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第五章 忘れられし過去の記憶
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しおりを挟む「何……を?」
ただ腕の中へ囚われただけであろうと言うのにだ。
妾の身体へ触れるオズの逞しい腕や胸より伝わるのは火傷しそうな程の熱。
こんなにも人間の身体とは熱い……もの、なのか?
人間の構造上あり得ないと頭では理解をしている。
だが理解と触れ合う肌より伝わる現実は全く異なる。
またこれ以上オズと触れ合うのは危険だと心の奥で警鐘が鳴っている。
そう地上へ、オズと切れない鎖で永遠に繋がれてしまう。
何を馬鹿な……と頭をふるふると左右に振る。
だが現実にオズの腕の中でたった一言、然も絞り出す様なか細い声でしか反論……すらもなってはいない。
「俺の傍にいてくれ。絶対に後悔はさせない!! 誰よりも幸せに――――」
ぎゅうぎゅうと力任せに抱き締められればだ。
余りの力強さに全身の骨が木っ端微塵になるのかと妾は思った。
いや実際に骨の軋む悲鳴が聞こえたぞ。
身体だけではなく声音までも熱を孕み耳元で熱く囁かれれば、妾の仮初の身体の下半身の奥より何とも言い難いじくじくとした熱が蓄積されていく。
まるでオズの熱が伝染したかの様な錯覚に陥った時だった。
「やめてえええええええええ!!」
「コリン、ナ?」
「…………」
ぽかんとした、何とも阿呆な表情のオズ。
妾はオズの見つめる方へ、この頑丈な檻より未だ抜け出す事も出来ない中で必死に足掻き、漸く出来たであろう小さな隙間よりそっと視線を向ければ……一人の人間の雌がいた。
オズと同じ紺碧の海の瞳とアッシュブラウンの長い髪を持つ雌――――いや女だな。
ただ何であろう。
この人間の女は何か普通の者と違う感じが……。
「コリンナどうしてここへ」
何だこの感じと言うのか関係性は?
何故その様にオロオロとする。
見苦しいぞオズ。
それともそこな女とは何か関係でもあるのか?
二人の様子を見てなんとも胸がモヤモヤとしてしまう。
そっと胸に手を当てるもモヤっとする感じは消える事はない。
理由等は全くわからない。
ただ妾はこの状態を善しと思ってはいないと言う事。
この女の登場によりオズが明らかに狼狽えているこの状況が好ましくないと素直に思った。
そしてこの場より今直ぐ立ち去りたいと思った瞬間――――⁉
「汚らわしい人間の雄よ。今直ぐその汚らわしい身体をお姉様より離れるがよい!!」
ドン!!
「ぐはっ⁉」
「オズ⁉」
凄まじい力により一瞬にしてオズは10m先へと飛ばされてしまった。
このコリンナと呼ばれし人間の女は指一本たりとも動かしてはいない。
いや、この力は抑々人間のものではない。
人間ではなく妾の持――――。
「ルル姉様!!」
「はい?」
自由になった妾の身体へとがっしりと強く抱きつくコリンナ。
コリンナは瞳をうるうるさせれば妾を姉と呼ぶ。
妾を姉と呼び慕う者はたった一人。
だがアレはまだ力を顕現させては……いや待て。
今目の前でオズを吹っ飛ばしたあの力は……。
「そなた、まさかとは思うがリーゼなのか」
「はい、姉様の大切な妹のリーゼに御座います。ああずっとお逢いしたかった私の愛しいお姉様!!」
何とリーゼも力を顕現させ成体となったのか。
姉として嬉しくもあるがしかし何故なのだろう。
妾はリーゼの持つ力の源へ、何か大きな疑問と不安を抱いてしまったのだ。
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