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1章

宰相視点(前)

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 皆様、はじめまして。
 私は、ライラット王国の宰相のウィリアム・ノア・アレクサンダーです。
 
 つい先日あった出来事をお話します。

 ある日の夜遅く。
 私は、王宮の仕事を終え、屋敷に帰りました。
 屋敷に帰ると玄関の前には、10歳前後と思われる少女を抱えた騎士らしき男がいたのです。

 その男は、抱えている少女がよほど大切な人らしく、ずっと、
「大丈夫ですよ。私があの方達の代わりに側にいますから。」
 と、優しい声で囁いていたのです。

 ですが、私の姿に気がつくと、少女に振動を与えぬよう、慎重に、気をつけながらこちらに向かってきました。

 その男は、私の側に来ると、軽く一礼をしたあと、事情を説明しはじめました。

 「宰相様。どうか、この御無礼をお許しください。そして、どうか、私の話を聞いていただけないでしょうか?」

 私は、初めは警備をしている騎士を呼ぼうかと考えていました。
 ですが、どうしても、彼が抱えている少女のことが気になり、彼の話を聞いてみることにしました。

 「いいでしょう。話してみてください。」
 と、私が言うと彼は話し出しました。

 「はい。どうか、私の抱えているお嬢様を、助けていただけないでしょうか?
 このお方は、私の〝本当の御主人様〟の大切な方なのです。もう少しで、御主人とみんなの元へと帰ることが出来たのに......あの家族は.........」

 彼は、そう言って虫唾が走っているような表情を見せました。

 「もう、頼れる方が宰相様しかいないのです。私は、どうにか、あの屋敷からお嬢様を連れ出すことができました。でも、大切な......私達の大切なお嬢様とあの方々からの〝証〟である金色の瞳を守ることができませんでした。それに、もうそろそろお嬢様の命が尽きようとしているのです!!お願いたします、お嬢様を助けてください。」

 私は、この話を聞きながら、少女のことを考えていた。
 彼にはそれが、助けることを拒もうとしているように、見えてしまったらしく、まさかのことを言ってきた。

「助けていただいた暁には、我がデーヴィド帝国の皇帝へと、進言させていただく所存であります。」
 と、彼は言った。

 私は、ハッ!!とした。彼は、今、間違いなく〝デーヴィド帝国〟と言ったのだ。
 そういえば、あと約1週間後くらいに、帝国から皇帝様、皇妃様、皇太子様がいらっしゃるはず......

 もしかして、この少女が、父と母から、
「この国では伝わっていないがお前は、知っておかなければならない。」
 と、聞かされていた、

 〝寵愛されし子〟なのだろうか?

 帝国の人々にも愛されているのだから、そうなのだろう。
 ならば、助けない訳にはいかない。

 「わかった。今、王国一の医者でを呼ぶ。その医者は王国一と、呼ばれるほど腕もいいし、私の幼馴染みだから信頼できる。」

 「とりあえず、君が抱えているお嬢様を1番安全な私の部屋へ連れて行こう。外にずっといては、彼女も辛いだろう?君も、一緒にきて詳しく事情を教えて欲しいのだが......。」

 そう言うと彼は微笑み、「はいっ!!」と、目に涙を浮かべながら返事をしたのです。
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