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5 ザザンガ視点 なんだと!?

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「ごめん、聞き間違えた気がするからもう一回言ってくれるか?」

「はい。第三王子のマーチル殿下と婚約が決まりましたのでこちらへ帰ってきました。驚きましたか?」

 もちろん驚いている。別の意味で!
 僕は完全に固まってしまった。

「あの……ザザンガさん? 大丈夫ですか? 刺激が強過ぎましたか?」
「あ……あのさ、それって冗談でしょ? ほら、冗談を言って驚かせておいてから実は嘘でしたーっていうようなオチでしょ?」

「まさか……そのようなふざけたことするわけありませんよ。ですが信じ難いのも仕方ありませんよね。わたくしなんかが王子と結婚することになったのですから」

 どうやら嘘ではなさそうだ。
 しかしおかしいではないか。
 先に婚約したのは僕なんだぞ!

「あのさ、エイプリー。まさか僕との約束忘れちゃったわけじゃないよね?」

「約束?」
 エイプリーは首を傾げている。

 おいおいおい……こんな大事な婚約を忘れるってどういうことだよ……。

「五歳のとき、僕が君に『結婚しようね』って言ったら、エイプリーも『うん、約束だよー』って言ってくれて誓い合ったじゃないか」

 僕は真剣に過去の話を伝えた。はっきり言って恥ずかしい。
 これでは僕が今プロポーズしているようなもんだ。

 しかし、エイプリーは手でお腹を抑えてゲラゲラと笑い始めた。

「はっはははは~~! おっかしいっ! ザザンガさんのおかげで思い出しましたわ~」
 思い出せたのならば、順番的には僕の方が先なんだから今すぐにでも王子とは婚約破棄してほしいものだ。

「でもあれって、確かオママゴト中に誓い合っていましたよね~、懐かしいです」
「あれ? そうだったっけ?」

 そこまでの記憶が僕にはない。ただ婚約したことだけを脳裏に叩き込んでいたから……。

「どちらにしても、そんな幼い子供同士での将来を誓い合いましょう~という会話は珍しくありませんよ。それに真剣な話だったならばお父様達も関わってましたよね?」

「……」
「もう、ザザンガさん笑わせないでくださいよ」

「おいおいおい……じゃあ、僕との婚約は……」
「そもそも恋愛感情だってあり得ませんよ。だってザザンガさんのことは仲の良かった幼馴染としてしか見ていませんもの……。ザザンガさんも冗談で言っているのでしょう?」

「え……い、いや。うん、ソウデスネ……」

 エイプリーの笑顔に流されてしまい、否定することができなかった。

「ザザンガさんの演技は素晴らしいですね。でも、昔の頃を思い出せて嬉しかったです。そろそろわたくしは婚約者様と会う約束がありますので、これにて失礼しますね」
「あ……あぁ」

 エイプリーは笑いを堪えているように見えた。そのまますぐに店を出て行ったのだが、僕はそのまましばらくこの場から動くことができなかった。
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