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本編1 『幼少期』
第6話 まだ3歳。私の護衛騎士 ※サイラスの挿絵有り
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『サイラス・プレストン』貧乏男爵家の次男。騎士になって家族にラクさせてやるんだ!と、5歳で親元を離れ騎士養成所へ入り、10歳で騎士見習いとなり、シュタイザー家の私兵団に入団し、12歳で3級騎士となった。
現在サイラスは15歳。2級騎士となり日々頑張っている。
若き2級騎士の彼は、ミルクブラウンのウェーブヘアーに、トパーズ色の瞳を持つ美少年。
柔らかい雰囲気と物腰、少し高い声が世のおば様方に人気があり、街中では『サイちゃん』と呼ばれている。
そんなサイラスくんは、幼少期から不憫であった。小柄で華奢な彼は剣の腕は良いのだが、いくら鍛えても筋肉がつかず、女顔なので男から好かれるのだ。
それは成長しても変わらず、「そっちの趣味はない!」といくら断っても男が寄ってくる。
そんなんだから、年頃の女性からはモテない。小さい子や妙齢の女性にはモテるのだが……不憫だ……。
そんな不憫騎士ことサイラスくんだが、違和感のする侯爵邸の裏の林の中を進み、結界の中へと入り込み、目の前に広がる美しい庭園と旧侯爵邸に唖然としていたら、御伽噺に登場する神霊に出会った。
神霊……小兎神族のウルと名乗るそれの話しによれば、本邸にいる『ストロベリー侯爵令嬢』は偽物で、本物は別にいるとのこと。
(なにその衝撃事実!?そんな重大秘密を一騎士に言うなよ!!)と、声に出して叫びたかった。
そして、刀剣神様に加護を与えられ、本物のストロベリー侯爵令嬢の護衛騎士に任命された。
(加護は嬉しい。素直にありがとうございます!でも、護衛騎士に任命って何それ!?誰にどう説明すれば!?)と、声に出して訴えたかった。
そして突然の事にパニックになり、思わず叫んだら、空から天使が降ってきた。……悪態吐きながら……。
サイラス 「……本物の天使初めて見た……え、現世に遊びに来たの?……ウル様、あの子空から落ちたけど大丈夫でしょうか?私が近付いたら穢れで消えませんか?」
天使ではない。空から落ちたわけじゃない。ハンモックから落下しただけだ。穢れで消えるわけがない。
大丈夫だサイラス。君は穢れてない。魂の綺麗な優しい青年だ。
《あっは!ベリーちゃんが天使ぃ?サイラス面白いねぇ!あそこでひっくり返ってるのが本物の『ストロベリー・ディ・シュタイザー侯爵令嬢』だよぉ~!
サイラスくんが護衛する子ね!》
「護衛対象」「侯爵令嬢」と聞いて身体が自然に動き、「お怪我は御座いませんか!?」と、傍に駆け寄りサッと抱き上げた。
サイラス 「うわっ…軽っ…可愛い…え?本当に人間?アレと大違いなんだけど…」
あまりの軽さと可憐さに、サイラスは無意識に呟いてた。
いきなり抱き上げられ呟かれた言葉に、ベリーは目をパチパチさせてから、声を出して笑った。
「きゃははは!声に出てるよ!私はちゃんと人間だよ。初めましてサイラスさん。私は『本物のストロベリー』
本邸にいるのは偽物ね。護衛騎士とか神様が勝手に言ってるだけだから、気にしないでね。
ココは結界に護られてて安全だし、相棒のウルもいるからさ!貴方は侯爵家の騎士でしょ?通常任務に戻って大丈夫よ」
サイラス 「え?いや、申し訳ございません!思った事がついポロッと……。
私は『サイラス・プレストン』男爵家次男で2級騎士です。刀剣神様より賜った『護衛騎士』の任、謹んでお受け致します。
神命は王命より絶対であり、放棄する事は不可能だと思われます。
この件に関しまして、師団長と侯爵様に報告し、明朝より任務に就きたいと思います。」
謹んでお受けしなくても良いのに。神命は絶対とか……刀剣神様、なに勝手なことしてんの!?
侯爵に報告したら、ややこしくなりそうだから辞めてほしい!
せっかく自由に好き勝手してるのに、本邸に戻されて『キャロル』と金髪ガマガエルと一緒に生活とか絶対イヤ!断固拒否する!
「《サイラス命令よ。護衛騎士の件は師団長のみに報告する事。侯爵家には私の存在を秘匿しなさい》……どう?わかったかしら?今日はもう戻って、明日は師団長さんに了承頂いたら来ていいわ。ね?OK?」
初めて人に対して精神魔法使ったけど、気分の良いもんじゃないわね……こんな純朴そうな青年には使いたくなかったわ……はぁ……
サイラス 「侯爵様には秘匿ですか……命令なら私は従いますが、師団長から侯爵様には報告がいくと思われます。
その際は致し方ない事としてお許し頂けたらと思います。」
あら?魔法が弾かれた!え?精度が甘かったのかな?
《(ベリーちゃん。サイラスくんね、物理攻撃無効と精神魔法無効のスキルを持ってるよ。だから洗脳系の魔法が効かないみたい!刀剣神様の加護の影響だねぇ)》
(おおう……マジかぁ。じゃあ、師団長に報告→侯爵様に報告→結果存在がバレるってことか!)
