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二十九話 「ダンジョンボスへの挑戦」

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休暇を取った翌日、アッシュ達はダンジョンへとやって来ている
丸一日ゆっくりと休むことができたアッシュ達は普段よりも体が軽く、サクサクと階層を進んでいった


『アッシュさん、新しい防具はどうですか?』

『はい、いい感じです』


今朝方ダンジョンに行く前に防具店に行き、頼んでいた防具を受け取り早速今日のダンジョン探索で使っている
防御面は実際に攻撃を食らってみないことには分からないが、以前の防具と重さも変わらなかったし着け心地も全く違和感がなかった
やはりあの店に任せたのは正解だったようだ


『それにしても本当にダンジョンボスは復活しているんですかね』

『どうでしょう・・・あくまで占いですからね』


昨日の老婆のあの言葉、信憑性は皆無だが今日はどの道ダンジョンに行く予定だったので試しにダンジョンボスの部屋の前まで行って確認してみることにした
危なげなく階層を次々と下りて行ったアッシュ達は数時間程でボス部屋がある階層に到着
この扉はダンジョンボスがいない時は決して開くことがない
つまり扉が開けばダンジョンボスが復活しているということになる
アッシュが扉に手を当てて目一杯力を入れて押してみる
すると扉はゆっくりと動きだした。アッシュとアレッサはお互いの顔を見合わせる


『動いたということは・・・』

『ダンジョンボスが復活していますね』

『あのお婆さんが言っていた事は本当だったということですか』


偶然ということも十分考えられるが結果的に老婆の占いは的中したということになる
もしもダンジョンボスが復活していた時の為にモリンに頼んで作ってもらっていたアイテムの類もちゃんと持ってきているので今すぐにも挑むことができる
復活早々真っ先に挑戦することが出来るのは願ってもいないチャンスだ


『アレッサさん、いけますか?』

『私は大丈夫です』

『クウは・・・大丈夫そうだね』


アレッサの表情から怯えている様子はない。クウもやる気満々をアピールしているので士気は問題なし
かくいうアッシュは緊張している反面、いよいよダンジョンボスに挑める日がやってきたのだと気持ちが昂っていた
気持ちを一度落ち着かせる為に一度大きく深呼吸をし、それから最後の確認に入った


『ここに来る前にも話しましたがこのダンジョンのボスはジャイアントオーガです』


始まりの町ルートのダンジョンボス"ジャイアントオーガ"
情報によると大きさだけでいえば今まで戦ってきたミノタウロスやオークなんかの倍はあると聞いている
そしてオークのように装備を身につけているらしい
勿論オークのような粗末な装備ではない
その上ジャイアントオーガの皮膚は非常に硬く、アッシュの力では傷を与えることは難しい


『そこで今回僕はアイテムを使ってオーガを足止めしダメージを与えていきます』

『モリンさんに頼んでいたアイテムですね』


モリンに頼んで作成してもらったアイテムは足止めをする為の物とダメージを与える二つ
思いつきで作ってもらったもので果たしてこのアイテムがジャイアントオーガに通用するのか不明だが、その時は作戦を変えて戦うまでだ


『動きを止めた後はアレッサさん手筈通りにお願いします。そして頃合いを見てもう一つのアイテムを使うので合図をしたらできるだけジャイアントオーガから離れて。クウはなるべくオーガの注意を引くようお願いね』

『分かりました』


クウもアレッサ同様頷き作戦を了承
打ち合わせを終えるとアッシュは再び扉に手を当てる
この扉の中に入ったら最後、扉は自動的に閉まり中から出ることは出来なくなる
ダメそうだった一度逃げて体制を立て直してまた再挑戦、なんて今までのような都合のいいことは出来ないのだ


『開けます、必ず勝ちましょう』

『はい!』


アレッサの力強い返事と共にアッシュは扉を開けて中へと入る
扉の先は円形状の部屋で天井はなく吹き抜けになっていた。そこにジャイアントオーガの姿は見当たらない
全員が中に入ると扉がゆっくりと閉まっていく
扉が完全に閉まるのを確認しどこから現れるのかと警戒しながら部屋の中央に向かっていくと、上から嫌な気配を感じた
それをいち早く察知したアッシュは他の二人に向かって叫んだ


『上から来ます!離れて下さい!』


鬼気迫る声にアレッサとクウはすぐさまアッシュの指示に従い全力で中央から離れる
その数秒後、上から巨大な物体が降って来る
それは凄まじい音を立てて着地した後雄叫びを上げた


『グオオオオオオオオオ!!!』


部屋が震え体の芯にまで伝わってくるような雄叫び
頭には二本の角、鋭い牙に爪が生えておりその手には石で作られた石斧
間違いなくこのダンジョンのボス、ジャイアントオーガだ
アッシュが気がつかなければ登場と同時に全員踏み潰されるところだった

オーガの登場で広いと思っていた部屋が狭く感じる
今まで対峙した時とは比較にならない圧もヒシヒシと感じた
やはりダンジョンボスは他の魔物とは違う風格がある
だがそれは事前に分かっていたこと
この魔物を倒す為にこれまでやってきたのだ。怖気づいてなんていられない
こちらにゆっくりと向かってくるオーガの動きを皮切りに、アッシュ達のダンジョンボスへの挑戦が始まった


『いきます!』


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