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【一章】異世界でプラモデル

15.レクチャー

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「はあ……なんでこんなことに」

 俺はこれでもかというくらいうなだれながら、会場へと入った。
 確かにいつか魔動人形に乗りたいとは思っていたものの、今このタイミングじゃない。

 他人の一生がかかった勝負を背負うには、普通の高校生だった俺の人生経験ではあまりに浅すぎる。プレッシャーに押し潰されそうだ。正直誰かに代わって欲しい。

「サガミ殿。すまないがこうなった以上、我らは君に賭けるしかないのだ」

「エドワルドさん……でも俺、戦ったこともなければ、魔動人形マギアドールに乗ったことなんてないんですよ」

 前に確認した俺のステータスは魔力『S』だったので、問題なく起動はできると思う。だが戦い方なんてさっぱりわからないのだ。

「ケイタさん、口頭になってしまいますが、私から説明しますね。実は私乗った経験があるんです」

「ああ、頼むよシルヴィア」

 シルヴィアも魔力が基準値まで達していたのだろうな。クロードさんは魔力が無くて乗れないらしいけど、適正がある人はそう珍しくもないのかもしれない。

 ……ともかく、こうなったら皆のためにやるしかない。とりあえずできるだけ説明は聞いておかないとな。
 
「……と言っても難しいことではありません。搭乗すると魔力核の中に自分が入ることになって、そこにある思念伝達装置に触れながら念じることで操作が可能になるんです」

「なるほど……確かに思っていたより簡単そうだな」

 コックピットっていうと、もっとレバーとかボタンとかがめちゃくちゃ大量にあるイメージだったけど、聞いた感じでは意外にいけそうな気がする。
 まあ魔法で動いてるみたいだし、あまりメカメカしい感じではないんだろうな。

「ええ、初めてでも十分に戦うことはできると思いますよ」

「おおっ……! なんか大丈夫な気がしてきた!」

「あ、でも……起動式を発動するには、まずは身体のどこかに契約紋を刻まないといけないんです」

 え、契約? 大丈夫っすかそれ。後で多額の請求がきたりとかしない?
 契約って聞くとろくなもんじゃないイメージしか湧かないな。

「えと……それって何か問題とかあったりするのかな?」

「紋章を刻むのはすぐ終わります。痛みはちょっとちくっとするぐらいですかね。ただ、1つだけ大きな代償があります」

「だ、代償……!?」

 巨大兵器を扱えるようになるのだ、そりゃあ何かしらのリスクもあるだろうな。
 いったいどんな代償を支払えばいいんだ!?

「はい。契約紋を刻むと、刻まれた本人の魔力総量が減少してしまうのです。これは魔動人形の起動に必要な魔力を常に紋章に与え続けるためだと言われています。……そのため、人によっては契約紋を刻んだが故に、魔法を使えなくなってしまう人もいるんです」

 あーなるほどね。ゲーム的に言うと最大MPが減るってことか。どれだけ魔力が減るかはわからないけど、俺のステータスだったらさほど問題はないだろう。
 そもそも今のところ魔法使えないしね。そう考えれば俺にとっては大したデメリットじゃない。

 どっちにしろ魔動人形には乗りたいし、早速紋章を刻んでもらうとしよう。

「俺は魔法を使えないし、問題ないよ。時間もないし早いところ契約紋ってやつを刻もう!」

「はい、わかりました。クロード、アーティファクトをここに」

「かしこまりました」

 クロードさんがランナーが入っていた箱を俺の前へと持ってくる。なんか魔動人形を作り終えたら中が良い感じの収納ボックスに変化してたんだよね。
 今は作った魔動人形を入れてあるはずなんだけど……。他にも何かしらの機能があるってことか。

「ケイタさん、このアーティファクトにある模様に手を当てて『契約実行』と念じてください。魔力が足りていれば契約紋が刻まれるはずです」

 言われるがままに模様に手を当て、念じる。
 すると、模様が光り始めて、俺の右手の甲に紋章が刻まれはじめた。

「おおっ! これが契約も――いてっ! 痛い痛いっ!」

 シルヴィアはちくっとすると言ってたけど、俺の体感としてはそんなもんじゃない。
 例えるならば針で何度も刺されているような感覚だ。いや、実際にやられたことはないんだけども。

「はぁ……はぁ……」

 よ、ようやく終わった……。
 1分にも満たない短い時間だったけど、めちゃくちゃ長く感じた。痛さのあまり、俺の目の端には涙が浮かんでいた。

 だって涙が出ちゃう。メンタル弱い男の子なんだもん。

「お疲れ様です。これでケイタさんも魔動人形に乗れるようになりましたよ。あとは待機状態の魔動人形を持った状態で起動呪文を唱えれば搭乗できますよ」

「……おお、うん」

 俺は流した涙を見られないように、シルヴィアに背中を向け涙を拭った。男の沽券に関わるからな!
 あっ、カトリーヌさんと目が合った。ああ……初めて注射を受けて泣きじゃくる子供を見るような目をしてらっしゃる……。

「さて、無事契約紋も刻まれたことだ。早速受付を済ませよう。行こうか、サガミ殿」

「あ、はい。わかりました」

 魔力の最大量が減ると聞いていたのだが、ぶっちゃけ体感では何も変わらなかった。


 そしてエドワルドさん先導のもと、俺は受付を済ませることができた。
 そして、いよいよ運命の決闘が始まろうとしていた……。
 
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