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断られてしまった

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「それは絶対にダメだ! 国の為といえど命を犠牲にするなど私は認めん!」
「ですが、私の使命を全うするにはこれしか方法が……」

 カサラス王国が私を呼ぶためにどれ程財宝を費やしたか、国中がどれだけ大変な思いをしているかはよく分かったから覚悟を決めた。

 水の恵みをもたらすために私をここへ連れてきたのなら、喜んでくれると思ったのに、返事は違ったのだ。

「とにかくダメだ! それでは私が一生悔やむことになる。命を捧げれば聖獣を呼び出すことができることはここにいる者以外には絶対に他言するな。良からぬ者がリリアを利用するかもしれんからな」

 私のことを気遣ってくれるような発言は嬉しかった。
「でもこのままでは私はなんのためにカサラス王国に来たのか……」

「何を言っている? 既に十分来た理由がある!」
 まだなにも役に立てていない。
 カルム様が何を言っているのか理解出来なかった。

「私はどうしたら……」
「とにかく、たとえどんな状況であっても、命を捨てることは絶対に許さん。私を苦しめないでくれ。きっとまだ方法があるはずだ」

 とは言ってくれるが、既に詰んでいる。
 切り札の聖女の力が使えないとなれば、ラファエル達の言っていたように無能聖女と思われてしまっても仕方がない。

 せめて湧水でも構わないのだが……。

「リリアよ、もしもこの先聖女としての力を発揮するのが困難だとしても、決して責めるでない。事情はわかっているのだから!」

 どうしようもできないかもしれない状況が伝わってしまったのだろうか。
 カルム様は慰めてくれるのだ。

 だが、私だってこのまま何もできない無能聖女で終わらせる気はない。

「カルム様……。お気持ちは嬉しいのですが、たとえ命懸けになったとしても、水の加護をもたらせる方法をこの先も探していくつもりです」

 強めの口調かつ真剣な眼差しでカルム様に言ったのだ。

 カサラス王国が国の三分の一もの財宝をエウレス皇国に渡してまで私をここへ連れてきてくださった。
 これが私にとってどれほどの救いだったことか。

 ラファエルやマーヤにあれだけ無能だ無能だと言われ続けてきたし、結果を出さなければあの人たちの言うとおりになってしまうではないか。

 私が何とかしなければ!
 決意は変わることはない。

「気持ちは変わらぬ顔をしているか……。リリアの悩みに解決できそうな場所の心当たりがあるにはあるのだがな……」
「え!?」

 カルム様は何故躊躇っているのだろうか。
 遠乗りに行くときに教えてくだされば真っ先にその場所へ向かったというのに……。

「今まで黙っててすまない。だが、その地は危険があるかもしれぬ場所なのだよ」
「危険とは?」
「過去に登山で行った者が相次いで記憶喪失になって帰ってきた。医師に診てもらったところ、登山した時期だけの記憶が消えているらしく、その地に何かあるのではないかという話だ。私自身も過去に調査しようと試みたが、立場上危険な場所に行くなと皆に止められてしまってな。それ以降、秘密にしておくべく侵入禁止にしていたのだ」
「一体どこです?」

 喰い気味に尋ねた。
 それだけ私の調査したい気持ちは固いのだ。
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