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第52話 第三王子は父上と母上から話しを聞く!

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父上が笑いながら母上のベアハグを止めてくれなかったら危うく『HP0』で天国の住人になるところだった『シュウ』です。
本当にヤバかったです。父上! 息子が苦しんでいるのに笑っているとは、さすが毒親の鏡!



『ゴホッ ゴホッ!』

身体中の酸素が減少し、ベアハグの解放で少しづつ身体中に酸素が巡り始めた。

「ゴメンね。ママ、シュウちゃんに会えて嬉しくって……」

「母上、僕は大丈夫ですから……」

「シュウちゃん! いつも『ママ』と呼びなさいって言ってるでしょ!」

「ハ、ハイ…… ママ……」


「マ、ママ……」

エリスは母上と僕のやり取りをドン引きした目で眺めていた……


「エリス、誤解しないでくれ! いつも『母上』と呼んでるから! その目だけはやめてー!」

「お義母様もその辺で…… シュウ君も困ってますので」

「フフフッ。かわいいエリスちゃんの頼みだからこの辺でやめてあげるわね。シュウちゃん」


――一瞬、嫁姑戦争が勃発したかと思ったが、母上とエリスは良好な関係のようで安心した。しかし、エリスは僕の両親と仲が良いよな? エリスはやっぱりコミュ力が高いんだろな……


「シュウよ。しばらく顔を見ていなかったが、顔つきが大人になってきたな」

「そうですか? 自分では気が付きませんでした」

「『男子、三日会わざれば刮目かつもくして見よ』とは、よく言ったものだな」


――はぁ!? 何故? 父上は、三国志演義のの武将、呂蒙りょもうの故事を知っているんだ? 父上も転生者か!?


「父上、その言葉はどこで覚えたのですか?」

「エリスちゃんから聞いたぞ」


――マジか!? あのたぬき、三国志まで網羅しているのか。さすが『百年に一匹の天才』と言われるだけの事はあるな…… でも、たぬきが三国志を読んでる姿は、なんか笑えるな。


「エリスは博識で素晴らしい女性です。私には勿体ないくらいです」

「そうだな」

「…………」


――!? おい、父上! 頼むからそこは否定してくれよ!



暫しの沈黙がながれ、エリスが助け舟を出してくれた。


「お義父様、お義母様。私の両親が待っておりますので、屋敷までご案内しますね」

「ああ、エリスちゃんお願いする」



僕たちはお屋敷へ向かった。途中で父上に聞いてみた。


「あの二人はどなたですか? ハルタンに連れて来てもよろしかったのですか?」

「ああ、構わない。あれ達は私の影部隊の部下だ。まぁ、護衛だと思ってくれ」

「そうなんですか? 初めて聞きました」

「王になれば秘密も増えるものだ! ハハハハハハッ!」


父上は高笑いをし、僕に『ニコリ』とニヤけた顔を見せた……


それにしても父上と母上は初めて来たところなのに周りを『キョロ キョロ』しないな。国王、王妃になれば、何事も動じないのだろう。まぁ、肝が据わってるってヤツだな。



エリスのお屋敷に着くとお母上様とお父上様が玄関の外で待ってくれていた。


父上と母上が、お母上様とお父上様に近付き、


「おお、アリエスにマルクス! 随分と久しぶりだな!」

「ブルースにセリーナもホント久しぶりね。二人共、元気だった?」

「アリエス! ホント会いたかったわ! 私なんてすっかりオバチャンよ。マルクスも久しぶりね」

「ブルースは年をくったが、セリーナはあの頃と変わらんなぁ」

「あら!?  マルクスはあいからずお口がお上手ね」

「何を言っている。マルクス、私だってまだまだ若いヤツらには負けないぞ」

「おお、そうだ! ライアンとクリフも連れて来たぞ!」

「アリエス殿、マルクス殿。お久しぶりです」

「アリエス殿、マルクス殿。おなつかしゅうございます」

「あらー!?  ライアンさんとクリフさん? 二人共、来てくれたの? なつかしいわね」


よくわからんが6人で話しが盛り上がっている……


――!? ハァ? ハァァァ!? 何これ? どういうこと? 何見せられてるの? これは夢? まさかの夢オチかぁ!? モウワケワカンネェーヨ!



「もともと私のお母様、お父様とシュウ君のお義父様、お義母様は友人同士だったみたいなの」

「ハイ!? あの会話で何となく察することは出来たけど、今まで自分の両親がお母上様とお父上様の関係者とか微塵身にも思わなかったし、想定外を遥かに超えて、斜め上を行ってるよ」

「ゴメンね、シュウ君。お義父様がどうしても自分の口から伝えるっていうから…… 私には黙っていてくれってお願いされたの」

「エリスは、何も悪くないよ。あとでどういうことか父上に聞いてみるよ」

「そうね。お義父様にもお考えがあると思うから」

「うん、わかったよ」





父上たちの話しはまだ続いているようで、


「ブルース。今日は泊まっていけるだろ?」

「ライアン、クリフ。別に問題はあるか?」

「問題はありません。何かありましたら、こちらで処理しますので」

「マルクス。そういうことで大丈夫だ。今宵は思う存分飲み明かそう。そう思ってすでに酒を持って来ている」

「おう、良いね。今夜は久しぶりに語り明かそうぞ」

「ブルース。あなたも若いわけじゃないんだから、ほどほどにしなさいよ」

「そうよ、マルクス。あなたも同じよ。だけどセリーナと久しぶりにお喋り出来るのはうれしいわ」

「アリエスったら。今夜は女子会よ!」


「そうだったわ、ブルース。シュウ君と話すことあったんじゃないの? 部屋は準備してあるから」

「おお、そうであった。あまりの懐かしさでうっかりしておった」

「シュウ君。親子3人でゆっくり話してみなさい。これから自分が何をしなきゃいけないか見えてくると思うから……」

「ありがとうございます。お母上様」

「エリス。3人を部屋まで案内してあげて」

「はい、お母様」


エリスに部屋まで案内をしてもらい、僕と父上、母上で話しが始まった。



「最初に父上と母上は、どうしてエリスのご両親とご友人なのですか?」

「うむ、この話しは誰にも言っておらんから誰にも言うなよ。約束できるな?」

「はい、何があっても漏らしません」

「そうか…… 私がまだ王太子の頃の話しだ……」


『ゴクリ……』


僕は、緊張のあまり唾を飲み込んだ……
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