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第7章 新国テンプルム
第308話 奴隷商人
建国してから1ヶ月と3週間が過ぎた。
メジェールとリノが企画した動物園は『モンスターパーク』へと内容を変え、建国2ヶ月にあわせて開園できるよう、現在は大忙しで準備を進めている最中である。
エーアストを奪還する前は、魔王軍についてずっと重くのし掛かる毎日だったので、正直こんなに楽しげに働くメジェールたちを見るのは久しぶりだ。いや、初めてかもしれない。
無事成功を祈りたいところだ。
その魔王軍だけど、今のところは特に何かの動きを察知したという情報はない。
各国で警戒はしているんだけど、それらしい事件は起こっていないし、モンスターにも怪しい兆候などはない。
結構完膚無きまでに叩いたから、魔王軍といえども2ヶ月程度じゃ整え直すのは難しいと思うし、今はどこかで力を溜めているってところだろうとは思うけど。
グランディス帝国と全然連絡が取れなくなっているというのが、少し不気味なんだけどね。
僕はまだ新王としてコンタクトをとったことは無いんだけど、シャルフ王とかが接触しようとしても、完全に無視されている状態のようだ。
帝国に調査に行ったフォルスさんからも未だに報告がないらしいので、さすがに見過ごせない状況となってきた。
ただ、あの帝国相手だけに、こっちも安易に強攻策に出ることはできない。
それともう1つ気になることが。
フィーリアが以前行った『神託の儀』においての預言では、『人ならぬ国』にて魔が現れるとのことだった。
これは恐らく魔人国を指しているのではないかと推測しているんだけど、こちらも接触するのが非常に難しい国だ。
ある意味、帝国以上にデリケートな対応が必要となるだろう。
ヴァクラースを倒して見通しが明るくなったと思ってたのに、にわかに前途多難な様相になって来ちゃって、少し気落ちしている。
とりあえず、何かしらの兆候を見つけたら、すぐに調査しようとは思ってる。
◇◇◇
「ユーリ様、ちょっとお力をお借りしたいのですが……」
フィーリアから魔導通信機で連絡が入ったので、急いでその場に駆け付けてみると、部屋には大柄でやたら脂ぎった肌をした、頭の薄い50歳くらいの男が椅子に腰掛けていた。
男の後ろには、護衛らしき屈強な男が2人付き添っている。
その脂ぎった男は、僕が部屋に入るなり立ち上がって、仰々しく挨拶をしてきた。
「これはこれは、お若い王様と聞いてはおりましたが、ここまでお若い方でしたとは……。この度はお忙しいところ申しわけございません、お初にお目にかかります、行商を営んでいるスクラヴォスと申します。陛下には改めてご挨拶に伺うつもりだったのですが、このような場でお会いすることに……」
「あ、挨拶はその辺で。早速本題に入りましょうか」
やたらペコペコと腰を低くして挨拶してきたけど、この男がとんでもなく邪悪な意志を持ってることは解析で分かっている。
悪意を見通せるフィーリアも当然気付いているわけで、これは自分の手には余ると思って僕を呼んだのだろう。
ざっと話を聞いたところでは、フィーリアが移住者に対して面接を行っていると、入国ゲートから連絡が入り、大型馬車の荷台から複数の人間が発見されたとのこと。
それは10人の女性で、その人たちはいま別室に待機させているとか。
恐らく、奴隷の密売をしようとしているのは分かった。
この状況なら、これは誰でもピンとくる。だからすぐに僕のところまで通達が来たんだろうけど。
問題は、奴隷商売については国際的に禁止されていることだ。
基本的には表立って売り買いすることはできない。ただし、その拘束力は国際条約に批准している国に限る。
実は僕の国テンプルムは、まだ国際条約に批准していない項目がいくつかある。この奴隷売買禁止についても、僕の国は批准前だ。
