我儘女に転生したよ

B.Branch

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結界でした

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『魔法を使用するにあたり、まず最初に学ばなければならないことは、魔法の危険性である。使用方法を誤れば取り返しの付かない事故に繋がるため、本の知識だけで安易に使用するなどの行為を固く禁ずるものとする。』

先人の言葉は正しかった。
私はこの程身をもって学びました。
知識を持たず危険物を扱う事は、自分だけでなく周りの人々までも被害を及ぼし取り返しの付かない事態を招く事を。

本当に!!
良い子のみんな!魔法は危険だよ!用法用量を守って正しくお使いくださいだよ!

私は用法用量を全く守らなかった。
適当な扱い方と込めすぎた魔力により引き起こされた事態は血の気の引くものだった。

ベルタは折良く(悪く?)テラスに出る扉を開けようとして衝撃の光景を見てしまったらしい。
恐慌をきたして暫く行動できなくても仕方がないところを、ベルタは即座に私の元に駆けつけてくれた。
姐さん!流石です!

事態を全く把握していない私に、ベルタは後ろを見るように促してきた。
ベルタの蒼白で切迫した表情に嫌でも深刻な事態が予測され、私はビクビクしながら振り向いた。
そこには木漏れ日の降り注ぐ緑が広がっているはずだった。少なくとも先程まではそうだった。

だが、、、

私は絶句した。馬鹿みたいに口をポカンと開け、その光景を見ていた。
自分が何を見ているのか理解できなかったのだ。

そこには何も無かった。
"焦土と化していた"、という方がまだましだったかも知れない。
文字通り何も無い「」の世界。生物の気配さえ感じられない、只真っ白な空間が広がっていた。

「奥様、気をしっかりお持ちください!」

完全にフリーズ状態だった私は、ベルタの言葉にハッと我に返った。

「疑問は多々ございますが、ずすべき事は一つです!奥様、この魔法の解除をお願いいたします」

「か、解除?」

「はい、これは奥様が魔法を使われた結果という事で間違いございませんよね?ならば、解除が出来るはずです」

冷静なベルタの言葉にやっと止まっていた思考が動き出す。

解除、魔法の解除?そんなのどうすればいいの?

まさかこんな事になるなんて、、、いや、今は悔やんでいる時では無い。無事に解除できれば、ベルタが存分にその冷気でもって愚かな振る舞いを後悔させてくれるだろう。
こ、怖すぎる。でも、自業自得としか言いようが無いので、甘んじて受けるべきだろう。

よし、私は魔法をかける時どうした?
魔力を意識し、そして、、、鍵を掛けた・・・・・・

つまり、そう!掛けたなら、開ければいい、はずだ。そうだよね?それしかない!

私は即座に我が身に魔力を纏わせると、鍵を持ち、開く方向にカチリと回す。
神様、お願いします!どうか私達を愛する者のいる世界に戻してください!お願いします!
祈りながら、知らず知らずのうちにつむっていた瞼をそっと開く。

「戻った、、、」

いつもの見知った庭園の景色を見て、私はへなへなとその場に崩れ落ちた。

「奥様!大丈夫ですか!?」

駆け寄ってきたベルタが、手を貸して私を椅子に座らせてくれる。
何とか冷静さを取り戻した私は、今すべき事に気付く。

「ベルタ、館にいた者達の安否を至急確認しなければなりません」

「畏まりました。奥様はここにいらしてください」

ベルタは安堵の表情を引き締め、図書室を後にした。

「ヴィアベル、、、」

本館に居たので無事な事は分かっているが、無性に顔を見て抱きしめたくなる。
しかし、急に会いに行っても、ヴィアベルに無用の心配をさせるだけなので自重する。

暫くすると、ベルタが茶器を持って図書室に戻ってきた。
結論から言うと、皆無事だった。館も周囲の様子も変わりないとの事だった。
そして、驚いた事に、なんと誰も異変に気付いていなかった。
かなりの時間が経過した様に感じていたが、実際には5分程しか経過していなかったことが幸いした。
その為、陽光館を出ようとした者や窓の外を覗き込んだ者がいなかったのだ。

良かった。本当に良かった。
皆が無事であった事もしかり、戻ってこれた事、更にはベルタだけが気付いた事は幸運だったとしか言いようが無い。
神様ありがとう!ベルタ様、本当に本当にありがとう!

