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彼岸花

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 吉田祐樹。それに他の、関係を持っていた過去の面々の面影を脳裏に浮かばせる。

あの忌まわしき高校生活から数年。あの後も、それぞれの人生に多大な影響を及ばし続けていたのだ。中には自殺へと追い込まれたものまでいた。それなのに。

松宮は生きている。流石に自分の罪の重さは分かっているだろうが、それでも生きているのだ。そのことに、拳が震える思いである。



 そして、今こうして松宮と再会し吉田祐樹の家の前にいるのは、彩芽の四十九日が終わったからである。



「祐樹……」

「……久しいね、真也」

「どうしてここに……」

「どうして、か……。それは俺が知りたいさ。なんでその魔女・・と一緒にいるのか」

「……」



 沈黙を貫く。正確には何も答えられなかった。松宮も何も言わない。

しばらくすると、祐樹の方から口を開いた。



「……すまないが、帰ってくれ。何も話すことはない」

「ちょ、待って——」



 バタン。



 閉ざされた扉の向こうから、咆哮。そして何かが壊れる音が、続け様に聴こえる。その音に何も、反応することが出来なかった。













         ◎◎◎













 泊まる予定も立てていなかった俺は、そのまま今の家へと帰ることにした。松宮は何か言いたそうにしていたが、特に何も言わなかった。

やがて駅へと着き、終わりを迎える。



「それじゃあ俺はここで」

「……ねぇ、相葉くん。過去の罪は、どうやっても消せないのかな」

「……しらねぇよ。少なくとも、過去は消せない」

「……そうだよね。そりゃそうだ……ごめん、引き留めて。じゃあね」

「ああ……もう二度と、会うことは無いだろうよ」



 そう捨てて、駅構内へと入っていく。

 自身の罪。大小あれど、消えないという点では変わりないだろう。

だけど本質はそこじゃない。その罪を反省し、贖罪しなければならない。生きて生きて、生き続けて。どんな形であろうとも。

死をもって償おうなどということは許されないのだ。            《了》
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