なんて面倒臭い……どうしたもんか……
(あ、じゃあさ、私が師団長に直接頼もうかな。「報告しないでぇ」って。事情話してさ、普通にお願いするの。どうかな?)
《(う~ん。ベリーちゃんの言う普通が本当に普通がわかんないけどぉ。良いんじゃない?あ、ついでに訓練に混ぜて貰えば良いよ!)》
「なるほど」ということで、これからサイラスと一緒に訓練所まで行き、師団長様に直接お願いする事にした。
それを彼に伝えると、
「ヒヒの群れに可憐な天使…危険だ」と、「天使が穢れる…変態共に襲われる…」と、ブツブツ言っていたけど、
「抱っこしてくれてれば良いよ。結界も張るし」と、「お願い♡」と頼んだら、
「ぐっ…はぁ。わかりました」と、渋々、目を片手で覆いながら了承してくれた。
という事で、転生してから3年と2ヶ月。初めて屋敷以外の場所へ行きます!
初めて訪れる場所へのワクワクした気持ちと、少しの不安を抱えて、いざ行かん!ヒヒの集う広場へ!
《あはっ!行ってらっしゃいベリーちゃん。ボクは少し用事があるから出掛けてくるねぇ。
サイラスくん、お転婆なベリーちゃんをよろしくねぇ》
「はっ!しっかり護衛致します!こちらの用事が済み次第、早急に別邸へとお連れ致します!
また、ウル様が戻られるまで傍におりしっかりお護り致します故、御安心下さい!」
《んもう~硬いなぁ。もっとフランクにいこうぜぇ。じゃあねぇ》
という事でやって来ました騎士訓練所。広大な広場にいます!人、人、人!筋肉ダルマの集団。圧巻です!
でも騎士の訓練着がちょっとダサい……黒の全身タイツみたいなピタッとした服に、胸当てと腕と肘当て。
モッコリが……若干目のやり場に困ります……。そこもガードしたほうが良いですよ?急所なんだし……
そして、颯爽と歩くサイラスに声を掛けながら近寄り、腕に抱えられている私を見て驚いて口パッカーん。
馬鹿の一つ覚えみたいに皆が同じ反応……ウケる。
若騎士A 「おいサイラス遅くね?サボりか……よ……え?妖精?」
若騎士B 「お前災難だったなぁ。見てたぞさっき……え、可愛い」
中年騎士 「コラ!サイラスおせーぞ!って、何それお前の子か?」
「天使降臨……」 「え、精霊だろ」 「神獣かもよ」
青年騎士 「サイちゃん何処行ってたの?今日こそデートしてくれよ……その子なに?悔しいくらい可愛いな」
天使でも、精霊でもない。ましてや神獣でもない。神獣って……どうみても人間でしょ!?ケモ耳も尻尾も生えてませんからぁ!!
最後に発言した彼は、まさかのBでLなアレですか?立夏ちゃんがココにいたら発狂してた案件だ。生粋の腐女子だから……あぁ…教えてあげたい。
(立夏ちゃん。生BLです。ガチムチ×美少年です!)
サイラス 「遅れて申し訳ない。少々事案が発生してな。これから師団長の所へ行かなきゃならないんだが、兵舎に居るだろうか?特殊案件で緊急なんだ。
それと、モキイ先輩デートはしません。さり気なく尻を撫でないで下さい!」
ふむ。モキイパイセンの一方通行Loveなのですね。乙です。それと尻撫で撫ではセクハラよ!セクハラダメ絶対。
それにしても『モキイ』って名前凄いな。入れ替えたら『キモイ先輩』だよ。学校とかで名前弄りで揶揄われそう…
少年騎士「キモ先輩、ダメっすよ。それセクハラっすからね。サイラスさん、師団長はいつも通り執務室で副師団長にケツ叩かれながらヒーヒー書類仕事してますよ」
10歳くらいだろうか?ちっちゃい騎士くん普通に『キモ先輩』って…モキイ先輩だぜ。
(……この髪の色と目の色そして顔立ち……う~ん……知ってる気がする……何となく、攻略対象の隣国の王子に似てるような……)
例の乙女ゲームの攻略対象の一人、隣国の不遇第3王子『ユージーン・スウィーティオ』は側妃殿下の子供。
側妃の美貌と王からの寵愛、ユージーンの容姿を疎ましく思った王妃が、城から2人を追い出し塔に幽閉し、
王には、「重圧に耐えられず出て行った」とオヨヨと泣き真似して嘘の報告。
劣悪な環境での生活で身体を壊した側妃は、ユージーンが6歳の時に逝去。
ショックを受けたユージーンが魔力暴走を起こし、塔が崩壊して瓦礫に埋もれてる所を騎士に発見され一命を取り留める。
王が唯一愛した側妃の子ユージーンは、王に可愛がられるも、王妃や他の兄弟に影で冷遇され王以外に心を閉ざす。
そんな不遇の王子は、12歳でシュガーズ王国にある王立魔法学院に留学し、ヒロインに出会って恋に落ち、勇者として聖女と共に魔王討伐に赴き、討伐成功させた褒美として、『ストロベリー』と婚約解消して聖女キャロルと結婚する。
これが、隣国の王子『ユージーン』のルート。
ダークパープルヘアーと漆黒の眼、陶器のような肌にフサフサの長い睫毛、切れ長の目、と目元のホクロ、薄い唇。長い手足に絶対零度の眼差し。
それが『ユージーン』の外見的特徴。
そんな特徴を持った人物が、シュタイザー侯爵家の訓練所にいる。あのダサい訓練着を身に着けて。
まぁ、ここは現実世界だし?ゲームの設定は関係ないけどさ。でもだからってなぜ幼少期の今ここにいる?
