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エマの暴走
「エ、エマ? どうしてここに……」
「あらお姉様、何を言ってるのですかー? 私達は家族ですもの。当然パーティーにも出席するわ」
ナタリアは、グラミリアン家の誰も招待していなかった。
(どうして……)
「無理矢理入り込んだみたいだな。大丈夫。心配しないで見ててごらん」
クロードに縋るように視線を送ると、小声で囁かれた。声こそ優しかったが、その目には冷たい光が宿っていた。
「これはこれは、ナタリアの妹さんですか」
「クロイ様ぁ。お姉様は褒美がいらないようですし、私の家で管理させていただきますわ!」
エマがクロイに手を差し出した。
ところがクロイはにこにこと笑うだけで、エマにブローチを渡す素振りすらみせない。
「残念ながら、グラミリアン家に渡せる物は何もないよ。貴族の風上にも置けない腐った家にはね」
「え……、それはどういう」
「あれ、聞いていないのかな? 君の家、ナタリアを虐待したことに対する処分の通知が出ているはずだけれど」
何でもないことのようにクロイがそう言うと、周りで耳を澄ませていた貴族達がざわめき始めた。
「虐待? 本当か?」
「王子がおっしゃるなら事実でしょう」
「グラミリアン家はクロード様の婚約者を虐げていたのか?」
「褒美だけ貰いにきたのかしら? なんて卑しいの」
非難の目に晒されたエマは、ぷるぷると震えだした。
「ご、誤解ですわ! 私達はそんなことしてな……」
「既に調査済みだ。ナタリアの養父になったヴィルト男爵からも報告が上がっている。教育も受けさせず、社交場への参加もさせなかったとか」
「どうしてそんなことまで……」
「市民の手本となるべき貴族が、そのような愚劣な行為をしていたとは許しがたい。領地の剥奪と賠償金の命が下ったよ。大人しく帰って確認してみると良いんじゃないかな」
クロイはにこにことした笑顔を崩さず、楽しい話でもするようにエマに語りかけた。
「嘘よ! そんなはずないわ。お姉様、お姉様からも言ってください! この人の話はデタラメだって!」
クロイとは対照的に、どんどんと顔色が悪くなったエマは、ナタリアを縋るように見つめながら叫んだ。
取り乱すエマを見たナタリアは、だんだんと冷静になっていった。
「確かに私は、妹とは異なる暮らしを強いられていました。使用人よりも長く働き、私物はほとんど取り上げられ、どこにも行けない生活をしていました」
ナタリアはエマの方を向かず、周囲を見渡しながら自身の境遇を話した。
ナタリア本人が認めたことで、周囲のざわめきはさらに大きくなった。
「確かにグラミリアン家にもう一人娘がいたなんて知らなかったな」
「パーティーでもお茶会でも見たことないわ」
「本当に閉じ込められていたんだな」
「恐ろしい一家だ」
もはや味方は誰もいないと悟ったエマは、ナタリアを睨みつけた。
「お姉様っ……!」
「もうあなたの姉じゃないわ。それに、あなたを招待した覚えはありません。どうぞお帰りください」
ナタリアが毅然とした態度できっぱりと言い切ると、エマは何も言えなくなり黙り込んだ。
するとナタリアたちの側で静観していたポールがすっと出てきて、エマを外に連れ出していった。
(やっと終わった……)
エマがいなくなった途端、ナタリアは力が抜けてしまった。それに気がついたクロードは、ナタリアの腕をとって自分に寄りかからせた。
「君は勇敢だな。クロイに任せて見ているだけでも良かったのに」
「そうですね。でも言いたいことが言えてスッキリしました」
「それなら良い。少し別室で休むかい?」
「はい、そうします」
クロードはナタリアを連れて歩き始めると、少し考えて振り返った。
「クロイ、後のことはよろしく頼む」
「はいはい、相変わらず人使いが荒いな。……これでも一応王子なんだけど」
クロイはぶつぶつ文句を言いながら、周囲の人達の輪に入っていった。
