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酒は呑んでも飲まれるな、もしくは、後悔先に立たず?

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 前にいるほうの男の人が一層大きい獣みたいな声を出したら、おいしそうと思って皿に盛っていた食べ物にびしゃびしゃと白濁がかかった。
 瞬時に思った、食べられなくなっちゃった。


 ぼくのきゅうり……。




 で、酒が入って正気でないおじさんから。
 日陰の坊主もかっぱだろー。
 大きくなったらこんなことするんだろー。
 あんなに腰振っちゃって、若いっていいねー。



 なんて言われて、しない、しない、絶対しないもん! と泣きながら言う典理を囲んで、悪ふざけをした大人たちがこう言ったのだ。


「河童ていうのは、みんなおなじだろ。知ってるかエロ河童って言葉があるんだぞー。エロダイダラボッチとか、エロぬらりひょんとか聞かないだろ? ほーらやっぱり典理もおんなじだぁ。大きくなったらおじさんも誘ってくれよ」


 おじさんも予約するとたくさんに詰め寄られ伸びてくる手を払いのけまくり、典理がわんわん泣くと典理の親が酒の卓を真っ二つにして一遍死んで来いと一睨みを利かせ、そのセクハラ地獄から助けてくれるまでわんわん泣いた。


 いや、助けられた後もえんえん泣いた。お酒も怖いし、河童も怖い。



 典理の親はダイダラボッチなのだ。



 その日から子どもは大人の酒宴に入れないように議会で制定されたし、妖怪ハラスメントも条例で取り締まられるようになった。


 どの場所にもああいう害がいるんだよと吐き捨てるように言ったダイダラボッチの母は、そのハラスメント親父を見つけるといつも親指を首元にやって横にひき、そして親指を下に向けていた。



 典理の母は典子というが、ふもとじゃ有名な血塗れ典子だと典理が知るのはもっと後だ。

 典理の父は理というが、ふもとじゃ有名な仏の理だと知って納得した。


 因みに大木で作った酒の卓を真っ二つにしたのは典子ではない。
 理の方である。
 無言で真っ二つ。
 仏の顔は三度もないらしい。



 くんずほぐれつしていた河童さんはそのまま、多分理によって酒卓から投げ出されていたと思う。でもまだ、アンアンしていたのでさらに怖くなって理の手の中に典理はうずくまることにした。


 ハラスメント親父たちは村中に、自分の家族たちにもかなりこってり絞られて、現在では奉仕活動のし過ぎで悟りを開いたようになっている。


 皆、気のいいおじさん、おじいさんになった。


 それでも典理はあんまり近寄らないが。
 あの時に伸びてきた腕を思うと、近寄りたいとは思わない。


 だから典理は知らないままだが、おじさんたちは村中に絞られ、家族にも絞られ、変態、モラルのかけらもない妖怪の片隅にも置けないくず、犯罪者スレスレのレッテルを張られたことももちろん堪えた。


 しかし、一番堪えたのは可愛い可愛い典理に嫌われたことだということに。



 村で一番素直でかわいい、河童の子ども。

 笑う顔もかわいいが、泣く顔もかわいくてついついやりすぎたのだとセクハラおやじの一人が言っていた。



 典子と理の息子だからと言って肝が据わっているわけではないのだ。
 むしろ両方の可愛い部分しか受け継がなかった。


 そんな子どもを傷つけてしまったことはいくら反省しても、もう取り戻せないのだ。
 そりゃ悟りも開くかと典理のかかりつけ医は好々爺然とした親父たちを見て思っている。





 因みに子どもに対してそういった性的なものを見させるのはもちろん犯罪であるので、警察に突き出されなかっただけありがたいと思ってほしいものだと理は思っている。
 酒は呑んでも呑まれるな。後悔先に立たずである。


 因みに典子の方は未だに成敗しようとしているので、好々爺然としたおじさんたちは典子がいそうなところには近寄らないので必然的に典理にも近寄れなくなったのだが。



 まぁ、そんなこんなで典理は性というものを極端に嫌がるようになった。というより自分の中にあるエロがっぱが怖いのだ。



 あの机の上の河童さんを思い出すたび、自分の中の何かがぶるぶると震えた。



 ダイダラボッチの両親は両方190㎝を超えているが、典理は160㎝ギリギリあるくらいだ。



 そして見た目も少し幼く見える。つまり弱そうなのだ。河童になったら力強さでは負けないのだが、河童になるのは怖いのでそうそうならない。電車で通学していた時なんて痴漢にもよくあったからますます性から遠ざかり、自分のものすら処理をほとんどしなくなった。


 処理した時に出る白濁としたものを見ると、あの時の酒の卓に並んでいたお皿の上のキュウリのピリ辛漬けが思い出されるのだ。


 ピリ辛漬けは好きなので食べるが。





「これでも河童のなかじゃあ大きい方なんだ。河の子どもと書いて河童だろ。150センチを超える事は少ないんだ。な、だからいつも両親のおかげだなぁなんて言って」
「そうそう、ほんと珍しいよな。よ、河童界の巨人!」


 その名前はうれしいのだろうかと典理を見る。医者と少年が言うと照れたようにはにかむ典理が目を水郷と半夏に向けた。



「僕の中の河童も尻子玉の力を持っています。現在は尻子玉をとるようなことはしないので安心してください。ただ、尻子玉を吸収しようとさせる力が強くて」
「吸収?」


 
 赤裸々に色々と語ってくれている典理は、恥ずかしいのは恥ずかしいようで首筋を赤くさせている。しかしそれはそれなのだろう。一生懸命説明するために、河童についてさらに話してくれた。






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