「似てるけど……別人かな……」
サイラスの腕の中でボソッと呟いた言葉に反応した少年騎士くんは、一瞬目を見開いた後ニヤッと笑った。
そしてボソッと、「くくっ。本物だよ」と小声で囁いた。
え、なに怖い。ニヤッとしたけど目が笑ってない。「本物だよ」って何が?私の言葉の意味を理解しての発言ですか?意味深な視線を投げないで頂きたい。
「サイラス、サイラス、早く行こう。師団長様のところ。なんかココ危険な香りがするの。」
さらば青年、少年よ。大志を抱け!
サイラス 「かしこまりましたストロベリー様。それでは皆さま失礼致します。」
そう言ってサイラスは騎士の礼をとり、兵舎にいる師団長の所へとむかった。
去って行く後ろ姿を見詰めながら少年騎士は、「あれが悪役令嬢ストロベリー・ディ・シュタイザーか」と呟いた。
「悪役令嬢」とは……まさか彼も転生者なのだろうか?
そうだとしたら近場に転生者が揃い過ぎではないだろうか……
さて彼は、今後ベリーと関わって行くのか行かないのか?
少年は兵舎を見詰め何を思っているのか。冷めた目はまさに絶対零度。怖い怖すぎる。
さて、師団長室に入室しソファに一人座らされ、目の前には相好を崩しているムキムキマッチョメン。
ベリーの後ろにはサイラスが。マッチョメンの後ろには……エルフです。眼福です。ご馳走様です。
しかもこのエルフ、またもや攻略対象ではなかろうか?似ている。エルフ国の放蕩息子に。
もし本人だったらシュガーズ王国に溜まりすぎでは?
第一王子と第二王子、兄様と魔法師団長の息子、伯爵ワンコ子息、辺境伯、エルフ、隣国王子……そしてヒロインキャロルと悪役令嬢ストロベリー。
あれ?魔国の王子が揃えば全員集合ではなかろうか?凄い豪華。
これはあれかね?この中から一人選んで攻略しても良いよってこと?ぐへへへ……
なんてことあるかぁー!!「ぐへへ」とかマジキモイ。自分がキモイ。
果てさて、美貌のエルフは気になるが、師団長様にお願いをせねばな!
「初めまして、私『ストロベリー・ディ・シュタイザー』と申します。あ、正真正銘本物のシュタイザー家長女です。……殺気を出さないで下さい。疑うなら鑑定しても構いません。」
エルフ 「……こほん。失礼致しました。ストロベリー様を語る不届き者だと思いついつい殺気が漏れました。
では、お言葉に甘えて鑑定させて頂きます。《鑑定》
…え…まさか…こ、これは事実ですか?いや、事実なのでしょうね…この称号の『不憫な転生者』というのは?」
「え?何その称号……イヤなんだけどぉ。はぁ…まぁそのままの意味で転生者。異世界の記憶を持つ存在ってことですね。」
師団長 「なるほど。初代勇者と同じ存在ってことか?ん?あれは召喚だったか?じゃあ、2代前か?」
エルフ 「2代前は転移者だったはずですね。3代前の辺境伯が転生勇者ですね」
え!勇者って代々いるの?そんなに歴代勇者いて彼らは何してたの?魔王討伐とか?戦争とか?
それに、そんな古い時代から乙女ゲームの世界観なの?じゃあ、その時代その時代ヒロインがいて、悪役令嬢がいて、攻略対象者がいたの?
歴代キャロルがいて、歴代ストロベリーがいたわけ?何それ怖い。じゃあ私は○代目ストロベリーってこと?
教えてゴッド。苺花は理解不能です。
エルフ 「……様……ベリー様……ストロベリー様!!」
「え!?はい!すみません。ちょっと考えことをしてました。」
師団長 「大丈夫か?疲れたか?菓子でも食うか?あ、果実水飲むか?」
エルフ 「ああ。気が利かず申し訳ございません。サイラス、何か菓子と飲み物の用意を」
「あ!いえ、大丈夫です。持ってきてますから。(クッキーと葡萄ジュースで良いかな?)どうぞ、私の手作りですが食べて下さい。サイラスも食べて」
サイラス 「いえ。私は任務中ですから」キリッ。
キリッとして後ろに控える姿。うん、かっこいいわ。
エルフ 「私も任務中なので、後で頂きますね」ニコッ。
ニコッと笑顔なんだけど、目線はクッキーに釘付け。甘い物が好きなんだろうか。ふむ。可愛いじゃん。
師団長 「サクッ……美味っ!なんだコレ、生地はサクサク、混ぜてある木の実?がほろ苦くて美味い!
