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2・ライブ配信_舞音1
ライブ配信 ① UDさん
しおりを挟む「こんばんは~」
配信を始めると、続々と集まってきてくれる。『こんばんは~』と挨拶を返してくれるコメント欄。こうやってみんなと交流するのがすごく好き。会ったことはないけれど、この時間だけは、ファンの人たちを近くに感じられるから。
「ん? 今日? 今日はお茶~。凍頂烏龍茶にしたよ。まだ寒いからね。あ、待っててくれたの? ほんと? ありがと~」
『新しいスタジオどうだった?』
「そうそう、そのことをみんなに話したかったんだよ、聞いて~!」
『すみません初見です。詳しく教えてください』
「あ、初見さんだ! UD、さん。ありがとうございます!」
流れていくコメント欄の中から見つけた、初見の文字。初めましての方が来てくれると、いつだって嬉しくなる。どこかで俺を知って、配信まで見に来てくれるなんて。
俺は感謝を込めてスマホの画面に向かって合掌し、笑顔で手を振った。
「他にも知らない人がいるかもしれないので簡単にお話すると、俺が高校の時から使わせてもらってたダンススタジオが、老朽化で改修工事することになったんですね。だけどそこが地元で唯一の場所だったので、練習ができなくなっちゃったんです。それで新たな場所を開拓しよう! ということで探してたっていうお話」
『マオトの高校時代の友人の家が、ダンス教室やってた』
『社交ダンスな』
『バレエ教室も』
『マオトはそれらの入ってない時間を借りて、やってきてたんです』
「みんな、補足ありがとう~」
俺が上手く説明できない分、ファンの子たちがいつもこうして初見さんに聞かれたことを教えてあげてくれる。俺は本当に、優しい人たちに見守られているなと実感する。
『今まではそのご友人とダンスしてきたんですか?』
UDさんの質問を見つけた。
「友人はダンスやってなくて、おじさんと直で連絡とり合ってました。てかそもそも大学入るまで一人だったんだよね、俺。大学で仲間ができて、動画投稿始めたけど、その人たちも仕事が忙しいとか色んな理由で踊るのやめちゃって」
自分の楽しいを優先して生きるのって、難しい。あっさりきっぱりやめた人もいれば、仕方ないんだと言って決断を迫られて辞めていった人も見てきた。
「好きだからって理由だけで、続けられるわけじゃないんだよね。それなりに折り合いを着けなきゃいけないこともある。俺は踊ることが生き甲斐だから、何を差し置いてもやめられないんだけど」
『続けてくれてありがとう』
『私もマオトのダンスを見ることが生き甲斐』
「へへ、うれしい。わりと最初の頃から見守ってくれてる人もいるよね。いつも支えてくれてありがとうございます。感謝してます」
『配信では顔出ししてるんですね』
また、UDさんのコメントを見つけた。
「うん、そう。動画だけじゃなくてわざわざ配信まで見てくれるみんなには、ちゃんと誠意をもって応えたいと思って、顔、出してますね。動画はダンスを見て欲しいので、アレなんですけど」
『新しいスタジオの話は?』
「あ、そうだった! それだよ、大事な話!」
つい脱線してしまうのを、いつも誰かが引き戻してくれる。
応援ありがとうございます!
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