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2話 不幸の中の幸せ
しおりを挟む「大丈夫ですかソフィア様」
そう言って男の人がベッドに横たわっている私の手を握ってくれた。
閉じ込められて焼かれてから、私はどうなったのか覚えてない。
気がついたら知らない部屋のベッドで寝ていて、母の付き人だった男の人が私の世話を甲斐甲斐しくしてくれてる。
確かいつも母の身の回りをしていた男性の一人だった。
長い金髪のとてもきれいな男の人。
母のお気に入りだとよく、神殿の人が言っていた気がする。
私はよくわからないけれど知らない部屋で寝ていてその人といる。
いままでいた神殿とは全然違う。木でできたとっても小さな部屋。
使用人の住んでいた場所がこんな所だった気がする。
なんで私はこの人とここにいるんだろう?
「今から包帯を取り替えますね。
清潔にして薬を塗りなおします。
回復の魔法もかけますから痛みも和らぎますよ。
包帯を取るときに少しだけ痛むかもしれませんが我慢してください」
男の人がそう言いながら包帯をとりだした。
だから私は「ありがとう」って言いたいけれど声もでない。
喉が焼けるように熱くて痛い。きっとあの炎に焼かれたから。
男の人が包帯をとるたびに、包帯にくっついてた皮膚がぺりってして痛みがあってひりひりする。
自分の手を見ると焼きただれてとても酷い状態だった。
私、やっぱり焼かれたんだ。そして生きてた。
でも、こんな状態で生きて何になるのかな。
黒いのと赤黒い肌に本当に自分の肌なのかと目を瞑りたくなる。
全身がきしむように痛いし、しゃべれないし、動けない。
これなら死んだ方がよかったのかな。
ひょっとしたら、火傷で一生私が苦しむようにお母さまとデイジアは私をここに連れ戻したのかもしれない。
そう思ったら、涙がでてきた。
なんで? 私が一体何をしたの?
ちゃんとお母さまのいいつけはいつもいい子に守ってた。
一生懸命愛してもらえるように勉強も、お手伝いも、聖女の修行もやっていたよ。
どんなに手を伸ばしても、お母さまは汚いものを見る目で私を睨むだけ。
私はなんで愛してもらえないのだろう。
うぇっぐと嗚咽がもれるたび、ふるえて喉と全身がとても痛い。
痛みに泣きたくなるけど泣くと痛くて、もう頭がおかしくなりそうだった。
「……ソフィア様、泣かないでください。動くと痛みます。
必ず私が傷を治しますから。だから少しの間だけ我慢してください」
男の人が言うけれど、何でそこまでしてくれるの?
魔法をかけてくれる男の人は泣いていて、私の事をとても心配してくれるのがわかった。
私のために泣いてくれてる……?
そう思うとなぜか心の中がぽわっとした。
そして何より不思議だったのが、全身焼けるようなつきさす痛みよりも、私を心配してくれる存在がいてくれた事に涙があふれた。
不思議だね。
身体は焼きただれてすごく痛いのに。
今が一番幸せだよ。
たとえこの幸せが一時のもので、痛みで苦しくて死にたくなっても、もしーー死んでしまっても。
この気持ちだけはずーっと消えませんように。
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