ゴクッ……!?……この果実水も凄いな。芳醇な甘さの果実……葡萄か?ワインの風味に似てる」
パクパク食べてる…というか飲んでる!?凄いどんどん吸い込まれていく。
エルフ 「くっ…任務中じゃなければ……ああ、団長!全部食べないでよ!それ僕の分!うぅぅ……酷い……」
「「…………」」
ベリーとサイラスは、団長とエルフのやり取りを呆然と眺めていた。菓子を貪り食うマッチョメンと、減っていくクッキーに泣き出した美貌のエルフ。
綺麗にクッキーが無くなった皿を見て床に手を付き項垂れるエルフ。
いや、うん。なんかとても可哀想だから帰りにコソッとあげよう。まだ収納に入ってるし。
サイラス、目線で訴えなくても貴方にも後であげるわよ。何個か包んであるから、他の騎士の方にもお裾分けしようかな?うん。
「エルフさん。まだ有りますから、後であげますから、泣かないで?ね?他の団員さんにもお配りしますね。」
「……ぐすっ。うん…。…………はっ!もももも申し訳ございません!!先程のことは忘れて下さい!!
ゴホン…ええっと、それでお話というのは?自己紹介をしに来ただけではなさそうですが……
それと、ステータスの備考欄に『護衛騎士サイラス』と記載がありましたが……あれは?」
うんうん。強烈すぎて忘れる事はないと思う。悪いねエルフさん。
「そうですね。自己紹介もありましたが、本題はサイラスの事です。実は彼、刀剣神様に気に入られたのか、神命で私の護衛に抜擢されまして、加護まで与えられたのです。
私的には護衛は遠慮したんですが…ほら、彼は侯爵家の騎士でしょ?国を、民を護るために騎士になったのだろうし、一個人の護衛騎士に勝手にされてしまって可哀想だと思うのよ。
だけど、サイラスは神命は絶対だと言って譲らないのよね。まぁ、わたし5歳までしかここにいないから、それまでならと思って了承したのよ。
それで、師団長と侯爵に報告するって事になったのだけど、私の存在を侯爵家に知られたくないわけよ。
捨てられた身だし、本邸には偽物だけど既に『ストロベリー令嬢』がいるのだし。
いきなり、『本物です』なんて存在明かしたら、『偽ストロベリー令嬢』の居場所を奪ってしまうでしょ?
それは何だか心苦しいから、報告はしないでもらいたいの。
で、護衛騎士になるってことは普段の練習には参加出来なくなるでしょ?その事を団長さんに了承してもらいたくてこうして伺ったのです」
「神の加護……」「神命……」「捨てられたとは……」と、三者三葉の言葉と表情をして、最終的には3人とも考えこんでしまった。
チクタクチクタク……どれくらい時間が経ったのか……
シーンと静まり返る室内。
沈黙を破ったのは、「ギギャー、ギギャー」と泣き叫ぶ怪鳥。またお前か!タイミングを測ったように騒ぐな鬱陶しい!
師団長 「話はわかった。が、俺達は侯爵様と国に忠誠を誓ってるのでな…悪いが報告はさせてもらう。
ただし、一度捨てたんだ。関わるなとは言っとく。確かに今更「侯爵令嬢だ」って言っても肩身の狭い思いするだろうしな」
エルフ 「私もわかりました。本邸にいる『偽ストロベリー様』と夫人は、かなり強烈ですし、貴方が「本物だ」と言ってもいびられる気がします。
まぁ、神の愛し子をぞんざいに扱った人の末路は見てみたいですが、貴方が冷遇されるのは見たくないですしね。それと、サイラスの件は了解致しました。
本人もやる気のようですし、我々には異論有りません。神命ですからね、誰も逆らえませんし、愛し子の護衛なんて騎士として名誉だと思いますよ。」
サイラス 「はい。ベリー様の護衛なんて、騎士として素晴らしい名誉を賜れたこと誇りに思います。
5歳までとは言わず、一生護らせて頂きます。どうぞ存分にこき使って下さい!」
ゔっ……やはり報告はするのか……まぁ、それは仕方ないか。忠誠誓ってる相手を裏切るなんて出来ないだろうし。騎士道精神に反するもんね。
サイラス…一生護るって…嬉しいけど冒険者に護衛は必要ないんだよねぇ。
パーティ組んでパートナーとして付いてきてくれるなら良いけどさぁ。
それだと騎士を辞めなきゃだろうし、そんな道を歩ませるわけにはいかないから、やっぱり5歳までにしてもらおう。
「ありがとうございます。正直、報告されるのは本当にイヤだけど……仕方ないことなんだと受け止めます。
その変わり関わってくれるなと伝えるのはお願いしますね。あ!それと、剣の修行をしたいので明日から訓練に参加させて下さい!
魔法はある程度できるんですが、剣術はスキルがあるだけで基礎とかはわからないんです。なのでお願いします」
そう言ったら3人とも難しい顔して黙ってしまった。
団長さん、眉間に皺寄せたらめっちゃ顔怖い!顔面兵器だよ。エルフさんはどんな顔しても麗しい。なんかキラキラエフェクトが見える。
サイラスは……うん、可愛い。アイドルみたい。男に好かれる男って感じの見た目ね。
さて、訓練参加をお願いしたわけだが、受け入れてもらえるだろうか……
さぁ、返事を!私に指導を!おねしゃあす!
