、剣はびくともしなかった。

「動かないな~また横にずらすとか?」

「さすがにそれは……なぁ、あの柄の中心にある宝石、もしかして魔石じゃないか?」

「ん?本当だ。あれだけ魔石だね」

「触ってみる?『浮遊』フロート

フェリーチェが浮かび上がり魔石に触ると、淡い光を発しながら何かが出てきた。

「フェリ、下がって!」

「アダム、お前も下がれ!」

警戒するなか、魔石から出てきたものはしだいに形をなしていき、黒髪黒目の青年の姿が現れた。

{良くぞ辿り着いた。俺は不知火幸しらぬいこう、ここを作った者だ。安心してくれ、本当の隠し部屋は別にある。部屋の中には、俺が作ったものや集めたものがある。なかには、使い方を間違えれば厄災を招くものもあるだろう。君が正しく使用してくれる事を願う}

「この人が……」

「へぇ~、この映像もカラクリかな?それとも魔道具かな?」

「何があるのか楽しみだな」

「それにしても、厄災を招くって物騒だな。アダム、分かってると思うが何でもかんでも触るなよ」

「う~ん……どこかで見たような」

それぞれ感想を言っていると、青年の真面目な雰囲気が変化した。

{かたっくるしいのはこれくらいにして、部屋に入る方法を教えるぜ。最初に魔石に触れた奴の魔力を記録して鍵の変わりにするから、今後はそいつがいないと開かないからな。さっきは使い方がどうのこうの言ったが、好きに使っちまえ!まずは自分が楽しい人生をおくらなきゃ損だぞ!その他は後回しで良いさ!それじゃあな!}

その言葉を最後に、青年の姿が消えた。

「手紙と同じパターンだったね」

「彼の経験からくる言葉かな。気持ちは分かる気がするよ」

「自由に使って良いって事だよな!」

「アダム、お前は慎重に慎重を重ねて慎重に扱え。使って問題ないか確認するから、勝手に使うなよ」

「はいは~い」

「「「聞いてないな」」」

フェリーチェが再び魔石に手を触れると、剣の横の壁がスライドした。
中に入ると、今度はいろいろなもので溢れていた。
フェリーチェとアルベルトとガイ、アダムとオースティンでそれぞれ何があるか探す事にした。

「うわぁ……ごちゃごちゃだ。これ一回整理した方が良いよ」

「だね~。ガイ、棚とかないの?」

「う~ん……あっ!あそこにあるの棚じゃないか?」

「本当だ。フェリは、ものを浮かせて。僕とガイで整理していこう」

「「おぉ~」」

まずは片付ける事にした3人は、協力して作業していた。
アダムとオースティンも、片付けをしながら物色していたが、アダムが何か見付けたのか動きを止めた。
アダムは紫の瓶をオースティンに見せた。

「なあなあ叔父上、これ母上とサマンサ叔母上にどうかな?」

「どれだ?……‘『若返りの雫』これ1滴で5歳は若返る奇跡の雫’?胡散臭いな。お前……こんなの渡したら、受け取った後で殺されるぞ」

「受け取るのに殺すのか!?……渡すのは止めて、何かあった時の切り札にしよう」

「お前な~……まったく。持って帰るなら、アルベルトに鑑定してもらってからだ」

「分かった!お~い、アルベルト!」

アダムは、アルベルトに向かって走り出した。
しかし、この部屋はものが散乱していて、走るスペースはなかった。
案の定アダムはスッ転び、ビンが空中を舞いガイの頭で割れてしまった。

「ギャッ!?な、何だこれ!」

「ガイ、大丈夫!?」

「ちょっとアダム、こんな所で走らないでよ」

「アダム、あれほど慎重にと言ったのに」

「……すいません」

さすがに悪いと思ったのか、アダムは素直に誤った。
その時、ガイの体が光だし姿が見えなくなった。

「ガイが光ってる!?」

「ちょっと!さっきの何だったの?」

「「若返りの雫、1滴で5歳は若返る奇跡の雫」」 

「若返りですか!?」

「1滴で5歳って事は、あの大きさだと……もしかして」

アルベルトが嫌な予感に口元を引き吊らせていると、光が弱くなっていく。
そして、現れたのはさっき映像で見た不知火幸だった。

「えぇ!?ガイなの!?」

「うわぁ……やっぱり」

「か、か、体ができてる!?」

「結界的には良かった……のか?」

「どうしたんだ?僕はどうなってるんだ?」

突然の事に騒然となるフェリーチェたちは、首を傾げる見ため不知火幸のガイに同時に言った。

「「「「説明しずらいから、鏡をみて」」」」

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