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告白① 再びリゼル視点に戻ります
しおりを挟む君もそうなんだろう?
今、そう言った?
「君もって……フランツ、あなた……」
「やっぱりそうなんだね……ああ、リズ……!君にもう一度名前を呼んでもらえる日がくるなんて……」
そう言われて初めて、うっかり以前の呼び方で彼を呼んでしまったことに気が付いた。
フランツは安堵したように微笑み、再び私をしっかりと自身の腕の中に抱き込む。
理解が追い付かない。
巻き戻ったのは自分だけだと思っていた私はひどく混乱していた。
「最初はなにが起きたのか理解できなかった……だが気づいたらあの式典の中にいて……」
式典……?
ということは、彼は私とほぼ同じ時間に巻き戻ったの?
まさか、そんな奇跡のようなこと、有り得るの?
しかしフランツの声はまだ震えていて、その真剣な様子からは、とても嘘をついているようには見えない。
「リズ、どうか顔を見せて……?」
どうしたらいいのかわからず、彼の腕の中でじっと動かずにいる私の頬を、大きな手が包むように触れ、上を向かせた。
初めて彼に恋をしたあの日とまったく同じ、美しい顔と紫の瞳がそこにある。
唯一違うのは、私を見つめる彼の表情だ。
彼がこんな風に私に向かって微笑むのを見たのは初めてのことではないだろうか。
本当に、本当に彼はあのフランツなの?
「……式典の日の夜、私の腕の中で言ったことを覚えてる?あの言葉で気づいたんだ。君の時間も巻き戻ったんだって」
「あの夜のことは……覚えていません」
「嘘だ」
いやそれは嘘じゃない。
本当に覚えていないのだ。
けれど、その理由が“泥酔しすぎて正気じゃなかった”なんて、絶対に言いたくない。
だがいつまで経っても否定しない私を見て、フランツは再び顔を歪めた。
「どうして……どうして君はいつも本当のことを言ってくれないんだ……だから、だから私は……!頼むから、本当のことを言ってくれ!」
『いつも本当のことをなにも言わない』って……それはどっちの私に対して言ってるの?
過去?それとも現在?
「お願いだリズ!ちゃんと教えてくれ!」
フランツは両手で私の肩を掴んだ。
──しつこい
「だから!!飲み過ぎて!!本当に覚えてないんだってば!!」
あまりに真剣なフランツの様子に気圧されるも、つい大きな声で言い返してしまった。
フランツの瞳は、まるで珍獣でも見たかのように、驚きに満ちている。
「泥酔しすぎて、あなたに抱えられて退場したことも後で知ったの!本当よ!こんな恥ずかしいこと、女性に言わせないでよ。もう!」
「泥酔……確かにかなり酔っていたけど……本当になにも覚えてないの?」
私は恥ずかしいやら腹立たしいやら。
ふくれっ面で頷いた。
「私に愛してるって、言ってくれたことも?」
「あ、あ、あ、あいしてる!?誰がいったいそんなことを……!」
「君が。私に言ってくれたんだよ」
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