現在サイラスは15歳。2級騎士となり日々頑張っている。
若き2級騎士の彼は、ミルクブラウンのウェーブヘアーに、トパーズ色の瞳を持つ美少年。
柔らかい雰囲気と物腰、少し高い声が世のおば様方に人気があり、街中では『サイちゃん』と呼ばれている。
そんなサイラスくんは、幼少期から不憫であった。小柄で華奢な彼は剣の腕は良いのだが、いくら鍛えても筋肉がつかず、女顔なので男から好かれるのだ。
それは成長しても変わらず、「そっちの趣味はない!」といくら断っても男が寄ってくる。
そんなんだから、年頃の女性からはモテない。小さい子や妙齢の女性にはモテるのだが……不憫だ……。
そんな不憫騎士ことサイラスくんだが、違和感のする侯爵邸の裏の林の中を進み、結界の中へと入り込み、目の前に広がる美しい庭園と旧侯爵邸に唖然としていたら、御伽噺に登場する神霊に出会った。
神霊……小兎神族のウルと名乗るそれの話しによれば、本邸にいる『ストロベリー侯爵令嬢』は偽物で、本物は別にいるとのこと。
(なにその衝撃事実!?そんな重大秘密を一騎士に言うなよ!!)と、声に出して叫びたかった。
そして、刀剣神様に加護を与えられ、本物のストロベリー侯爵令嬢の護衛騎士に任命された。
(加護は嬉しい。素直にありがとうございます!でも、護衛騎士に任命って何それ!?誰にどう説明すれば!?)と、声に出して訴えたかった。
そして突然の事にパニックになり、思わず叫んだら、空から天使が降ってきた。……悪態吐きながら……。
サイラス 「……本物の天使初めて見た……え、現世に遊びに来たの?……ウル様、あの子空から落ちたけど大丈夫でしょうか?私が近付いたら穢れで消えませんか?」
天使ではない。空から落ちたわけじゃない。ハンモックから落下しただけだ。穢れで消えるわけがない。
大丈夫だサイラス。君は穢れてない。魂の綺麗な優しい青年だ。
《あっは!ベリーちゃんが天使ぃ?サイラス面白いねぇ!あそこでひっくり返ってるのが本物の『ストロベリー・ディ・シュタイザー侯爵令嬢』だよぉ~!
サイラスくんが護衛する子ね!》
「護衛対象」「侯爵令嬢」と聞いて身体が自然に動き、「お怪我は御座いませんか!?」と、傍に駆け寄りサッと抱き上げた。
サイラス 「うわっ…軽っ…可愛い…え?本当に人間?アレと大違いなんだけど…」
あまりの軽さと可憐さに、サイラスは無意識に呟いてた。
いきなり抱き上げられ呟かれた言葉に、ベリーは目をパチパチさせてから、声を出して笑った。
「きゃははは!声に出てるよ!私はちゃんと人間だよ。初めましてサイラスさん。私は『本物のストロベリー』
本邸にいるのは偽物ね。護衛騎士とか神様が勝手に言ってるだけだから、気にしないでね。
ココは結界に護られてて安全だし、相棒のウルもいるからさ!貴方は侯爵家の騎士でしょ?通常任務に戻って大丈夫よ」
サイラス 「え?いや、申し訳ございません!思った事がついポロッと……。
私は『サイラス・プレストン』男爵家次男で2級騎士です。刀剣神様より賜った『護衛騎士』の任、謹んでお受け致します。
神命は王命より絶対であり、放棄する事は不可能だと思われます。
この件に関しまして、師団長と侯爵様に報告し、明朝より任務に就きたいと思います。」
謹んでお受けしなくても良いのに。神命は絶対とか……刀剣神様、なに勝手なことしてんの!?
侯爵に報告したら、ややこしくなりそうだから辞めてほしい!
せっかく自由に好き勝手してるのに、本邸に戻されて『キャロル』と金髪ガマガエルと一緒に生活とか絶対イヤ!断固拒否する!
「《サイラス命令よ。護衛騎士の件は師団長のみに報告する事。侯爵家には私の存在を秘匿しなさい》……どう?わかったかしら?今日はもう戻って、明日は師団長さんに了承頂いたら来ていいわ。ね?OK?」
初めて人に対して精神魔法使ったけど、気分の良いもんじゃないわね……こんな純朴そうな青年には使いたくなかったわ……はぁ……
サイラス 「侯爵様には秘匿ですか……命令なら私は従いますが、師団長から侯爵様には報告がいくと思われます。
その際は致し方ない事としてお許し頂けたらと思います。」
あら?魔法が弾かれた!え?精度が甘かったのかな?
《(ベリーちゃん。サイラスくんね、物理攻撃無効と精神魔法無効のスキルを持ってるよ。だから洗脳系の魔法が効かないみたい!刀剣神様の加護の影響だねぇ)》
(おおう……マジかぁ。じゃあ、師団長に報告→侯爵様に報告→結果存在がバレるってことか!)
