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・・・『始動』・・・

・・面談・会談・・4・・

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「・・モリーさん・・貴女の表情と所作を観れば、これが貴女の意思・意図でない事は判ります・・おそらく・・貴女の後ろに居る、その先生ですね・・目的は・・私達の端末に入っている、つまらないデータなんかじゃない・・そんなものは盗ろうと思えば、何時でも、幾らでも盗れるでしょうからね・・私の生の声と、この場での会話を生で聴きたかったから、でしょう・・モリーさん・・私は貴女を信頼しているんですよ・・今も、これからもね・・ですが、その先生に言って下さい・・またこのような事があったら、関係は即時に解消します・・そして今後面談する場合に私は、保安部長と保安部要員を数名伴います・・そのペンダントは、先生からのプレゼントですね・・?・・」

・・言い終えて、自分の携帯端末を左手で持つ・・と、非表示での通話が繋がる・・端末をテーブルに置いてスピーカーに切り替える・・。

「・・初めまして、アドル・エルクです・・」

「・・初めまして、サイン・バードです・・」

・・声は加工されているが、アクセントと声調では男性だ・・年の頃は判らない・・。

「・・ほう・・如何にもな偽名ですが・・?・・」

「・・申し訳ありません・・私は名前を幾つも持っておりますので・・」

「・・なるほど・・分かりました・・それで貴方方は・・『ディファイアント』が上位に食い込むのを・・情報の提供と言う手法で手伝って下さると・・?・・」

「・・その通りです・・」

「・・見返りは・・?・・」

「・・ある種の達成感・・」

「・・お金持ちの道楽ですか・・?・・」

「・・そのように捉えて頂いても構いません・・当方は、ある種の使命・任務・ライフワークのようにも、考えています・・」

「・・なるほど・・私達が面談するような可能性は・・?・・」

「・・無くはないでしょう・・」

「・・しかし、私から貴方に連絡できる術はない・・?・・」

「・・申し訳ありませんが・・」

「・・分かりました・・ですが今回の事では、私から貴方にペナルティを一つ課したいのですが・・?・・」

「・・宜しいでしょう・・何なりとお申し付けください・・?・・」

「・・では、『ディファイアント』が早期に沈んだ場合の、再登板資金を用立ててください・・?・・」

「・・分かりました・・その場合には、用立てましょう・・」

「・(笑)・やはり、すごいお金持ちのようですね・・冗談です・・貴方方からの情報があるなら、『ディファイアント』が早期に撃沈されるような事は無いでしょう・・ですがこれは貸しの一つにさせて貰います・・宜しいですね・・?・・」

「・・勿論、それで結構です・・」

「・・それと、『ロイヤル・ロード・クライトン』も含めて、他の19艦とは、艦長・乗員・関係者を問わずに、一切関わりを持とうとしない事を、ここで約束してください・・これが破られた場合にも、関係は解消します・・」

「・・分かりました・・お約束します・・」

「・・結構・・それと・・ペンダントは辞めた方が好いですね・・気付かれます・・どうしても仕込みたいなら、ベルトのバックルかカフスボタンに仕込んだ方が好いでしょう・・」

「・・ご忠告とご指導には感謝します・・」

「・・ミルクティーはお好きですか・?・バードさん・・?・・」

「・・いえ、あまり好みではありません・・」

「・・分かりました・・それで・・バードさんから私に、何か伝えたい事はありますか・・?・・」

「・・そうですね・・あらゆる事物・・人の中には闇が内包されている・・この事はお考えの一つとして、胸に置いて頂けるとありがたいです・・」

「・・自己本位の精神・・思考・姿勢・態度・言動は、誰にでも有る・・とは承知しています・・」

「・・結構です・・安心しました・・」

「・・今後、情報の提供は、どの様な形で行われますか・・?・・」

「・・それは・・モリーさんとアドルさんとで以前に決めて頂いた手法で、継続して頂きたいと思います・・」

「・・分かりました・・現時点で、教えて頂ける情報はありますか・・?・・」

「・・そうですね・・現時点で、アドルさんへの伝達が必要と思われる情報は・・特にありません・・」

「・・分かりました・・最後に一つ・・ミラーリングで盗ったデータは、今直ぐに廃棄して下さい・・そして貴方も含めて、誰にも利用できないように廃棄処理処分して下さい・・今後、盗られたデータが利用されたと判断された場合にも、そちらとの関係は解消されますので・・・宜しいですね・・?・・」

