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04.広場にて
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アデルジェスは、石畳で舗装された大通を歩いていく。
巨大な娼館だというからいかがわしい荒んだところなのかと思っていたが、普通の街並みだった。むしろ普通の街より立派な建物が多く、清潔感もあるように思える。
大通沿いには店が並び、品物の口上を述べる声も聞こえてきて活気がある。
鮮やかな花が飾られた店から、花束を抱えた若い男性が出てくるのが見えた。
その近くには喫茶店らしき店があり、店前に設けられた席で若い女性が二人談笑している。
他にも繊細なレースの店、色とりどりの菓子が並べられた店など様々な店があり、店を見て回るだけでも楽しめそうだ。
行き交う人々の中には、おそらく娼婦や男娼──ここ風に言えば赤花と白花であろう姿もあった。
漠然と建物の中に閉じ込められているような印象を持っていたが、普通に出歩いているようだ。皆、顔色も良く元気そうだった。
ふらふらと歩いていると、アデルジェスはやがてすり鉢状になった広場に出た。
窪んだ中央から緩やかな傾斜をつけて扇状に広がる広場には露店が並び、人々が思い思いの時を過ごしている。そのまま腰を下ろしている人も多く、中には食べ物を持っている姿もあった。
アデルジェスは露店をのぞき、棒状の揚げ菓子を買ってみた。蜂蜜がまぶされており、甘い香りが漂う。
周囲の人にならって、適当な場所を見つけて腰を下ろしてみる。緩やかな傾斜は座るのにちょうど適していて、足を投げ出して座ると身体から緊張が抜けていくようだった。
「……ふう」
この島はどうも自分の想像していた姿とは違うようだと、アデルジェスはため息をつく。
幼馴染の子は貧しさのために売られていった。この島で身を売る人々だって売られてきた者が多いだろう。
アデルジェスが思い描いていた姿はこうだ。
暗い建物の中に閉じ込められ、休む間もなく客を取らされて憔悴しきった娼婦や男娼たち。
表情は暗く、やつれた身体に鞭を打って借金のために身を売る。しかしその借金は減ることがなく、利息に継ぐ利息で増えていく一方。絶望に彩られた日々しかない。
ところが、実際はそうでもないらしい。
周囲を見回せば、それらしきあでやかな男女が普通に歩いている。客らしき相手と一緒に歩いている者もいれば、一人で歩いている者もいた。暗い表情をしている者はいない。
どれほど悲惨なところなのかと来る前までは気が重かったが、少なくともこの周辺は裕福で陽気な明るい街に見えた。
考えてみれば、この島は庶民には手が届かない高級娼館なのだ。普通の娼館とは違うのかもしれない。
幼馴染のあの子も、せめてこういう場所で過ごせていれば……とアデルジェスは思う。
あの子は自分よりも一つか二つ年上だった。とすれば、今は二十か二十一くらいか。見事な金髪と春の芽吹きを思わせるような緑色の瞳の美少女だった。成長したら、たいそうな美女になっているだろう。
記憶の奥底に沈んだ微かな面影を思い起こし、アデルジェスは想像してみる。
そして何気なく顔を上げてみると、いた。
まるで想像から飛び出てきたかのような金髪に緑色の瞳の美女が、アデルジェスの目の前を歩いていた。
巨大な娼館だというからいかがわしい荒んだところなのかと思っていたが、普通の街並みだった。むしろ普通の街より立派な建物が多く、清潔感もあるように思える。
大通沿いには店が並び、品物の口上を述べる声も聞こえてきて活気がある。
鮮やかな花が飾られた店から、花束を抱えた若い男性が出てくるのが見えた。
その近くには喫茶店らしき店があり、店前に設けられた席で若い女性が二人談笑している。
他にも繊細なレースの店、色とりどりの菓子が並べられた店など様々な店があり、店を見て回るだけでも楽しめそうだ。
行き交う人々の中には、おそらく娼婦や男娼──ここ風に言えば赤花と白花であろう姿もあった。
漠然と建物の中に閉じ込められているような印象を持っていたが、普通に出歩いているようだ。皆、顔色も良く元気そうだった。
ふらふらと歩いていると、アデルジェスはやがてすり鉢状になった広場に出た。
窪んだ中央から緩やかな傾斜をつけて扇状に広がる広場には露店が並び、人々が思い思いの時を過ごしている。そのまま腰を下ろしている人も多く、中には食べ物を持っている姿もあった。
アデルジェスは露店をのぞき、棒状の揚げ菓子を買ってみた。蜂蜜がまぶされており、甘い香りが漂う。
周囲の人にならって、適当な場所を見つけて腰を下ろしてみる。緩やかな傾斜は座るのにちょうど適していて、足を投げ出して座ると身体から緊張が抜けていくようだった。
「……ふう」
この島はどうも自分の想像していた姿とは違うようだと、アデルジェスはため息をつく。
幼馴染の子は貧しさのために売られていった。この島で身を売る人々だって売られてきた者が多いだろう。
アデルジェスが思い描いていた姿はこうだ。
暗い建物の中に閉じ込められ、休む間もなく客を取らされて憔悴しきった娼婦や男娼たち。
表情は暗く、やつれた身体に鞭を打って借金のために身を売る。しかしその借金は減ることがなく、利息に継ぐ利息で増えていく一方。絶望に彩られた日々しかない。
ところが、実際はそうでもないらしい。
周囲を見回せば、それらしきあでやかな男女が普通に歩いている。客らしき相手と一緒に歩いている者もいれば、一人で歩いている者もいた。暗い表情をしている者はいない。
どれほど悲惨なところなのかと来る前までは気が重かったが、少なくともこの周辺は裕福で陽気な明るい街に見えた。
考えてみれば、この島は庶民には手が届かない高級娼館なのだ。普通の娼館とは違うのかもしれない。
幼馴染のあの子も、せめてこういう場所で過ごせていれば……とアデルジェスは思う。
あの子は自分よりも一つか二つ年上だった。とすれば、今は二十か二十一くらいか。見事な金髪と春の芽吹きを思わせるような緑色の瞳の美少女だった。成長したら、たいそうな美女になっているだろう。
記憶の奥底に沈んだ微かな面影を思い起こし、アデルジェスは想像してみる。
そして何気なく顔を上げてみると、いた。
まるで想像から飛び出てきたかのような金髪に緑色の瞳の美女が、アデルジェスの目の前を歩いていた。
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