なんて面倒臭い……どうしたもんか……
(あ、じゃあさ、私が師団長に直接頼もうかな。「報告しないでぇ」って。事情話してさ、普通にお願いするの。どうかな?)
《(う~ん。ベリーちゃんの言う普通が本当に普通がわかんないけどぉ。良いんじゃない?あ、ついでに訓練に混ぜて貰えば良いよ!)》
「なるほど」ということで、これからサイラスと一緒に訓練所まで行き、師団長様に直接お願いする事にした。
それを彼に伝えると、
「ヒヒの群れに可憐な天使…危険だ」と、「天使が穢れる…変態共に襲われる…」と、ブツブツ言っていたけど、
「抱っこしてくれてれば良いよ。結界も張るし」と、「お願い♡」と頼んだら、
「ぐっ…はぁ。わかりました」と、渋々、目を片手で覆いながら了承してくれた。
という事で、転生してから3年と2ヶ月。初めて屋敷以外の場所へ行きます!
初めて訪れる場所へのワクワクした気持ちと、少しの不安を抱えて、いざ行かん!ヒヒの集う広場へ!
《あはっ!行ってらっしゃいベリーちゃん。ボクは少し用事があるから出掛けてくるねぇ。
サイラスくん、お転婆なベリーちゃんをよろしくねぇ》
「はっ!しっかり護衛致します!こちらの用事が済み次第、早急に別邸へとお連れ致します!
また、ウル様が戻られるまで傍におりしっかりお護り致します故、御安心下さい!」
《んもう~硬いなぁ。もっとフランクにいこうぜぇ。じゃあねぇ》
という事でやって来ました騎士訓練所。広大な広場にいます!人、人、人!筋肉ダルマの集団。圧巻です!
でも騎士の訓練着がちょっとダサい……黒の全身タイツみたいなピタッとした服に、胸当てと腕と肘当て。
モッコリが……若干目のやり場に困ります……。そこもガードしたほうが良いですよ?急所なんだし……
そして、颯爽と歩くサイラスに声を掛けながら近寄り、腕に抱えられている私を見て驚いて口パッカーん。
馬鹿の一つ覚えみたいに皆が同じ反応……ウケる。
若騎士A 「おいサイラス遅くね?サボりか……よ……え?妖精?」
若騎士B 「お前災難だったなぁ。見てたぞさっき……え、可愛い」
中年騎士 「コラ!サイラスおせーぞ!って、何それお前の子か?」
「天使降臨……」 「え、精霊だろ」 「神獣かもよ」
青年騎士 「サイちゃん何処行ってたの?今日こそデートしてくれよ……その子なに?悔しいくらい可愛いな」
天使でも、精霊でもない。ましてや神獣でもない。神獣って……どうみても人間でしょ!?ケモ耳も尻尾も生えてませんからぁ!!
最後に発言した彼は、まさかのBでLなアレですか?立夏ちゃんがココにいたら発狂してた案件だ。生粋の腐女子だから……あぁ…教えてあげたい。
(立夏ちゃん。生BLです。ガチムチ×美少年です!)
サイラス 「遅れて申し訳ない。少々事案が発生してな。これから師団長の所へ行かなきゃならないんだが、兵舎に居るだろうか?特殊案件で緊急なんだ。
それと、モキイ先輩デートはしません。さり気なく尻を撫でないで下さい!」
ふむ。モキイパイセンの一方通行Loveなのですね。乙です。それと尻撫で撫ではセクハラよ!セクハラダメ絶対。
それにしても『モキイ』って名前凄いな。入れ替えたら『キモイ先輩』だよ。学校とかで名前弄りで揶揄われそう…
少年騎士「キモ先輩、ダメっすよ。それセクハラっすからね。サイラスさん、師団長はいつも通り執務室で副師団長にケツ叩かれながらヒーヒー書類仕事してますよ」
10歳くらいだろうか?ちっちゃい騎士くん普通に『キモ先輩』って…モキイ先輩だぜ。
(……この髪の色と目の色そして顔立ち……う~ん……知ってる気がする……何となく、攻略対象の隣国の王子に似てるような……)
例の乙女ゲームの攻略対象の一人、隣国の不遇第3王子『ユージーン・スウィーティオ』は側妃殿下の子供。
側妃の美貌と王からの寵愛、ユージーンの容姿を疎ましく思った王妃が、城から2人を追い出し塔に幽閉し、
王には、「重圧に耐えられず出て行った」とオヨヨと泣き真似して嘘の報告。
劣悪な環境での生活で身体を壊した側妃は、ユージーンが6歳の時に逝去。
ショックを受けたユージーンが魔力暴走を起こし、塔が崩壊して瓦礫に埋もれてる所を騎士に発見され一命を取り留める。
王が唯一愛した側妃の子ユージーンは、王に可愛がられるも、王妃や他の兄弟に影で冷遇され王以外に心を閉ざす。
そんな不遇の王子は、12歳でシュガーズ王国にある王立魔法学院に留学し、ヒロインに出会って恋に落ち、勇者として聖女と共に魔王討伐に赴き、討伐成功させた褒美として、『ストロベリー』と婚約解消して聖女キャロルと結婚する。
これが、隣国の王子『ユージーン』のルート。
ダークパープルヘアーと漆黒の眼、陶器のような肌にフサフサの長い睫毛、切れ長の目、と目元のホクロ、薄い唇。長い手足に絶対零度の眼差し。
それが『ユージーン』の外見的特徴。
そんな特徴を持った人物が、シュタイザー侯爵家の訓練所にいる。あのダサい訓練着を身に着けて。
まぁ、ここは現実世界だし?ゲームの設定は関係ないけどさ。でもだからってなぜ幼少期の今ここにいる?
