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ルルシアの記憶は呪法により封印され、新たな記憶が植え付けられた。
その記憶からレインは賊に見えていた。
「ルル・・・大丈夫か?」
「盗賊が私の名前を気安く呼ばないでくれますかね?」
「ルルっ!?」
ルルシアは幼少期からひとりぼっちで、悪逆皇帝が終戦時に討たれたことでリリノアールがその尻拭いをしたという記憶が植え付けられている。
実際は皇帝は良心的な人間であり、リリノアールは裏で暗躍していた。
「ルルにこんなことをして目的はなんや!」
「チャリオット。彼を殺したのは私よ?」
「なんやて!?」
チャリオットの名を出してもルルシアが動揺しないのは、チャリオットという名前がレインの父親の名前と認識されているからだった。
「なんでワイにバラした」
「えぇ、せめてもの冥土の土産よ。その歳で命を落とすんだもの!慈悲深い私に感謝しなさい。ルル、ハクビシンで彼を痺れさせてあげなさい」
「わかりましたハクビシン」
ルルシアが覚えた上級魔法改や皇帝チャリオットが個人的に教えた上級魔法レオーネ以外は、リリノアールの命令で発動することが出来た。
しかしルルシアは呪法で記憶を改変されてもなお胸がチクリと痛み、レインへの攻撃をはずしてしまった。
レインもルルシアの状況を正確に察してその場から木を足場にして離脱する。
「ルル、何かされたんは間違いないがワイをワイと認識できてへん。しかしあの正確な魔力コントロールで魔法を放ってたあいつが外すって事は多分完全には堕ちてへん」
しかしそこであることに気づく。
このままではルルシアが完全にリリノアールの支配下に落ちるのではないかと。
「それだけはダメや」
「えぇ、貴方の性格なら、貴方達の関係ならそうすると思ったわぁ」
「リリノアーーー!?」
咄嗟のことで受け身を取るが、とある理由でバランスを崩してそのまま落下した。
レインも予想のできたことだったが、邪魔をしたのはルルシアだった。
「ルル・・・」
「賊が気安く私を呼ばないで!」
しかしルルシアは言動とは裏腹に涙を流していた。
まるでこんなことしたくないかのように。
「賊が!賊なのよね?本当に賊?」
「ルル、目を覚ませ!」
「ダメよルル!彼はそうやって貴方の幼馴染を装って魅了しようとしてるのよ!」
「魅了?」
「そうよ!効果の薄い魅了でももしかしたらと思わせれば貴女の動きを鈍らせられるもの!」
「ルル、お前さんは・・・」
「うわぁぁぁぁ!」
ルルシアは錯乱し魔法を四方八方に発動した。
ホーネットやハクビシン、色々な魔法を放つも魔法が直接当たらない。
リリノアールは苛立ち、レインは笑う。
「ルル、落ち着けや。あとはなんとかしたるから、今は落ち着け」
「貴方は・・・誰なの?」
「ワイはレイン。お前さんの親友の婚約者や」
ルルシアは膝を突き、その場にうなだれる。
そしてリリノアールの方を向きレインは剣を構えた。
「リリノアール、お前さんを倒せばルルは解放される」
「解放?バカ言わないで賊が!」
先ほど生贄儀式は効力が斬れて使えなかった。
しかしリリノアールも騎士でもあった皇帝を不意打ちで殺せるくらいには体術を嗜んでいる。
それでも、帝国で最強と言わしめるレインの剣技には追いつけず、後手に回ることになり腹に掌底を叩き込まれた。
「がっ!」
「その程度でよくワイを殺そうと思たな。グイドのが強力過ぎたで」
「ふふっ、でしょうね」
追い詰めているというのに不敵な笑みを絶やさないリリノアールに何か違和感を覚えるレイン。
周囲の気配を探り、そしてその理由がわかってしまう。
それはターゲットがルルシアに向けられた設置型の呪法。
地面から黒い物体が映えてきて、そのままルルシアへと回転しながら向かって行く。
「んな!?」
