【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki

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第五章  忘れられし過去の記憶

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 こうして幾度も世界の中へと入り込みオズと語らう中で感じるもの。

 何時から時の流れは己が意思を持ったのであろうか。


 いやそれは違う。
 ただ妾自身の感覚に変化が齎されたのであろう。

 抑々妾達神に人間や動物達の様な死や限られし生命と言うものは存在しない。

 時間の流れとはあってない様なもの。

 父母より与えられし世界を守護する存在。

 その事に不満を抱いた事は一切ない。
 神として生を受けたのだ。
 誕生したばかりの世界を正しく導く……妾達にとってこれ以上の喜びはない。

 故に神として未だ力を発現出来ずにいる末の妹を哀れに思う。
 
 姉として少しでも早く力を発現出来る事を切に願う。
 何時か神としての幸せを知って欲しいと……な。

 したが最近になり今までの妾と違う妾が存在しておる事に気づく。

 あぁ何も妾が分裂し二つに分かれた訳ではない。
 表面上妾は何も変わった所は何一つ……ない。
 だが妾の心の一部分と言うものが明らかに変わってしまったらしい。
 またその原因となるものもわかっておるのだ。

 オズ、オスヴァルトの存在が妾の心を可笑しくさせてしまう。

 アレと過ごす時間は瞬きする間もない程に短く思え、いや実際に短いのだ。
 最もあれと接すれば腹立たしい事の方が沢山あると言うのにも拘らず、何故か妾の中ではそれすらも楽しいと感じてしまう。

 解せぬ。
 とは申せ反対にこうしてオズと会わず、神として外より生きている時間を見守るのは何と長い事よ。

 元々妾は時の流れにすら興味を持った事はなかった。
 時に縛られる事もなければ、縛る必要を感じる事もなかったのだ。
 なのに何故こんなにも時を気にしてしまう。
 どうしてオズの事ばかりを考えてしまう。
 そうして気づけば、禁忌ではないとは言え妾は世界の中へと頻繁に入り込んでいく。




「お前は何時も突然現れたかと思えばだ。何故突然消えてしまう。突然消えられた時の俺の気持ちを少しは察しろ」

 あれ程悶々と妾が慣れぬ感情に悩みに悩んでおったと申すのに、これ以上何を察しろと言うのだ。

 しかしオズの顔、オズの声を聴くだけで妾の心が温かく満たされていく。
 多少の問題等些事ではないのかと思ってしまう。
 我ながら全く現金な性格だと思う。
 この様な執着等今までに一度もなかった筈なのに……?
 
 いやこれが執着なの……か?

「聞いているのかルル!!」
「あ、あぁ聞こえておる」

 オズの怒鳴り声でさえも心地良いと思う妾は既に何かの病に罹っておるのだろうか。
 まぁ妾は不老不死故に病に罹る事はないのだがな。

「聞こえているのであれば返事をしろ」
「わかった」

 一々相槌を打たねばいけないのだな。
 コミュニケーションとは存外難しい。

「あーいやな、俺も周りからそろそろと言われているんだ」
「何をだ?」

 変な奴。
 まぁ何時もこいつは変ではある。
 神である妾の気を引く時点で生き物として変わっておるのやもしれぬ。

「あぁ、そうだな。その……」

 いや、特に今のオズは変だな。
 譬えるならば噴火寸前の山の様に顔を、いや身体中を真っ赤にさせれば蒸気?
 蒸気を発して?
 いや湯気は出てはおらぬか?

 確か人間を創造した際に、山の要素を加えた覚えはないのだがの。
 
 それともオズだけが突然変異的な人間なのか⁉
 それ故に妾は奴に惹かれたのだろうか。
 

 何度も妾へ視線を向けては逸らすを繰り返す。
 その行動に何を意味するのであろうと妾は心の中で考えるのだが全く答えは出てこない。
 そんな妾を見てははあ……と何やら大きな溜息を吐くなんて、本当に何処までも失礼な奴だな。
 何度も繰り返されるその様子を見ていると何やら物凄く腹が立ってきた。

「何も用がなければ妾は帰るぞ」

 妾自身も何に腹を立てておるのかと問われれば実際によくはわからぬ。
 だが返ってその歯痒さに益々苛立ちは高まっていく。

 オズだけではない。
 妾自身の心の変化に戸惑う余りついにだ。
 つい目の前にいるオズへ愚かにも当たってしまう。
 オズへ当たった所で何も解決はしないと頭ではわかっておると言うのに……だ。

 何よりもと言いつつ、心の中ではまだ帰りたくないと切に訴えている。

 心で思う事と真逆な態度に妾は益々自己嫌悪へ陥ってしまう。
 やはりこの様に心の整理が出来ていないままではいけない。
 このままここにおればきっとオズを傷つけてしまう。
 それだけは何があっても嫌だ。

「――――帰る」

 オズの顔を見ずそのまま空へ逃げ帰ろうとすればだ。

「帰さない!!」

 妾の腕をオズに掴まれたと理解した瞬間ぐいっと強引に引き寄せられたかと思えばだ。
 そのままオズの腕の中へ妾は囚われてしまった。

 まるで羽ばたく為の鳥の羽根を切られてしまった瞬間だったのやもしれぬ。
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