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今日は私の誕生日でしたのに……
お祝いをしていただけないのは予想通りでしたが、まさか暴言を吐かれるなんて。

「誰のおかげで素晴らしい生活が出来ていると思っているんだ!お前は金持ちの家に嫁がなければ価値がない。よく覚えておけ!」

お父様から浴びせられた言葉は、私の耳を右から左に通り抜けていきました。
昔でしたら、俯いて泣いていたのですけれど……何度も聞きすぎて、飽きてしまいましたわ。

ですがここで反抗的な態度を取ると、お説教が長引いてしまいますので、俯きながら謝罪の言葉を口にしておきましょう。

「お父様の言う通りです。出過ぎた発言をして申し訳ありませんでした」




事の始まりは、夕食後にお父様が投げてよこした一枚の写真でした。

「ゴルダン公爵のご次男、シュカ様と結婚してもらう。もう話はつけてあるから、明日にでも挨拶に行ってきなさい」

と言われたので、とても信じられませんでした。ゴルダン公爵家は、代々格式ある家柄同士で婚姻を結んでいます。
いくらご次男とはいえ、我が家のような子爵家との結婚を承諾するはずがありません。

いつもの妄言でしょう……話はつけてあると言いましたが、どうせ私に突撃させて無理矢理話を進めようとしているのでしょうね。

そういえば、とある伯爵家のパーティに招待されたから行ってこいと命令され、招待状もなしに突撃させられたこともありましたわ。

あの出来事で得たものもありましたけれど、本当に大変でした……。

どう考えても、今回も嘘だとしか思えません。

「本当に公爵がご了承なさったのですか?子爵家との婚姻を承諾なさるとは思えませんが……」

と伺った途端、お父様は顔を真っ赤にして怒り始めたのでした。

「俺が嘘をついていると思っているのか?!」
「いつからそんな生意気を言うようになったんだ!」

もう暴言の嵐です。こうなると止めようがありません。誰の声も聞こえていないのでしょう。

ちらりと横目にお母様を見ると、さめざめと泣いておられます。

「どうしてお父様の言うことを信じないの?いつからそんな悪い子になってしまったの……」

あぁ、ますます面倒なことになってきました。さっさと退散いたしましょう。

「お父様、お母様、本当に申し訳ありません。私が愚かでした。シュカ様のところへは、近々挨拶に行ってまいりますわ」

そう言って、急いで自室に戻りました。まだお父様は喚き足りないようでしたけれど、知ったことではありません。

とりあえず、今後の作戦を考えなくては……。




シュカ様とは一度お会いしたことがあるのですが、公爵家の次男で、大変優しい方でした。我が家との面倒ごとに巻き込むなんて、申し訳が立ちません。

何とかシュカ様に不名誉な噂が立たないような方法を考えましょう。事情はお話しなくてはならないでしょうが、仕方ありません。

そして私もこの家の面倒ごとから、おさらばしましょう。予定が少々変更になりますが……何とかなるでしょう。




そのために、今日まで準備してきたのですから。
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