「ふふっ」
「させへんで!」
レインは間一髪のところで剣でそれを防いだ。
しかし、その呪法はひとつではなかった。
もう一つの呪法がルルシアに向かって行く。
このままでは当たってしまう。
決断した結果、レインは呪法とルルシアの間に身体を挟むことで攻撃を止めた。
もちろん腹には大きな風穴をあけて。
「ごぼっ・・・」
「え?どうして?」
「ルル、ワイはお前に全てを託す。自分を責めんなよ」
魔法が解けるとその場にレインが倒れた。
賊が倒れたはずなのに、涙が止まらなかった。
なんで庇ったのかわからない。
「やるわね」
「え?」
「賊は幼いこの子を洗脳して、貴女を陥れようとしていたんだわ」
記憶操作の呪法は長い年月一緒に居た者にしか使えず、一度使ってしまうと同じ手順を踏まないと記憶操作はできない。
故に誤魔化す必要があったのだ。
「洗脳ですか?魔法に洗脳なんてものはなかったはず」
「えぇ。だから幻惑で彼を騙していたのでしょうね。賊のような真似事をさせるなんて、本当にいじらしいわね。彼は貴女を庇うほどに大事な人の幻影を見せられていたのよ」
「そんな・・・でも確かに彼は私を庇った。でもさっきのは一体なんなのでしょうか?見たことのない魔法でした」
「恐らく賊の固有の魔法でしょうね。そうやって貴女を庇う様に仕向けた」
「なんて酷いの!私と同い年くらいの子に!」
ルルシアはリリノアールが味方と思って居るので、攻撃を仕掛けたのがリリノアールだとは気づかない。
「貴女は優しい子よ。だって見ず知らずの彼の境遇を直感でわかって涙を流しているんだもの」
「この涙は・・・そういうことだったのですか?」
ルルシアの頬の涙を拭い取り、そして笑顔を見せる。
「えぇ。彼を埋葬しましょう。せめてもの手向けです」
「わかりました」
こうしてレインはその場で埋葬され、その所在を知られる心配とルルシアの疑念の払拭を同時に行った。
天の架け橋崩壊まで残り5人。
その記憶からレインは賊に見えていた。
「ルル・・・大丈夫か?」
「盗賊が私の名前を気安く呼ばないでくれますかね?」
「ルルっ!?」
ルルシアは幼少期からひとりぼっちで、悪逆皇帝が終戦時に討たれたことでリリノアールがその尻拭いをしたという記憶が植え付けられている。
実際は皇帝は良心的な人間であり、リリノアールは裏で暗躍していた。
「ルルにこんなことをして目的はなんや!」
「チャリオット。彼を殺したのは私よ?」
「なんやて!?」
チャリオットの名を出してもルルシアが動揺しないのは、チャリオットという名前がレインの父親の名前と認識されているからだった。
「なんでワイにバラした」
「えぇ、せめてもの冥土の土産よ。その歳で命を落とすんだもの!慈悲深い私に感謝しなさい。ルル、ハクビシンで彼を痺れさせてあげなさい」
「わかりましたハクビシン」
ルルシアが覚えた上級魔法改や皇帝チャリオットが個人的に教えた上級魔法レオーネ以外は、リリノアールの命令で発動することが出来た。
しかしルルシアは呪法で記憶を改変されてもなお胸がチクリと痛み、レインへの攻撃をはずしてしまった。
レインもルルシアの状況を正確に察してその場から木を足場にして離脱する。
「ルル、何かされたんは間違いないがワイをワイと認識できてへん。しかしあの正確な魔力コントロールで魔法を放ってたあいつが外すって事は多分完全には堕ちてへん」
しかしそこであることに気づく。
このままではルルシアが完全にリリノアールの支配下に落ちるのではないかと。
「それだけはダメや」
「えぇ、貴方の性格なら、貴方達の関係ならそうすると思ったわぁ」
「リリノアーーー!?」
咄嗟のことで受け身を取るが、とある理由でバランスを崩してそのまま落下した。
レインも予想のできたことだったが、邪魔をしたのはルルシアだった。
「ルル・・・」
