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第7章 新国テンプルム
第327話 騙し合い
狡猾なこの男――ヘドロノス相手では、簡単にはとても尻尾を掴めそうもないので、僕はある作戦を実行することにした。
「ヘドロノスさんはオークションで、ほかにも高価な品々を落札されたと思いますが、それを見せていただくことはできますか?」
「落札品を? なぜです?」
「ひょっとしたら、『蒼魂鋼の剣』以外にもニセ物があるかもしれないからです。その場合、すり替えた犯人は我が国の人間ということになります。それを是非確認しておきたいのです」
「……なるほど、一理ありますな。では、私の潔白を証明するためにも、喜んで協力させていただきましょう」
ヘドロノスがアイテムボックスを開いて、落札品をテーブルの上に並べる。
「コレで全部です。では鑑定士を呼んでお調べください」
「大丈夫です、僕が鑑定できますので」
「なんと、国王陛下が?」
僕は『真理の天眼』で解析をする。……全て本物だ。
予想していた通り、多分まだコピーしてないと思ったよ。
下手にニセ物を持ち歩きたくないだろうし、万が一同じ品が2つあるところを見られでもしたら大変だ。
それに、仮にコピーを作っていたとしても、ここでニセ物を出したらますます騒ぎが大きくなる。
当然、ニセ物を掴まされたという立場――被害者であるヘドロノスの出国も遅れることになるだろう。
ヤツとしては一刻も早くここを離れたいだろうし、怪しいのは『蒼魂鋼の剣』だけにしておきたいはずだ。
なので、コピーがあったとしても、きっと本物の品物を出すと思った。
想定通りの展開になったところで、僕はあるスキルを使ってヘドロノスを罠に嵌める。
「鑑定が終わりました。全て本物です。ということは、オークションの関係者には犯人はいないのでしょう。『蒼魂鋼の剣』は、別のところですり替えられたようです」
「そうですか。お役に立てたようで何よりです」
「こちらこそ、余計な手間を取らせてしまったことと、お疑いしてしまったことを深くお詫びいたします」
「いえいえ、気にしておりませんよ。では、私は出国させてもらって良いでしょうか?」
「もちろんです。魔導車でフリーデンまでお送りしますよ。ネーナ、ヘドロノス氏を乗り場までご案内してさしあげて」
ネーナがヘドロノスを連れて部屋を出ていく。
戸が閉まったのを確認したあと、どこか落ち着かない様子だったメジェールが口を開いた。
「ちょっ……ユーリ、いま時間を止めたわね!?」
「気付いちゃった?」
「そりゃ気付くわよ。だって、あの男が出した品物が、一瞬で全部ニセ物に変わってたんだから」
そう、実はいま時間を止めて、高価な品々を全部ニセ物にすり替えたのだ。
「それより驚いたのは、なんであんな酷いニセ物を、あのヘドロノスって男は気付かずに持っていっちゃったの?」
メジェールが驚くのももっともだ。
僕が作ったニセ物は、とても高価な品々には見えない2級品だったからだ。
ニセ物は、『複製作成』で質を落として作った。つまり、高価な素材でできていた物が、似たような安物素材に変わっている。
ヘドロノスの『完全贋作』と違って、僕の能力では、質を落とすとまるで酷い出来のモノになってしまう。
ニセ物を作る時間もあまりなかったしね。
なのに、そのニセ物に気付かなかったのは、『幻影真術』をヘドロノスに掛けたからだ。
『幻影真術』には、見る人全員に掛ける術と、1人だけに掛ける術がある。
今回は、この1人だけに効果がある術をヘドロノスに使った。なので、ヘドロノスのみに、あのニセ物が全部本物に見えている。
もちろん手触りなども、『幻影真術』の強烈な錯覚で完全に誤認させている。
この1人に固定して幻術を掛ける術は、対象を絞る分、視覚や触覚などに強く長く錯覚を残し続けることができる。
この作戦は、この展開を想定したときには考えていたので、実は経験値5億6000万使って、レベル3だった『幻影真術』をレベル6に上げていた。
かなり強化したので、この幻術は1週間くらいはヘドロノスに効いたままだろう。
「なるほどねえ……でも、アレ全部ニセ物にすり替えても、『蒼魂鋼の剣』には足りないんじゃない?」
「まあね、でもヘドロノスのスキルは全強奪したから、もう二度とあんなあくどい商売はできないよ」
「あんなヤツ、スキルどころか全財産奪ってやればよかったのに」
「いや、ひょっとしたら彼なりに頑張ったところもあるかもしれないし、今回はとりあえずこんなもんでいいでしょ。本当は『蒼魂鋼の剣』を取り返したかったけど、この場じゃとても無理そうだったからなあ……」
「もう、ユーリってばお人好しなんだから」
「そうでもないよ。優秀なレアスキルを失ったんだから、彼はこのあと結構大変だと思うよ。真面目に商売すれば大丈夫だろうけど、今まで美味い汁を吸ってたから、何かやらかすんじゃないかなあ」
「そんなものかしらねえ……」
あとはヘドロノスが、オークションでニセ物を掴まされたと騒ぎ立てる可能性もあるけど、参加した人は出品物があんなに酷い出来じゃなかったことを知ってるから、ただの難癖と思われるだけだろう。
そもそもあんなニセ物にずっと気付かないこと自体がおかしいし、そして僕がすり替えた証拠ももちろん無い。
まあ金額的には『蒼魂鋼の剣』とは釣り合わないけど、与えたダメージはかなり大きいと思うし、充分ゾディーさんの仇は取ったはず。
自分のスキルが無いことに気付いたら、相当絶望するだろうし。
その顔が見られないのはちょっと残念だけどね。
