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♡あなたの舐めている飴玉を、私にください♡

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 空気が乾燥する季節、のど飴が必需品の奈々美は会社に着いてのど飴を忘れた事に気がついた。

(しまった、昨日小袋に詰め替えて、冷蔵庫の上に置いたままにしてしまったわ)

 それに気が付いたら急にのどが乾燥してきた。不思議なもんだ。

「ゴホッゴホッゴホッ!」

 急に咳き込む奈々美。給湯室へ向かう。

「どうしたんですかー?」

 一年後輩の皆元聡が奈々美に声をかけた。

「ちょっと、のどが乾燥しちゃって、お茶でも飲もうかと」

「ああ~」

 皆元は気の抜けた返事をした。舌を転がしながら。

「あれ?もしかして、飴舐めてる?」

「え?あ、はい」

「ひとつ、くれない?」

「あー、これ最後の一個なんですよね~」

 皆元は舌を出して上に乗った飴玉を見せた。

「あらそう、残念」

 奈々美はティーパックの封を切りながら言った。

「欲しいですか?」

「え?」

「この飴、欲しいですか?」

 皆元が奈々美の目を見据えながら言った。

「だって、飴、ないんでしょ?」

「あるじゃないですか、ここに」

 皆元は奈々美の顔の前で舌を出して見せた。奈々美は顔を赤らめて横に逸らした。

「い、いらないわ」

 皆元は奈々美の両手首を掴み、壁に押しつけた。顔の左右に手がある。

「ちょ、ちょっと、なにを…」

「ほんとに、いらないんですか?」

「い、いらない…わよ…」

「…ほんとに?」

「いら…ない…」

「いるって言って?」

「え?」

「言えよ」

「…いる」

「え?聞こえない」

「いる」

「何が?」

「もう…」

「ちゃんと言えよ」

「あなたの今舐めている飴玉を、私にください」

「よく出来ました」

 皆元はそう言って、奈々美の口の中に舌で飴玉を押し込んだ。

「んんん、んんん~」

 2人の舌が飴玉を介して絡み合う。お湯がピーと沸いた。

 皆元は奈々美の口から舌を引き抜いた。糸を引いている。名残惜しそうだ。

「あげる」

 皆元はそう言って給湯室から出た。

 奈々美は飴玉を舐めながら思った。

「今度は私の飴玉を舐めさせよう」、と。

 
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