なので、現状の法律では、僕の国ではただ奴隷を連れているだけでは逮捕ができない。
これも短期間で建国してしまった弊害ではあるが、奴隷商人はそこを狙ってきたんだろう。
ちなみに、世界各国が奴隷売買禁止となっているけど、グランディス帝国はこの条約に批准してない。
だから、大っぴらにというわけではないが、帝国では奴隷売買が日常的に行われている。
このテンプルムを、帝国に次ぐ第2の奴隷市場としたいんだろうな。世界で禁止されているとはいえ、裏取引は頻繁に行われているようだし。
ここは周りに国も多いし、もってこいの好条件だ。
「ユーリ国王陛下はとても賢いお方だと伺っておりますので、すでにお気づきになっていると思いますが、ワタシはここで下層階級――つまり、奴隷の売買を行いたいのです。できればその許可をいただければ幸いなのですが……」
「お断りします。奴隷たちを入国させるだけならまだしも、公序良俗に反する行為をした場合、即逮捕しますよ。今すぐお帰りになることをお勧めいたしますが?」
連れてきた奴隷たちを保護してあげたいところだけど、国王とはいえ、現状の法律にないことをやるのはあまり良くない。
ただ奴隷を連れていただけでは、一緒に旅をしていると言われたら罪に問うことができないし。
もちろん、王の権限というのを行使もできるけど、まだ建国して間もないし、王が独断で裁く国と思われるのはマイナスだ。
「そんなことを仰らずに、是非お願いいたしますよ。ユーリ陛下には忠誠をお誓いいたしますので。けっして陛下にはご迷惑をお掛けいたしません。ですから、なにとぞ奴隷売買の許可を……」
「くどいですね。不敬罪で逮捕されたいのですか?」
「ユーリ陛下とは長いお付き合いをしたいのです。ですので、奴隷売買禁止条約にも批准していただきたくないですな。この商売がいかに儲かるかを知っていただければ、陛下のお気持ちも変わるはず」
こいつ……ぶっとばしたい! 何か逮捕できる罪ってないかな?
奴隷たちを助けてあげたいし……。
メジェールとリノが企画した動物園は『モンスターパーク』へと内容を変え、建国2ヶ月にあわせて開園できるよう、現在は大忙しで準備を進めている最中である。
エーアストを奪還する前は、魔王軍についてずっと重くのし掛かる毎日だったので、正直こんなに楽しげに働くメジェールたちを見るのは久しぶりだ。いや、初めてかもしれない。
無事成功を祈りたいところだ。
その魔王軍だけど、今のところは特に何かの動きを察知したという情報はない。
各国で警戒はしているんだけど、それらしい事件は起こっていないし、モンスターにも怪しい兆候などはない。
結構完膚無きまでに叩いたから、魔王軍といえども2ヶ月程度じゃ整え直すのは難しいと思うし、今はどこかで力を溜めているってところだろうとは思うけど。
グランディス帝国と全然連絡が取れなくなっているというのが、少し不気味なんだけどね。
僕はまだ新王としてコンタクトをとったことは無いんだけど、シャルフ王とかが接触しようとしても、完全に無視されている状態のようだ。
帝国に調査に行ったフォルスさんからも未だに報告がないらしいので、さすがに見過ごせない状況となってきた。
ただ、あの帝国相手だけに、こっちも安易に強攻策に出ることはできない。
それともう1つ気になることが。
フィーリアが以前行った『神託の儀』においての預言では、『人ならぬ国』にて魔が現れるとのことだった。
これは恐らく魔人国を指しているのではないかと推測しているんだけど、こちらも接触するのが非常に難しい国だ。
ある意味、帝国以上にデリケートな対応が必要となるだろう。
ヴァクラースを倒して見通しが明るくなったと思ってたのに、にわかに前途多難な様相になって来ちゃって、少し気落ちしている。
とりあえず、何かしらの兆候を見つけたら、すぐに調査しようとは思ってる。
◇◇◇
「ユーリ様、ちょっとお力をお借りしたいのですが……」