「・・分かりました・・言われた通りに肝に銘じまして・・即時に完全な廃棄処理処分とします・・お心を騒がせてしまって申し訳ありません・・」

「・・いいえ・・やって頂けるのなら、それで結構ですから・・それでは、今回のお話はこれで終わりと言う事で、宜しいですかね・・?・・」

「・・はい・・ありがとうございました、アドル・エルクさん・・お話ができて善かったです・・今後とも宜しくお願い致します・・」

「・・こちらこそ・・お話しできて善かったです・・サイン・バードさん・・これからも宜しくお願いします・・」

・・通話は向こうから切れた・・改めてモリー・イーノス女史の顔を見遣る・・申し訳なさそうな表情だ・・。

「・・モリーさん・・ペンダントのスイッチを切って下さい・・サイン・バードさんとの会談は終わりましたよ・・改めて伺いますが、他にはありませんよね・・?・・」

「・・あ、ああっ・・すみません・・ありません・・ってか、無いと思います・・じゃなくて判りません・・あ、ベルトのバックルとかカフスボタンですか・・・?・・・」

・・そう言いながらお腹の辺りとか、袖口の辺りを触って調べ始める・・。

「・・ハッハ・(笑)・大丈夫ですよ・・モリーさん・(笑)・・バードさんも思い付いてなかったじゃないですか・・もう大丈夫ですよ、モリーさん・・ちょっと怖い想いをさせちゃいましたかね・・?・・改めてモリーさん自身から、私に伝えたい事はありますか・・?・・」

「・・すみませんでした、アドルさん・・知らなかった事とは言え、お詫び申し上げます・・そして今後は、絶対に無いようにしますので、お許し下さい・・今日はちょっと・・アドルさんの怖い処を観てしまいましたけれども・・バードさんと同じで、アドルさんは凄く魅力的ですね・・ごめんなさい・・変な事を言ってしまって・・私からも直ぐに伝えるべきと、考えていた事はありません・・今後も何かが判明しましたら、特別格納庫の中に書き込みますので、ご覧ください・・今日はお逢い出来て、お話も出来て好かったです・・これからも宜しくお願いします・・」

「・・はい・・私も貴女とお話しできて善かったですよ・・今後も宜しくお願いしますね・・では、ちょっと失礼して、私はお茶を淹れますから、ウチのスタッフとも話していって下さい・・」

・・そう言って立ち上がるとキッチンに入り、自分の為のコーヒーをもう一度淹れると、少しずつ飲みながらミルクティー・レモンティー・ホットミルクチョコレートを3等分に淹れ始める・・。

「・・こちらは、リサ・ミルズさんのお宅なんですね・・こんなに広いお部屋は観た事が無いです・・さすがは・・」

「・・トーマス・クライトンの娘ですからね・・モリーさん・・あまりアドルさんに馴れ馴れしくしないで下さいね・・別に喧嘩を売ろうって訳じゃないですけれども・・私達から貴女への電圧が上がりますよ・・」

「・・リサさん、もうMNARのスイッチ、入れ直して良いわよ・・」

・・と、シエナが言う・・。

「・・分かりました・・」

・・と、そう応えてこの居宅と、この階のMNARのスイッチを入れ直しに行く・・。

「・・モリーさん、初めまして・・保安部長を務めるフィオナ・コアーです・・先程アドル艦長も言いましたが、今後貴女方と接触する場合には、私と保安部要員の数名がアドル艦長に随行します・・宜しいですね・・?・・」

「・・分かりました・・宜しくお願いします・・」

「・・先程からモリーさんの所作を観ていて・・護身的格闘術を学んでいらっしゃると観じたのですが・・どうでしょう・・?・・」

「・・仰られる通り・・複数種類の拳法を学んでいます・・」

「・・分かりました・・」

「・・初めまして、モリーさん・・機関部長を務めます、リーア・ミスタンテです・・宜しければそのペンダントを見せて頂いても・・?・・」

「・・はい・・どうぞ・・」

・・そう応えてペンダントをリーアに手渡す・・リーアは器用に裏側のシールパックを開けて、中の基板を観て調べる・・1分程観ていたが、シールパックを閉め直してモリーに手渡した・・。