***********************************
是非是非、書籍版『無限のスキルゲッター』もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
「ヘドロノスさんはオークションで、ほかにも高価な品々を落札されたと思いますが、それを見せていただくことはできますか?」
「落札品を? なぜです?」
「ひょっとしたら、『蒼魂鋼の剣』以外にもニセ物があるかもしれないからです。その場合、すり替えた犯人は我が国の人間ということになります。それを是非確認しておきたいのです」
「……なるほど、一理ありますな。では、私の潔白を証明するためにも、喜んで協力させていただきましょう」
ヘドロノスがアイテムボックスを開いて、落札品をテーブルの上に並べる。
「コレで全部です。では鑑定士を呼んでお調べください」
「大丈夫です、僕が鑑定できますので」
「なんと、国王陛下が?」
僕は『真理の天眼』で解析をする。……全て本物だ。
予想していた通り、多分まだコピーしてないと思ったよ。
下手にニセ物を持ち歩きたくないだろうし、万が一同じ品が2つあるところを見られでもしたら大変だ。
それに、仮にコピーを作っていたとしても、ここでニセ物を出したらますます騒ぎが大きくなる。
当然、ニセ物を掴まされたという立場――被害者であるヘドロノスの出国も遅れることになるだろう。
ヤツとしては一刻も早くここを離れたいだろうし、怪しいのは『蒼魂鋼の剣』だけにしておきたいはずだ。
なので、コピーがあったとしても、きっと本物の品物を出すと思った。
想定通りの展開になったところで、僕はあるスキルを使ってヘドロノスを罠に嵌める。
「鑑定が終わりました。全て本物です。ということは、オークションの関係者には犯人はいないのでしょう。『蒼魂鋼の剣』は、別のところですり替えられたようです」
「そうですか。お役に立てたようで何よりです」
「こちらこそ、余計な手間を取らせてしまったことと、お疑いしてしまったことを深くお詫びいたします」
「いえいえ、気にしておりませんよ。では、私は出国させてもらって良いでしょうか?」
「もちろんです。魔導車でフリーデンまでお送りしますよ。ネーナ、ヘドロノス氏を乗り場までご案内してさしあげて」
ネーナがヘドロノスを連れて部屋を出ていく。
戸が閉まったのを確認したあと、どこか落ち着かない様子だったメジェールが口を開いた。
「ちょっ……ユーリ、いま時間を止めたわね!?」
「気付いちゃった?」
「そりゃ気付くわよ。だって、あの男が出した品物が、一瞬で全部ニセ物に変わってたんだから」
そう、実はいま時間を止めて、高価な品々を全部ニセ物にすり替えたのだ。
「それより驚いたのは、なんであんな酷いニセ物を、あのヘドロノスって男は気付かずに持っていっちゃったの?」
メジェールが驚くのももっともだ。
僕が作ったニセ物は、とても高価な品々には見えない2級品だったからだ。
ニセ物は、『複製作成』で質を落として作った。つまり、高価な素材でできていた物が、似たような安物素材に変わっている。
ヘドロノスの『完全贋作』と違って、僕の能力では、質を落とすとまるで酷い出来のモノになってしまう。
ニセ物を作る時間もあまりなかったしね。
なのに、そのニセ物に気付かなかったのは、『幻影真術』をヘドロノスに掛けたからだ。
『幻影真術』には、見る人全員に掛ける術と、1人だけに掛ける術がある。
今回は、この1人だけに効果がある術をヘドロノスに使った。なので、ヘドロノスのみに、あのニセ物が全部本物に見えている。
もちろん手触りなども、『幻影真術』の強烈な錯覚で完全に誤認させている。
この1人に固定して幻術を掛ける術は、対象を絞る分、視覚や触覚などに強く長く錯覚を残し続けることができる。
この作戦は、この展開を想定したときには考えていたので、実は経験値5億6000万使って、レベル3だった『幻影真術』をレベル6に上げていた。
かなり強化したので、この幻術は1週間くらいはヘドロノスに効いたままだろう。
「なるほどねえ……でも、アレ全部ニセ物にすり替えても、『蒼魂鋼の剣』には足りないんじゃない?」
「まあね、でもヘドロノスのスキルは全強奪したから、もう二度とあんなあくどい商売はできないよ」
「あんなヤツ、スキルどころか全財産奪ってやればよかったのに」
「いや、ひょっとしたら彼なりに頑張ったところもあるかもしれないし、今回はとりあえずこんなもんでいいでしょ。本当は『蒼魂鋼の剣』を取り返したかったけど、この場じゃとても無理そうだったからなあ……」
「もう、ユーリってばお人好しなんだから」
「そうでもないよ。優秀なレアスキルを失ったんだから、彼はこのあと結構大変だと思うよ。真面目に商売すれば大丈夫だろうけど、今まで美味い汁を吸ってたから、何かやらかすんじゃないかなあ」
「そんなものかしらねえ……」
あとはヘドロノスが、オークションでニセ物を掴まされたと騒ぎ立てる可能性もあるけど、参加した人は出品物があんなに酷い出来じゃなかったことを知ってるから、ただの難癖と思われるだけだろう。
そもそもあんなニセ物にずっと気付かないこと自体がおかしいし、そして僕がすり替えた証拠ももちろん無い。
まあ金額的には『蒼魂鋼の剣』とは釣り合わないけど、与えたダメージはかなり大きいと思うし、充分ゾディーさんの仇は取ったはず。
自分のスキルが無いことに気付いたら、相当絶望するだろうし。
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※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中