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4話「彼に初めて会う日です」
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今日はオルフォと初めて対面する特別な日だ。
彼がこちらの国へ来てくれることとなった。つまり迎え入れるという形になったのだ。なので我が国はというと昨夜からずっと準備に追われていた。そして私もまたのんびりとはしていられず、朝早くに起きて身支度をした。朝から予定がびっちり詰まっていてとにかく大変だった。
そうしてようやくオルフォを迎える時間がやって来るのだが、その時には既に私の体力は消耗しきっていた。
ただ、それでも休む間などなく、そのまま彼が訪れる時間がやって来てしまう。
「初めまして、エーリア・エミニカと申します」
笑顔で迎え入れる。
しかし第一声は緊張で声が震えていた――多分、そんな気がする。
「よく来てくださいました」
オルフォは精悍な顔つきの青年だった。
さすがは大国の貴い人、とでも言うべきか。
私を含むこの国の王族とも、アッシュらのようなこれまで出会ってきた王族とも、雰囲気からして異なっている。
「初めまして」
彼はやがて片手を差し出す。
対する私はその手を握った。
「――しかし」
「え?」
「以前一度お見かけしたことはあるのです。それゆえ、初めて貴女の顔を見るわけではないのですよ、こちらは」
オルフォは意外にもすらすらと言葉を紡ぐ人だった。
高貴な見た目に反して口を開けばどことなく親近感を抱かせてくれるような人物だ。
「本日はよろしくお願いしますね、エーリアさん」
「こちらこそ」
怖い人ではないのかもしれない……、そんなことを思ってほっとして、城内へ案内するべく歩き出そうとしたのだが――。
「わ!!」
一歩踏み出そうとした瞬間、転んでしまった。
「エーリアさん!?」
起こるざわめき。
背後から飛んでくるのは驚きの声。
は、恥ずかしすぎる……。
「……も、申し訳ありません」
今きっと顔は真っ赤になってしまっていると思う。
しかし彼は。
「大丈夫ですか? お怪我は」
笑うでも馬鹿にするでもなく、腰を折って、手を差し出してくれた。
「あ……」
「高いヒールですし歩きづらいことでしょう。ひとまず、お怪我がなかったようで何よりです」
「申し訳ありません……本当に、馬鹿で」
思わず本音が出てしまったが。
「馬鹿ではありませんよ、時に誰にでも起こることです」
彼はナチュラルに優しかった。
いや、こんなくらいでほだされていては駄目だ。
これは単なる彼の親切心であって、そこに、特別なそれ以上の意味なんてないのだから。
意識しちゃ駄目! と自分に言い聞かせつつ立ち上がる。
「失礼しました。では気を取り直して、案内します」
「ありがとうございます」
そこからしばらくは問題は発生せず、やるべきことを順調に進めることができた。
私にしてはましな結果だろう。
……といっても、最初にいきなりやらかしたことに変わりはないのだが。
◆
「それで、オルフォ様は、なぜ私のような者と婚約を?」
城内を少し見せて回った後、二人での休憩時間がやって来る。
おおよそお茶会みたいなものだ。
休憩というのはあくまで名称である。
室内にはオルフォについてきた従者が数名いて目を光らせている。
万が一何か事件が起きたら速やかに対処しなくてはならないからだろう。
それゆえ少々息苦しさの感じるのだが。
でもそれは仕方のないことだ、大国の王子がここにいるのだから。
彼がこちらの国へ来てくれることとなった。つまり迎え入れるという形になったのだ。なので我が国はというと昨夜からずっと準備に追われていた。そして私もまたのんびりとはしていられず、朝早くに起きて身支度をした。朝から予定がびっちり詰まっていてとにかく大変だった。
そうしてようやくオルフォを迎える時間がやって来るのだが、その時には既に私の体力は消耗しきっていた。
ただ、それでも休む間などなく、そのまま彼が訪れる時間がやって来てしまう。
「初めまして、エーリア・エミニカと申します」
笑顔で迎え入れる。
しかし第一声は緊張で声が震えていた――多分、そんな気がする。
「よく来てくださいました」
オルフォは精悍な顔つきの青年だった。
さすがは大国の貴い人、とでも言うべきか。
私を含むこの国の王族とも、アッシュらのようなこれまで出会ってきた王族とも、雰囲気からして異なっている。
「初めまして」
彼はやがて片手を差し出す。
対する私はその手を握った。
「――しかし」
「え?」
「以前一度お見かけしたことはあるのです。それゆえ、初めて貴女の顔を見るわけではないのですよ、こちらは」
オルフォは意外にもすらすらと言葉を紡ぐ人だった。
高貴な見た目に反して口を開けばどことなく親近感を抱かせてくれるような人物だ。
「本日はよろしくお願いしますね、エーリアさん」
「こちらこそ」
怖い人ではないのかもしれない……、そんなことを思ってほっとして、城内へ案内するべく歩き出そうとしたのだが――。
「わ!!」
一歩踏み出そうとした瞬間、転んでしまった。
「エーリアさん!?」
起こるざわめき。
背後から飛んでくるのは驚きの声。
は、恥ずかしすぎる……。
「……も、申し訳ありません」
今きっと顔は真っ赤になってしまっていると思う。
しかし彼は。
「大丈夫ですか? お怪我は」
笑うでも馬鹿にするでもなく、腰を折って、手を差し出してくれた。
「あ……」
「高いヒールですし歩きづらいことでしょう。ひとまず、お怪我がなかったようで何よりです」
「申し訳ありません……本当に、馬鹿で」
思わず本音が出てしまったが。
「馬鹿ではありませんよ、時に誰にでも起こることです」
彼はナチュラルに優しかった。
いや、こんなくらいでほだされていては駄目だ。
これは単なる彼の親切心であって、そこに、特別なそれ以上の意味なんてないのだから。
意識しちゃ駄目! と自分に言い聞かせつつ立ち上がる。
「失礼しました。では気を取り直して、案内します」
「ありがとうございます」
そこからしばらくは問題は発生せず、やるべきことを順調に進めることができた。
私にしてはましな結果だろう。
……といっても、最初にいきなりやらかしたことに変わりはないのだが。
◆
「それで、オルフォ様は、なぜ私のような者と婚約を?」
城内を少し見せて回った後、二人での休憩時間がやって来る。
おおよそお茶会みたいなものだ。
休憩というのはあくまで名称である。
室内にはオルフォについてきた従者が数名いて目を光らせている。
万が一何か事件が起きたら速やかに対処しなくてはならないからだろう。
それゆえ少々息苦しさの感じるのだが。
でもそれは仕方のないことだ、大国の王子がここにいるのだから。
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