「あらお姉様、何を言ってるのですかー? 私達は家族ですもの。当然パーティーにも出席するわ」
ナタリアは、グラミリアン家の誰も招待していなかった。
(どうして……)
「無理矢理入り込んだみたいだな。大丈夫。心配しないで見ててごらん」
クロードに縋るように視線を送ると、小声で囁かれた。声こそ優しかったが、その目には冷たい光が宿っていた。
「これはこれは、ナタリアの妹さんですか」
「クロイ様ぁ。お姉様は褒美がいらないようですし、私の家で管理させていただきますわ!」
エマがクロイに手を差し出した。
ところがクロイはにこにこと笑うだけで、エマにブローチを渡す素振りすらみせない。
「残念ながら、グラミリアン家に渡せる物は何もないよ。貴族の風上にも置けない腐った家にはね」
「え……、それはどういう」
「あれ、聞いていないのかな? 君の家、ナタリアを虐待したことに対する処分の通知が出ているはずだけれど」
何でもないことのようにクロイがそう言うと、周りで耳を澄ませていた貴族達がざわめき始めた。
「虐待? 本当か?」
「王子がおっしゃるなら事実でしょう」
「グラミリアン家はクロード様の婚約者を虐げていたのか?」
「褒美だけ貰いにきたのかしら? なんて卑しいの」
非難の目に晒されたエマは、ぷるぷると震えだした。
「ご、誤解ですわ! 私達はそんなことしてな……」
「既に調査済みだ。ナタリアの養父になったヴィルト男爵からも報告が上がっている。教育も受けさせず、社交場への参加もさせなかったとか」
「どうしてそんなことまで……」
「市民の手本となるべき貴族が、そのような愚劣な行為をしていたとは許しがたい。領地の剥奪と賠償金の命が下ったよ。大人しく帰って確認してみると良いんじゃないかな」
クロイはにこにことした笑顔を崩さず、楽しい話でもするようにエマに語りかけた。
「嘘よ! そんなはずないわ。お姉様、お姉様からも言ってください! この人の話はデタラメだって!」
クロイとは対照的に、どんどんと顔色が悪くなったエマは、ナタリアを縋るように見つめながら叫んだ。
取り乱すエマを見たナタリアは、だんだんと冷静になっていった。
「確かに私は、妹とは異なる暮らしを強いられていました。使用人よりも長く働き、私物はほとんど取り上げられ、どこにも行けない生活をしていました」
ナタリアはエマの方を向かず、周囲を見渡しながら自身の境遇を話した。
ナタリア本人が認めたことで、周囲のざわめきはさらに大きくなった。
「確かにグラミリアン家にもう一人娘がいたなんて知らなかったな」
「パーティーでもお茶会でも見たことないわ」
「本当に閉じ込められていたんだな」
「恐ろしい一家だ」
もはや味方は誰もいないと悟ったエマは、ナタリアを睨みつけた。
「お姉様っ……!」
「もうあなたの姉じゃないわ。それに、あなたを招待した覚えはありません。どうぞお帰りください」
ナタリアが毅然とした態度できっぱりと言い切ると、エマは何も言えなくなり黙り込んだ。
するとナタリアたちの側で静観していたポールがすっと出てきて、エマを外に連れ出していった。
(やっと終わった……)
エマがいなくなった途端、ナタリアは力が抜けてしまった。それに気がついたクロードは、ナタリアの腕をとって自分に寄りかからせた。
「君は勇敢だな。クロイに任せて見ているだけでも良かったのに」
「そうですね。でも言いたいことが言えてスッキリしました」
「それなら良い。少し別室で休むかい?」
「はい、そうします」
クロードはナタリアを連れて歩き始めると、少し考えて振り返った。
「クロイ、後のことはよろしく頼む」
「はいはい、相変わらず人使いが荒いな。……これでも一応王子なんだけど」
クロイはぶつぶつ文句を言いながら、周囲の人達の輪に入っていった。
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