「似てるけど……別人かな……」
サイラスの腕の中でボソッと呟いた言葉に反応した少年騎士くんは、一瞬目を見開いた後ニヤッと笑った。
そしてボソッと、「くくっ。本物だよ」と小声で囁いた。
え、なに怖い。ニヤッとしたけど目が笑ってない。「本物だよ」って何が?私の言葉の意味を理解しての発言ですか?意味深な視線を投げないで頂きたい。
「サイラス、サイラス、早く行こう。師団長様のところ。なんかココ危険な香りがするの。」
さらば青年、少年よ。大志を抱け!
サイラス 「かしこまりましたストロベリー様。それでは皆さま失礼致します。」
そう言ってサイラスは騎士の礼をとり、兵舎にいる師団長の所へとむかった。
去って行く後ろ姿を見詰めながら少年騎士は、「あれが悪役令嬢ストロベリー・ディ・シュタイザーか」と呟いた。
「悪役令嬢」とは……まさか彼も転生者なのだろうか?
そうだとしたら近場に転生者が揃い過ぎではないだろうか……
さて彼は、今後ベリーと関わって行くのか行かないのか?
少年は兵舎を見詰め何を思っているのか。冷めた目はまさに絶対零度。怖い怖すぎる。
さて、師団長室に入室しソファに一人座らされ、目の前には相好を崩しているムキムキマッチョメン。
ベリーの後ろにはサイラスが。マッチョメンの後ろには……エルフです。眼福です。ご馳走様です。
しかもこのエルフ、またもや攻略対象ではなかろうか?似ている。エルフ国の放蕩息子に。
もし本人だったらシュガーズ王国に溜まりすぎでは?
第一王子と第二王子、兄様と魔法師団長の息子、伯爵ワンコ子息、辺境伯、エルフ、隣国王子……そしてヒロインキャロルと悪役令嬢ストロベリー。
あれ?魔国の王子が揃えば全員集合ではなかろうか?凄い豪華。
これはあれかね?この中から一人選んで攻略しても良いよってこと?ぐへへへ……
なんてことあるかぁー!!「ぐへへ」とかマジキモイ。自分がキモイ。
果てさて、美貌のエルフは気になるが、師団長様にお願いをせねばな!
「初めまして、私『ストロベリー・ディ・シュタイザー』と申します。あ、正真正銘本物のシュタイザー家長女です。……殺気を出さないで下さい。疑うなら鑑定しても構いません。」
エルフ 「……こほん。失礼致しました。ストロベリー様を語る不届き者だと思いついつい殺気が漏れました。
では、お言葉に甘えて鑑定させて頂きます。《鑑定》
…え…まさか…こ、これは事実ですか?いや、事実なのでしょうね…この称号の『不憫な転生者』というのは?」
「え?何その称号……イヤなんだけどぉ。はぁ…まぁそのままの意味で転生者。異世界の記憶を持つ存在ってことですね。」
師団長 「なるほど。初代勇者と同じ存在ってことか?ん?あれは召喚だったか?じゃあ、2代前か?」
エルフ 「2代前は転移者だったはずですね。3代前の辺境伯が転生勇者ですね」
え!勇者って代々いるの?そんなに歴代勇者いて彼らは何してたの?魔王討伐とか?戦争とか?
それに、そんな古い時代から乙女ゲームの世界観なの?じゃあ、その時代その時代ヒロインがいて、悪役令嬢がいて、攻略対象者がいたの?
歴代キャロルがいて、歴代ストロベリーがいたわけ?何それ怖い。じゃあ私は○代目ストロベリーってこと?
教えてゴッド。苺花は理解不能です。
エルフ 「……様……ベリー様……ストロベリー様!!」
「え!?はい!すみません。ちょっと考えことをしてました。」
師団長 「大丈夫か?疲れたか?菓子でも食うか?あ、果実水飲むか?」
エルフ 「ああ。気が利かず申し訳ございません。サイラス、何か菓子と飲み物の用意を」
「あ!いえ、大丈夫です。持ってきてますから。(クッキーと葡萄ジュースで良いかな?)どうぞ、私の手作りですが食べて下さい。サイラスも食べて」
サイラス 「いえ。私は任務中ですから」キリッ。
キリッとして後ろに控える姿。うん、かっこいいわ。
エルフ 「私も任務中なので、後で頂きますね」ニコッ。
ニコッと笑顔なんだけど、目線はクッキーに釘付け。甘い物が好きなんだろうか。ふむ。可愛いじゃん。
師団長 「サクッ……美味っ!なんだコレ、生地はサクサク、混ぜてある木の実?がほろ苦くて美味い!
