不夜島の少年 小話集

四葉 翠花

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嘘~ミゼアスとヴァレン~

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「ヴァレン、何か嘘をついてみて?」

 唐突なミゼアスの言葉に、ヴァレンはきょとんとした顔をする。
 見習いとして預かってから約一年が過ぎ、ヴァレンは十歳になっていたが、まだまだ顔つきも仕草も幼い。
 聞き返すようなこともせず、しばしヴァレンは無言で考え込んでいたが、ややあってぱっと顔を輝かせた。

「俺、真面目になります!」

 片手をびしっと天に向けて突き出し、ヴァレンは宣言する。
 ミゼアスは生温かい笑みが浮かび上がってくるのを感じ、わずかに目を細めた。

「うん、あからさまに嘘だってわかるね」

 微笑みながら呟けば、ヴァレンもにこにこと笑う。迷いのない、明るいお日様のような笑顔だ。

「……っていうか、納得してしまったけれど、それって真面目になる気はないってことだよね。ねえ、それってどういうことかな? ねえ、ヴァレン?」

 ミゼアスは思わず両手の拳でヴァレンのこめかみを挟み、ぐりぐりとえぐる。

「やー! 痛い、痛いです、ミゼアス兄さん!」
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