断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第27話:絶望の宣告と芽生えた絆

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どれくらいの時間が、経ったのだろうか。
この空間には、太陽も、月もないため、時間の感覚が、完全に麻痺していた。
永遠とも思える、静寂の中で、私は、ただ、ゼノン様の傍に座り続けていた。

「……ん…」

不意に、私の膝の上で、彼が、小さく身じろぎした。

「ゼノン様!?」

ゆっくりと、彼の瞼が、持ち上がる。
そして、凍てつく湖面を思わせる、アイスブルーの瞳が、私を、捉えた。

「…イザベラ…?」

その声は、ひどく、掠れていた。

「よかった…! 目が覚めたのですね!」

安堵から、思わず、涙が溢れる。
私が泣いているのを見て、彼は、驚いたように、目を見開いた。

「…なぜ、泣いている」

「だって…あなたが、ずっと、目を開けなかったので…! このまま、死んでしまったらどうしようかと…!」

「馬鹿を言え。俺が、お前を置いて、死ぬわけがないだろう」

彼は、ゆっくりと、身体を起こした。
そして、私の涙を、不器用な手つきで、拭ってくれる。
その指先が、まだ、少し冷たい。

「怪我は、ないか?」

「ええ、わたくしは、大丈夫です。あなたが、庇ってくださったから」

「そうか。なら、いい」

彼は、ほっと、息をついた。
自分のことよりも、先に、私の身を案じてくれる。
そのことが、私の胸を、温かくした。

「それで…ここは、一体、どこなのですか? リリアナは、時の狭間、と…」

私の問いに、ゼノン様は、辺りを見回し、そして、厳しい表情で、頷いた。

「…ああ。奴の言う通りだ。ここは、古代魔法で作り出された、亜空間。通称、“クロノスの牢獄”」

「クロノスの、牢獄…」

「時間軸そのものから、切り離された、因果の果ての場所だ。かつて、神々が、最も罪深き者たちを、封じ込めたと、伝えられている」

神々が、作った、牢獄。
そんな、伝説上の場所に、私たちは、いるというのか。

「では、ここから、脱出する方法は…?」

恐る恐る、尋ねる。
どうか、希望のある答えが、返ってきますように、と。

しかし、ゼノン様は、静かに、首を横に振った。

「…通常の、転送魔法や、空間魔法では、不可能だ」

「そん、な…」

「この空間は、外の世界の、あらゆる理から、独立している。内側から、干渉することは、極めて困難だ。…つまり」

彼は、残酷な事実を、告げる。

「我々は、ここに、閉じ込められた、ということだ」

絶望的な、宣告。
永遠に、この何もない世界で、過ごさなければならないというのか。

私の顔から、血の気が、引いていくのがわかった。
足元が、崩れ落ちていくような、感覚。

「申し訳、ありません…」

ぽつり、と、私の口から、謝罪の言葉が、漏れた。

「え…?」

「わたくしが、リリアナの罠に、軽々しく乗ってしまったから…! あなたまで、こんなところに…! わたくしの、せいですわ…!」

罪悪感に、胸が、押しつぶされそうになる。
私が、もっと、慎重でいれば。
私が、ゼノン様の言うことを、素直に聞いていれば。

すると、ゼノン様は、深く、ため息をついた。
そして、私の両肩を、強く、掴んだ。

「…お前のせいではない」

「ですが…!」

「これは、俺の、責任だ」

彼は、自分を責めるように、言った。

「敵の狙いが、お前であることは、わかっていたはずなのに、万全の対策を、怠った。お前を、危険な目に、遭わせてしまった。…すべて、俺の、落ち度だ」

彼は、私を庇って、魔力を、大きく消耗していた。
それで、気を失ってしまったのだ。
彼は、何も、悪くない。
悪いのは、私なのに。

「…お前は、悪くない」

彼は、もう一度、繰り返した。
その声は、どこまでも、優しかった。

「だから、そんな顔をするな。必ず、ここから、脱出する方法を、見つけ出してやる」

「ゼノン様…」

「そのために、お前にも、協力してもらうぞ、“共犯者”」

彼は、初めて、悪戯っぽく、笑った。
それは、私が、今まで見た、どの彼の表情よりも、人間味にあふれていて、そして、魅力的だった。

絶望的な状況。
出口のない、牢獄。
でも、不思議と、もう、怖くはなかった。

彼が、隣にいてくれるなら。
二人でなら、きっと、乗り越えられる。

そんな、根拠のない、確信が、私の心の中に、芽生え始めていた。
それは、恐怖と絶望の先に生まれた、小さな、小さな、絆の光だった。
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