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6話「疲れた日はお風呂が最高です」

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「今日はお話しできて良かったです」

 帰りしな、オルフォはその精悍な面にどことなく甘い微笑を浮かべていた。

「やはり魅力的な方ですね、貴女は」
「え、何ですか急に」

 どことなくうっとりしたような目つきで見られると戸惑いが大きい。

 だ大国の王子である彼ならきっとこれまでいろんな女性と出会ってきただろう。地位のある女性や美しい女性など色々な素晴らしい女性たちと交流してきたはずだ。

 なのに選んだのは私?

 どうしても疑問に思ってしまう部分があるのだ。

「いいですよ、そのようなお世辞は」

 褒め言葉を純粋に受け入れるのが怖くて冗談めかせば。

「いえ違いますよ、本心です」

 彼はさらりとそう返してきた。

「すみませんが……まだ戸惑っています、私、どうして私なのかがちっとも理解できなくて」
「どういうことです?」
「だって、貴方のような人の周りにならもっと素晴らしい人がたくさんいらっしゃるはずじゃないですか」
「貴女は特別です」
「それが理解できなのです。本心だとしても……そうだと受け入れることができないのです。なぜ私なのと疑問符ばかりが出てきて」

 オルフォのことは嫌いではない。
 でもつり合っているとはとても思えない。

 私たちがくっついて本当に問題ないのだろうか?

「僕にとって貴女は特別な人なのです」
「……見た目が好きだから、ですか?」
「そうですね、初めはそれでした。しかし今日こうしてお会いしてみて貴女への想いはより強く確かなものとなったように感じます」

 彼は流れるように言葉を紡ぐ。

「いつも一生懸命なところ、そして、時折おっちょこちょいな感じがするところも――すべてまとめて、貴女に惹かれています」

 婚約の件、考えておいてくださいね。

 彼の本日最後となる言葉はそれだった。


 ◆


「はああ……つ、つ、疲れたあああ……」

 オルフォとの一日は精神的な疲労が大きかった。

 彼が嫌な人だからではない。
 私が勝手に心労を作り出しているだけだ。

 でも、こんな夜は、温かなお湯に包まれるお風呂がとても気持ちいい。

「エーリアさんほんっとーにお風呂お好きですね!」
「ええ、とても好き。疲れた日は特に……入らなくてはやっていけないわ。最高のストレス発散よね、入浴って」

 今は仲良しな若い侍女が話し相手になってくれている。

 これは初めてのことではない。
 今までも彼女にはたびたび話し相手になってもらってきた。

 侍女と言っても様々な人がいる。それゆえ接し方も様々、こちらの意識にも差はある。そんな中で、彼女に関しては、少しも気を遣わないで接することができる。昔からの友人みたいなものだからだろう、気兼ねなく言いたいことを言い合える。王女と侍女である前に、私たちは親友だ。

「それで、どうだったんですか? オルフォ様は」

 時に深く踏み込まれることもあるけれど。

「良い人だったわ」

 でもそれを不快だとは思わない。

「おおおー!? これはキタ!? もしかして、キタ感じですかっ!?」
「でも……私にはもったいない殿方だわ」
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