不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花

文字の大きさ
24 / 138

24.裏の顔

しおりを挟む
「ごめん……どうも自分が学校に通っていた頃の感覚で……」

「……まあ、こことよそじゃあ感覚が違うのかもしれないけどね。ここの学校は原則十二歳で卒業だしね。よそだと年齢制限がなかったりもするんだろう?」

「俺の行っていたところでは大人も通っていたりしたよ。卒業年齢も決まっていなかったと思う。何で十二歳って決まっているの?」

 アデルジェスの住んでいた町では、神殿が学校だった。読み書き、算術、礼儀作法といった基本的なことを教わったものだ。
 小さな町や村では学校がないところもある。そういったところから引っ越してきた大人たちの中には、学校に通う者もいた。
 よほど優秀なら上位の学校への紹介もあったが、アデルジェスには関係がなかった。一通り身に着いたら卒業という曖昧なもので、年齢制限などは大抵の町で存在しない。

「そりゃあ、客を取り始めるのが十二歳くらいからだからさ」

 こともなげに言われた言葉にアデルジェスは愕然とする。十二歳といえばまだ子供だろうに、それくらいから客を取るのか。

「それまでに最低でも基礎課程は終えておかないといけない。より上級の課程を終えているほど有利だけれどね。昇格の基準になるから。上級課程は卒業後でも希望すれば学べるけれど、費用は自己負担になってしまうんだ。まあ実際は卒業後でも上級課程のために、結構通うことになるけれど」

「それって、もし基礎課程とやらを終えられなかったら……?」

 もしアデルジェスだったら、終えられたか疑問だ。

「落第。特別な理由でもなければ、終わり。十二歳になる前でも能力不足と判断されたり著しくやる気がないと見なされたりすると、それも落第。落第すると放出または裏の店に回される。表での格付けは一花から五花まであるけれど、これは卒業者。落第者はその格付けには入らないで、『枯葉』と呼ばれる」

 淡々としたミゼアスの説明に、思わず背筋がぞっとした。
 そういえば初日に案内所で裏の店に関して恐ろしいことを聞いたような気がする。

「その裏の店っていうのは……」

 おそるおそる尋ねると、ミゼアスはいったん口を開きかけたものの、思い直したように首を振った。

「……もう上がるよ。このままだとのぼせちゃいそうだ」

 質問には答えず、ミゼアスはそれだけを言って湯から上がる。

「きみも適当に上がって。服を着たら外に何か食べに行こう」

 ミゼアスはこう言い残して、浴室から出て行った。
 残されたアデルジェスは湯に浸かったまま、しばし物思いに沈んだ。
 やはりここはただ綺麗なだけの場所ではないようだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~

槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。 公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。 そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。 アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。 その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。 そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。 義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。 そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。 完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー
BL
若干24歳の若き皇帝が統治するベリニア帝国。『金獅子の双腕』の称号で騎士団長兼、宰相を務める皇帝の側近、レシオン・ド・ミゼル(レジー/ミゼル卿)が突如として国外追放を言い渡される。 帝国中に慕われていた金獅子の双腕に下された理不尽な断罪に、国民は様々な憶測を立てる。ーー金獅子の双腕の叔父に婚約破棄された皇紀リベリオが虎視眈々と復讐の機会を狙っていたのではないか? 国民の憶測に無言で帝国を去るレシオン・ド・ミゼル。船で知り合った少年ミオに懐かれ、なんとか不毛の大地で生きていくレジーだったが……彼には誰にも知られたくない秘密があった。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

処理中です...