フィーリアから魔導通信機で連絡が入ったので、急いでその場に駆け付けてみると、部屋には大柄でやたら脂ぎった肌をした、頭の薄い50歳くらいの男が椅子に腰掛けていた。
男の後ろには、護衛らしき屈強な男が2人付き添っている。
その脂ぎった男は、僕が部屋に入るなり立ち上がって、仰々しく挨拶をしてきた。
「これはこれは、お若い王様と聞いてはおりましたが、ここまでお若い方でしたとは……。この度はお忙しいところ申しわけございません、お初にお目にかかります、行商を営んでいるスクラヴォスと申します。陛下には改めてご挨拶に伺うつもりだったのですが、このような場でお会いすることに……」
「あ、挨拶はその辺で。早速本題に入りましょうか」
やたらペコペコと腰を低くして挨拶してきたけど、この男がとんでもなく邪悪な意志を持ってることは解析で分かっている。
悪意を見通せるフィーリアも当然気付いているわけで、これは自分の手には余ると思って僕を呼んだのだろう。
ざっと話を聞いたところでは、フィーリアが移住者に対して面接を行っていると、入国ゲートから連絡が入り、大型馬車の荷台から複数の人間が発見されたとのこと。
それは10人の女性で、その人たちはいま別室に待機させているとか。
恐らく、奴隷の密売をしようとしているのは分かった。
この状況なら、これは誰でもピンとくる。だからすぐに僕のところまで通達が来たんだろうけど。
問題は、奴隷商売については国際的に禁止されていることだ。
基本的には表立って売り買いすることはできない。ただし、その拘束力は国際条約に批准している国に限る。
実は僕の国テンプルムは、まだ国際条約に批准していない項目がいくつかある。この奴隷売買禁止についても、僕の国は批准前だ。
なので、現状の法律では、僕の国ではただ奴隷を連れているだけでは逮捕ができない。
これも短期間で建国してしまった弊害ではあるが、奴隷商人はそこを狙ってきたんだろう。
ちなみに、世界各国が奴隷売買禁止となっているけど、グランディス帝国はこの条約に批准してない。
だから、大っぴらにというわけではないが、帝国では奴隷売買が日常的に行われている。
このテンプルムを、帝国に次ぐ第2の奴隷市場としたいんだろうな。世界で禁止されているとはいえ、裏取引は頻繁に行われているようだし。
ここは周りに国も多いし、もってこいの好条件だ。
「ユーリ国王陛下はとても賢いお方だと伺っておりますので、すでにお気づきになっていると思いますが、ワタシはここで下層階級――つまり、奴隷の売買を行いたいのです。できればその許可をいただければ幸いなのですが……」
「お断りします。奴隷たちを入国させるだけならまだしも、公序良俗に反する行為をした場合、即逮捕しますよ。今すぐお帰りになることをお勧めいたしますが?」
連れてきた奴隷たちを保護してあげたいところだけど、国王とはいえ、現状の法律にないことをやるのはあまり良くない。
ただ奴隷を連れていただけでは、一緒に旅をしていると言われたら罪に問うことができないし。
もちろん、王の権限というのを行使もできるけど、まだ建国して間もないし、王が独断で裁く国と思われるのはマイナスだ。
「そんなことを仰らずに、是非お願いいたしますよ。ユーリ陛下には忠誠をお誓いいたしますので。けっして陛下にはご迷惑をお掛けいたしません。ですから、なにとぞ奴隷売買の許可を……」
「くどいですね。不敬罪で逮捕されたいのですか?」
「ユーリ陛下とは長いお付き合いをしたいのです。ですので、奴隷売買禁止条約にも批准していただきたくないですな。この商売がいかに儲かるかを知っていただければ、陛下のお気持ちも変わるはず」
こいつ……ぶっとばしたい! 何か逮捕できる罪ってないかな?
奴隷たちを助けてあげたいし……。
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