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4.一度目の世界

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 そんなときに接近してきたのが、クレスウェル公爵家のルディ様だった。

 ルディ様は上の兄クリストファーの友人だ。そのため以前から面識はあったが、特に深い交流があったわけではない。

 それなのにルディ様は、急に「君が沈んでいると聞いて心配になったんだ」なんて言ってアメル家に何度もやってくるようになった。時には気晴らしにと外出にも誘われた。

 はじめのうちはそれがうっとうしくてならなかった。

 しかし、ルディ様はこちらの感情に合わせるのがうまく、私のジャレッド王子やカミリアに対する悪感情を全て肯定してくれた。

 とても表には出せないような醜い感情を、そんな風に思うのは当然だと受け入れてもらってから、私はじょじょにルディ様を信頼するようになっていった。


 ある日私は、「カミリアを消せたらいいのに」とつい呟いてしまった。

 対象がジャレッド王子ではなくカミリアなのは、愚かにもまだカミリアさえいなくなればジャレッド王子はこちらを見てくれるのではないかという思いが残っていたからだ。

 そんな私にルディ様は真剣な顔でうなずいて、それなら人を紹介してあげようと言った。

「エヴェリーナさんの気持ちはよくわかるよ。二人に復讐してやろう。君にはその権利がある」

 復讐という言葉は追い詰められていた私の心に甘く響いた。

 カミリアが血を流して傷つくのを見たら、彼女がこの世から消えて苦しむ王子の姿を見たら、この沈みきった心も晴れる気がする。

 しかし、そこで彼の言葉にうなずいてしまったのが、最大の過ちだったのだ。


 ルディ様に暗殺者の名前を紹介された私は、彼の言うままに変装して寂れた町にひっそり佇む小屋を訪れた。出てきた男に小屋に招き入れられ、カミリアを殺してくれるよう依頼する。

 しかし、計画は笑ってしまうほどあっさり失敗して、捕まった実行犯はすぐさま私に依頼されたのだと白状した。


 私が暗殺に関わった証拠は次々と出てきた。

 実行犯の男に会いに行った日の目撃情報や、やり取りの手紙など、都合がいいくらい簡単に証拠が増えていく。一方、ルディ様が暗殺者の紹介に関わったという情報は一つも出てこなかった。

 恨みに惑わされてすっかり頭の鈍っていた私にも、彼の罠だったということは察せられた。けれど、今さら気づいたところでどうにもならない。

 証拠は十分で、何より私にはカミリアに危害を加える動機がある。

 公爵家に押し入ってきた兵士に捕らえられ、私はあっけなく投獄された。嫉妬にまみれた女が考えなしに甘い言葉に飛びついてその報いを受けただけの、自業自得の結末だった。

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