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第5章 〈レッスン2〉 アフタヌーン・キス
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ジムを出たのは、午後12時ちょうど。
そこから今度は1階の薬膳カフェに移動。
ランチタイム真っ只中でお店は混雑していたけれど、奥にある個室スペースの一室を、期間中はわたし専用に開けてくれているのだと聞き、ほっとした。
なにしろ、わたしみたいな一般人がカメラマンさん同行でランチなんてしていたら、悪目立ちしてしまうに違いない。
わたし専用だなんて、おこがましくて気が引けるけれど、ありがたい配慮だった。
慣れない撮影や運動で疲れ果てていたから、ちゃんと食べられるかと思っていたけれど、その心配はまったく無用だった。
「お待たせいたしました」
店員さんが目の前に料理を並べてくれたとき、思わず「わー」と声がもれた。
すかさず、SHIHOさんがシャッターを切る。
「今日、一番いい顔でしたよ」と言われて、ちょっと恥ずかしい。
でも食いしん坊なのだから仕方がない。
テーブルに置かれたのは、ふわっといい香りがする湯気のたった薬膳粥と体に良さそうなナッツやドライフルーツやお豆がふんだんにトッピングされたサラダ、そして小豆とサツマイモの白玉。デザートまでついていて感激だ。
鶏ガラスープで炊いたお粥は疲れた体に染み入るようで、とてもおいしかった。
食べていたのはわたしだけだったので、お二人に申し訳ないと思いつつ、綺麗に平らげた。
店を出て、そこで別れることになった。
紀田さんは満面の笑みを浮かべてわたしを見た。
「加藤さん、今日は本当にお疲れ様でした。慣れないことで色々大変でしたのに、不満一つ漏らされないのだから。あなたにご協力いただけて本当に良かった」
「そんな。わたしこそ、不慣れすぎてお二人にご迷惑をかけたのではないかと心配していたのですけれど」
SHIHOさんは首を振った。
「いいえ、まったく。慣れないところも可愛いというか、初日らしい初々しい写真が取れて、満足してます」
「そう言っていただけて、ほっとしました」
また来週、エステを受けているところの写真を撮らせてほしいと言いおいて、お二人は事務所へと上がっていった。
わたしはそのまま〈リインカネーション〉を後にした。
「ただいまー」
「おかえり。今日から昼ごはんはいらないんだったね」
「うん」
祖母は、わたしと入れ替わりに昼食を取るために奥に入っていった。
レジ前の椅子に座ったとたん、どっと疲れが襲ってきた。
思わず、机に突っ伏しそうになる。
初日からこれでは、先が思いやられる。
「さて、たまった仕事しなきゃ」
大きな息をひとつして、わたしは納品されていた本を書棚に並べ始めた。
片づけを終え、レジで新しく届いた絵本のポップを書いていると、スマホに着信があった。
玲伊さんからのメールだ。
『今日はお疲れ様。で、疲れているところ悪いんだけど、8時から店に来られるかな。
その時間なら、優ちゃんの施術ができるから』
わたしは『じゃあ、その時間に合わせて夕食を取ります』と返信して、スマホをポケットにしまった。
そこから今度は1階の薬膳カフェに移動。
ランチタイム真っ只中でお店は混雑していたけれど、奥にある個室スペースの一室を、期間中はわたし専用に開けてくれているのだと聞き、ほっとした。
なにしろ、わたしみたいな一般人がカメラマンさん同行でランチなんてしていたら、悪目立ちしてしまうに違いない。
わたし専用だなんて、おこがましくて気が引けるけれど、ありがたい配慮だった。
慣れない撮影や運動で疲れ果てていたから、ちゃんと食べられるかと思っていたけれど、その心配はまったく無用だった。
「お待たせいたしました」
店員さんが目の前に料理を並べてくれたとき、思わず「わー」と声がもれた。
すかさず、SHIHOさんがシャッターを切る。
「今日、一番いい顔でしたよ」と言われて、ちょっと恥ずかしい。
でも食いしん坊なのだから仕方がない。
テーブルに置かれたのは、ふわっといい香りがする湯気のたった薬膳粥と体に良さそうなナッツやドライフルーツやお豆がふんだんにトッピングされたサラダ、そして小豆とサツマイモの白玉。デザートまでついていて感激だ。
鶏ガラスープで炊いたお粥は疲れた体に染み入るようで、とてもおいしかった。
食べていたのはわたしだけだったので、お二人に申し訳ないと思いつつ、綺麗に平らげた。
店を出て、そこで別れることになった。
紀田さんは満面の笑みを浮かべてわたしを見た。
「加藤さん、今日は本当にお疲れ様でした。慣れないことで色々大変でしたのに、不満一つ漏らされないのだから。あなたにご協力いただけて本当に良かった」
「そんな。わたしこそ、不慣れすぎてお二人にご迷惑をかけたのではないかと心配していたのですけれど」
SHIHOさんは首を振った。
「いいえ、まったく。慣れないところも可愛いというか、初日らしい初々しい写真が取れて、満足してます」
「そう言っていただけて、ほっとしました」
また来週、エステを受けているところの写真を撮らせてほしいと言いおいて、お二人は事務所へと上がっていった。
わたしはそのまま〈リインカネーション〉を後にした。
「ただいまー」
「おかえり。今日から昼ごはんはいらないんだったね」
「うん」
祖母は、わたしと入れ替わりに昼食を取るために奥に入っていった。
レジ前の椅子に座ったとたん、どっと疲れが襲ってきた。
思わず、机に突っ伏しそうになる。
初日からこれでは、先が思いやられる。
「さて、たまった仕事しなきゃ」
大きな息をひとつして、わたしは納品されていた本を書棚に並べ始めた。
片づけを終え、レジで新しく届いた絵本のポップを書いていると、スマホに着信があった。
玲伊さんからのメールだ。
『今日はお疲れ様。で、疲れているところ悪いんだけど、8時から店に来られるかな。
その時間なら、優ちゃんの施術ができるから』
わたしは『じゃあ、その時間に合わせて夕食を取ります』と返信して、スマホをポケットにしまった。
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