それにしてもあれは何だったのか、という疑問が残る。
私は初級魔法の手引書である『魔法入門』を脇に置き、あの現象の答えを見つけようと本棚の前に立った。
すると、私のスキル効果で1冊の本が光り出す。

これに答えが書かれているのかな?
光った本を手に取り表紙を見ると、著者は建国の英雄である魔法使いイェルク・バルシュミーデだった。

早速読み進めてみる。
感想は、分厚い!字が小さい!目次も索引もない!というものだった。この世界の作者さん!目次は必要だよ!
挿絵も無いので内容を察する事も出来ない。
読むしか無い。只々読む読む読み続ける。

め、目が痛い。眼精疲労とドライアイかな、、、
後で目薬が作れるか確認しよう。
だが、今は読み進む。
これで内容がつまらなかったら最悪だが、少し物語性もあり興味深い読み物だった。

あ、これかな?
半ばまで読み進み、やっと目当ての記述がある文章を見つけた。
よく読んでみると、私の魔法は一応当初の予定通り"結界"の部類に入るものだった。

曰く、"次元結界"。

この世界とは別の次元に対象物を切り離し、外からの干渉を受けないようにする。
だが、使用するにはかなりの魔力が必要な為、実現可能な魔法であるとの認識は低い。
イェルクが使用できたかについては書かれていなかった。

本はその危険性にも触れていた。
勿論"次元結界"は初心者が手に出すようなものではない。まあ、普通はやろうとしても出来ない。
生半可な魔力で使用すれば、成功したとしても戻ってこれなかった可能性もある。
次元の牢獄に閉じ込められ、一生出てこれなかったかも知れないのだ。
しかも、範囲が大きくなればなる程魔力を消費する。
屋敷全体などという設定をするのは、馬鹿の所業だ。

皆を巻き込んで本当に申し訳ないです。
肩を落としてながら本を閉じると、ベルタがお茶を入れ直してくれる。

「ベルタ、今日は迷惑を掛けて本当にごめんなさいね」

「いえ、大事には至りませんでしたので。もうそろそろヴィアベル様が戻られます。テラスにお菓子とお茶のご用意を致しましょうか?」

ベルタが気遣うように言ってくれる。

「ええ、お願い」

少し落ち込んだ気分で図書室からテラスの方に移動していると、前からヴィアベルが走り寄ってきた。

「お母様!ただいま戻りました」

「ヴィアベル、、、」

私はヴィアベルをギュっと抱き締める。

「お母様?」

ヴィアベルはいつもと違う私の様子に戸惑いを見せる。

「何でもないわ。ヴィアベルに会えて嬉しかっただけよ」

「お母様、お母様は僕がお側で必ず守ります!僕、男の子ですから!お勉強も剣の稽古も頑張ります!だから、元気出してください!」

優しいヴィアベルが私の不安に反応して、そんな言葉を掛けてくれる。
何度も言います!うちの子いい子!
もう、可愛くて可愛くて仕方ない。
ヴィアベル、将来あなたにお嫁さんが出来たら必ず仲良くすると誓うわ!嫁姑問題であなたを苦しめたりしないよ!安心してね!

よし、しんみりしてばかりも入られません!
魔法は練習して上手くなればいいのです!前進あるのみですよ!
もういっそ建国の魔法使いを目指してもいいかも知れません!フフフッ
 
「奥様、程々にお願いいたします」

ベルタが声を掛けてくる。

う、どうして復活したのがばれたのでしょう?
もしや私は分かり易すぎるの?単純?いやいや、そんなはずはありません、ベルタが敏感なだけでしょう。
今回の事で本当にベルタは凄いと痛感しました。
元より(怖いので)逆らうつもりもありません!姐さん、付いて行きます!
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