ゴクッ……!?……この果実水も凄いな。芳醇な甘さの果実……葡萄か?ワインの風味に似てる」
パクパク食べてる…というか飲んでる!?凄いどんどん吸い込まれていく。
エルフ 「くっ…任務中じゃなければ……ああ、団長!全部食べないでよ!それ僕の分!うぅぅ……酷い……」
「「…………」」
ベリーとサイラスは、団長とエルフのやり取りを呆然と眺めていた。菓子を貪り食うマッチョメンと、減っていくクッキーに泣き出した美貌のエルフ。
綺麗にクッキーが無くなった皿を見て床に手を付き項垂れるエルフ。
いや、うん。なんかとても可哀想だから帰りにコソッとあげよう。まだ収納に入ってるし。
サイラス、目線で訴えなくても貴方にも後であげるわよ。何個か包んであるから、他の騎士の方にもお裾分けしようかな?うん。
「エルフさん。まだ有りますから、後であげますから、泣かないで?ね?他の団員さんにもお配りしますね。」
「……ぐすっ。うん…。…………はっ!もももも申し訳ございません!!先程のことは忘れて下さい!!
ゴホン…ええっと、それでお話というのは?自己紹介をしに来ただけではなさそうですが……
それと、ステータスの備考欄に『護衛騎士サイラス』と記載がありましたが……あれは?」
うんうん。強烈すぎて忘れる事はないと思う。悪いねエルフさん。
「そうですね。自己紹介もありましたが、本題はサイラスの事です。実は彼、刀剣神様に気に入られたのか、神命で私の護衛に抜擢されまして、加護まで与えられたのです。
私的には護衛は遠慮したんですが…ほら、彼は侯爵家の騎士でしょ?国を、民を護るために騎士になったのだろうし、一個人の護衛騎士に勝手にされてしまって可哀想だと思うのよ。
だけど、サイラスは神命は絶対だと言って譲らないのよね。まぁ、わたし5歳までしかここにいないから、それまでならと思って了承したのよ。
それで、師団長と侯爵に報告するって事になったのだけど、私の存在を侯爵家に知られたくないわけよ。
捨てられた身だし、本邸には偽物だけど既に『ストロベリー令嬢』がいるのだし。
いきなり、『本物です』なんて存在明かしたら、『偽ストロベリー令嬢』の居場所を奪ってしまうでしょ?
それは何だか心苦しいから、報告はしないでもらいたいの。
で、護衛騎士になるってことは普段の練習には参加出来なくなるでしょ?その事を団長さんに了承してもらいたくてこうして伺ったのです」
「神の加護……」「神命……」「捨てられたとは……」と、三者三葉の言葉と表情をして、最終的には3人とも考えこんでしまった。
チクタクチクタク……どれくらい時間が経ったのか……
シーンと静まり返る室内。
沈黙を破ったのは、「ギギャー、ギギャー」と泣き叫ぶ怪鳥。またお前か!タイミングを測ったように騒ぐな鬱陶しい!
師団長 「話はわかった。が、俺達は侯爵様と国に忠誠を誓ってるのでな…悪いが報告はさせてもらう。
ただし、一度捨てたんだ。関わるなとは言っとく。確かに今更「侯爵令嬢だ」って言っても肩身の狭い思いするだろうしな」
エルフ 「私もわかりました。本邸にいる『偽ストロベリー様』と夫人は、かなり強烈ですし、貴方が「本物だ」と言ってもいびられる気がします。
まぁ、神の愛し子をぞんざいに扱った人の末路は見てみたいですが、貴方が冷遇されるのは見たくないですしね。それと、サイラスの件は了解致しました。
本人もやる気のようですし、我々には異論有りません。神命ですからね、誰も逆らえませんし、愛し子の護衛なんて騎士として名誉だと思いますよ。」
サイラス 「はい。ベリー様の護衛なんて、騎士として素晴らしい名誉を賜れたこと誇りに思います。
5歳までとは言わず、一生護らせて頂きます。どうぞ存分にこき使って下さい!」
ゔっ……やはり報告はするのか……まぁ、それは仕方ないか。忠誠誓ってる相手を裏切るなんて出来ないだろうし。騎士道精神に反するもんね。
サイラス…一生護るって…嬉しいけど冒険者に護衛は必要ないんだよねぇ。
パーティ組んでパートナーとして付いてきてくれるなら良いけどさぁ。
それだと騎士を辞めなきゃだろうし、そんな道を歩ませるわけにはいかないから、やっぱり5歳までにしてもらおう。
「ありがとうございます。正直、報告されるのは本当にイヤだけど……仕方ないことなんだと受け止めます。
その変わり関わってくれるなと伝えるのはお願いしますね。あ!それと、剣の修行をしたいので明日から訓練に参加させて下さい!
魔法はある程度できるんですが、剣術はスキルがあるだけで基礎とかはわからないんです。なのでお願いします」
そう言ったら3人とも難しい顔して黙ってしまった。
団長さん、眉間に皺寄せたらめっちゃ顔怖い!顔面兵器だよ。エルフさんはどんな顔しても麗しい。なんかキラキラエフェクトが見える。
サイラスは……うん、可愛い。アイドルみたい。男に好かれる男って感じの見た目ね。
さて、訓練参加をお願いしたわけだが、受け入れてもらえるだろうか……
さぁ、返事を!私に指導を!おねしゃあす!
応援ありがとうございます!
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