「賊が気安く私を呼ばないで!」
しかしルルシアは言動とは裏腹に涙を流していた。
まるでこんなことしたくないかのように。
「賊が!賊なのよね?本当に賊?」
「ルル、目を覚ませ!」
「ダメよルル!彼はそうやって貴方の幼馴染を装って魅了しようとしてるのよ!」
「魅了?」
「そうよ!効果の薄い魅了でももしかしたらと思わせれば貴女の動きを鈍らせられるもの!」
「ルル、お前さんは・・・」
「うわぁぁぁぁ!」
ルルシアは錯乱し魔法を四方八方に発動した。
ホーネットやハクビシン、色々な魔法を放つも魔法が直接当たらない。
リリノアールは苛立ち、レインは笑う。
「ルル、落ち着けや。あとはなんとかしたるから、今は落ち着け」
「貴方は・・・誰なの?」
「ワイはレイン。お前さんの親友の婚約者や」
ルルシアは膝を突き、その場にうなだれる。
そしてリリノアールの方を向きレインは剣を構えた。
「リリノアール、お前さんを倒せばルルは解放される」
「解放?バカ言わないで賊が!」
先ほど生贄儀式は効力が斬れて使えなかった。
しかしリリノアールも騎士でもあった皇帝を不意打ちで殺せるくらいには体術を嗜んでいる。
それでも、帝国で最強と言わしめるレインの剣技には追いつけず、後手に回ることになり腹に掌底を叩き込まれた。
「がっ!」
「その程度でよくワイを殺そうと思たな。グイドのが強力過ぎたで」
「ふふっ、でしょうね」
追い詰めているというのに不敵な笑みを絶やさないリリノアールに何か違和感を覚えるレイン。
周囲の気配を探り、そしてその理由がわかってしまう。
それはターゲットがルルシアに向けられた設置型の呪法。
地面から黒い物体が映えてきて、そのままルルシアへと回転しながら向かって行く。
「んな!?」
「ふふっ」
「させへんで!」
レインは間一髪のところで剣でそれを防いだ。
しかし、その呪法はひとつではなかった。
もう一つの呪法がルルシアに向かって行く。
このままでは当たってしまう。
決断した結果、レインは呪法とルルシアの間に身体を挟むことで攻撃を止めた。
もちろん腹には大きな風穴をあけて。
「ごぼっ・・・」
「え?どうして?」
「ルル、ワイはお前に全てを託す。自分を責めんなよ」
魔法が解けるとその場にレインが倒れた。
賊が倒れたはずなのに、涙が止まらなかった。
なんで庇ったのかわからない。
「やるわね」
「え?」
「賊は幼いこの子を洗脳して、貴女を陥れようとしていたんだわ」
記憶操作の呪法は長い年月一緒に居た者にしか使えず、一度使ってしまうと同じ手順を踏まないと記憶操作はできない。
故に誤魔化す必要があったのだ。
「洗脳ですか?魔法に洗脳なんてものはなかったはず」
「えぇ。だから幻惑で彼を騙していたのでしょうね。賊のような真似事をさせるなんて、本当にいじらしいわね。彼は貴女を庇うほどに大事な人の幻影を見せられていたのよ」
「そんな・・・でも確かに彼は私を庇った。でもさっきのは一体なんなのでしょうか?見たことのない魔法でした」
「恐らく賊の固有の魔法でしょうね。そうやって貴女を庇う様に仕向けた」
「なんて酷いの!私と同い年くらいの子に!」
ルルシアはリリノアールが味方と思って居るので、攻撃を仕掛けたのがリリノアールだとは気づかない。
「貴女は優しい子よ。だって見ず知らずの彼の境遇を直感でわかって涙を流しているんだもの」
「この涙は・・・そういうことだったのですか?」
ルルシアの頬の涙を拭い取り、そして笑顔を見せる。
「えぇ。彼を埋葬しましょう。せめてもの手向けです」
「わかりました」
こうしてレインはその場で埋葬され、その所在を知られる心配とルルシアの疑念の払拭を同時に行った。
天の架け橋崩壊まで残り5人。
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