「・・ありがとう・・モリーさん・・これをバードさんが作ったのだとしたら、彼は私以上のエンジニアですね・・」

「・・どう致しまして・・そうなんですか・・?・・」   「・・ええ・・」

「・・モリーさん、よもやと思って伺いますが、バードさんにはやろうと思えばこのゲーム大会に、参加できるだけの資金力が余裕でおありですね・・?・・」

・・と、ハル・ハートリーが訊く・・。

「・・はい・・ありますね・・それが何か・・?・・」

「・・参加されていると思いますか・・?・・」

「・・それは・・私達にそんな話はしませんでしたが・・判りません・・」

「・・初めまして、モリー・イーノスさん・・私はエドナ・ラティス・・砲術長に任命されています・・宜しくね・・ねえ、バードさんを除いて貴女のチームって何人・・?・・」

「・・それは・・・」

「・・8人じゃないかなあ・・?・・」

・・と、キッチンでお茶を仕上げながら応えてみる・・。

「・・!・どうして判るんですか・?!・・アドルさん・・!・怖いですよ・・!・」

「・・ああ、ごめんごめん・・何となく思い付いて、当てずっぽうで言っただけだからさ・・気にしないでね・・」

「・・気にしますよ・・!・・」

「・・う・・ん・・そうだね・・その質問・・さっきの通話の中でしてみれば良かったな・・明確な返答が無かったとしても・・反応を観れば、参加しているかしていないかぐらいは判っただろうからね・・」

「・・ねえ、モリーさん、初めまして・・私はパティ・シャノン・・『ディファイアント』では観測室長を仰せ付かっているの・・私からはこれだけ訊くわね・・アドルさんと彼のご家族・・会社での同僚の皆さん・・私達と私達の関係者がこの先の日常生活の中で・・誰かに攻撃されるとか・・何かの事件に巻き込まれるとか・・それらの可能性についてはどう考えているのかな・・?・・」

「・・現時点では、何の兆候も出ていないそうです・・でも、シーズンが進めば進むほどに、その可能性が高くなってくるだろうって・・」

「・・なるほど・・バードさんがそのAIを組み上げたのは・・犯罪を防止する為なんだね・・やっと判りましたよ・・それじゃあ、お茶が入りましたよ・・皆で適当に配ってね・・さあ・・モリーさんに今度は・・ミルクティーの味を観て貰いましょう・・ミルクティーは得意な方でしてね・・さあどうぞ・・」

・・そう言ってモリー・イーノスの前に、ミルクティーのカップを置く・・ちょっと躊躇っていた彼女だったが、取り上げて一口飲むと左手で口を押さえた・・。

「・・美味しい・・こんなに美味しいミルクティーは飲んだ事がありません・・バードさんにも淹れられないと思います・・こんなに美味しいお茶を、皆さん飲まれているんですか・・?・・羨ましいです・・」

「・・そんなに毎日は飲めないよ・・アドルさんに会えた時ぐらいだよね・・あ、アタシはエマ・ラトナー・・宜しくね・・メイン・パイロットだよ・・ねえ・・アドルさんは怖くないよ・・怖がらないであげて・・ただ普通の人より物事の先がよく観えるから・・先廻りしての対処がより早く簡単にできるってだけだから・・」

「・・それって、かなり凄くないですか・・?・・怖がられませんか・・?・・」

「・・怖がるような人も居るって話は聴いたけどね・・アタシ達は怖くないよ・・実はアドルさんより怖い人を一人知っているからね・・『先読みのアドル・エルク』ってのが、会社での異名なんだってさ・・」

「・・そうなんですか・・凄い方なんですね・・ミルクティーだけじゃなく・・どんなお茶でも、美味しく淹れられるみたいですし・・激励壮行会で観ていましたけど・・歌も楽器の演奏も本当にお上手ですしね・・」
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