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スエル・ドバードの酒場

#10.寝室

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「ねえ? ちょっとシャワーを...」

3階にある寝室に入るなりセシリアは、自分の体臭を気にして口にする。

急いでルモーサ駅から戻って来たばかりであったし、それに今日は、朝から徒歩での酒場の集金や大事な母の墓参りに向かって身体中が汗でベトベトになっていた。

しかしそのセシリアを、あとから入って来たズバルは横にあるベッドの上に乱暴に押し倒す。

「さあ...脱げ?」

ズバルはそう促し、セシリアの胸元が大きく開いたブラウスを舐めるように見てから、身体を起こし自身も身に付けていた鎧のベルトを緩める。

「時間が無いのでな? ..お前と遊んでやれるのも深夜の1時過ぎまでが限界だ? ...さあダラダラしてないで早く脱ぐんだ?」

その時の時刻は、まだ20時半を回ったばかりだった。

ズバルは鎧を外し衣服を無造作に脱ぎ捨て、

まだ下着を脱ぎ終えていないセシリアに抱き付いて、

彼女の下ろしかけていた下着を片手で乱暴に脱がす。

無言で嫌がるセシリアを力付くで抱き寄せ、首筋から耳たぶ辺りまでを舌を這わせたあと、その口元をセシリアの唇へと持ってくとセシリアは、直ぐにそのズバルの口元から顔を突き離した。

「..やめて..口づけは...口づけだけは..勘弁してくれって言ったろ!」

そのセシリアの急な叫びにズバルは間を置き..

「...お前..まだそんなこだわりを持っているのか?

せめて口づけ..だけでも好きな人と...ふん! ずいぶんとロマネスクだな?」 

「...悪いのか? こだわりを..持っては...」

「いや...だが少々その気性の荒らさだけは..なんとかしなくてはな?

そんなことではロマネスクが泣くぞ?

さあお仕置きだ。ケツをこっちへ向けろ!」

そう言い放ったズバル方にセシリアは言われる通りに尻を向けるとズバルは、

ピシャリと振り払うように片手でセシリアの尻を叩いた。

───

ズバルに弄ばれて30分以上が経った時、セシリアは喉元に付いたズバルの体液に不快感を覚える。

その臭いは、セシリアにとっていつもの事で慣れてしまっていると言えばそれまでだが、この日はその臭いが気になり今直ぐにでも拭き取りたいと思っていた。

セシリアはそんな気分を誤魔化す為にベッドの横にある3メートルほど離れた位置の窓の外を見る。

暗いだけの夜景の近くで何か動くものが見えた。

小さい人影のような...

ズバルが、またセシリアにうつ伏せになるように指示して、セシリアがその通りに姿勢を変えようとしていると窓の外からこっちを見る小さい男の子に気が付いた。

(...なんで子供が私を見てるんだい? ...全く..ませたガキだ)

セシリアは、その3階の外のベランダにいる男の子が気になる始めて..

(どうやって上がって来たんだ? まあ上がって来れない高さの場所じゃないが? でもどうやって? ..ははーん...路地裏にあるハシゴを使ったな? あの悪ガキ...あぶないことを楽しむタイプの男だな? ふん..全く)

目の前の壁を見てそう考え、もう1度その窓を見るとまた男の子が外から顔を覗かせてベッドの上にいるセシリアを見ていた。

セシリアがズバルの注意が完全に自分の体にいっている事を確かめるとセシリアは..窓の外にいる男の子に目で合図を送る。

(向こうに行け! ..ここはお前みたいな子供が来る所じゃないの?)

そのセシリアの必死の目の訴えに対して外にいる男の子は、1を右手で2回指さしてから..

左手を上げる。

(..何を持ってるんだ? ...あっ!? あれって...手綱じゃないの?)

その男の子が持っていたのは、馬に付けてある手綱であった。

しかし、よく見るとその手綱の繋ぎ部分の紐は、刃物か何かで切られたように垂れ下がっており、それに気づいたセシリアは、

(あの野郎? ...いきなことしやがってよ...いったい何処の悪ガキだい! 全く...ふふ)

そのセシリアの嬉しそうな表情に気づいた男の子は、にったりといたずらを成功させたあとにする表情を見せる。 

「..うん? なんだ...窓の外に何かあるのか?」

そのズバルの声にハッ! として、

窓に目を向けたズバルの方を見た後、

セシリアはもう1度、窓の外に目を向けたが...

既に窓の外にいたあの子の姿は消えていた。

「ええ? ...外の..外の星を見ていたのさ..」

「...星だと? ...随分とさっきからロマネスクだな? 口づけを拒むといい...星を見ていたといい...」

「悪いか? ..ロマネスクを信じてはいけないのか?」

「..いいや? ダメだとは言っておらん...だが、その性格をどうにかしなくてはいかんな? せっかくのロマネスクも泣いておる...なあ、セシリアよ? お前は上級の女だ。..お前のような女は、そうそう見つけられるものではない。

それに見てみろ? アルダ・ラズムの他の連中もお前の体を追ってわざわざこんな田舎町にまでやって来るではないか?

しかも、少し見ぬ内にこんなにいい体になりよって...

そこでどうだ? その性格を改めんか?

お前には、そんな荒々しい性格は似合わん...

最初、お前の噂を聞いてやって来た時は、とてもおとなしい性格だったではないか?

....改めろ。そうすれば俺の愛人にしてやる?

そうなれば他のアルダ・ラズムの兵士に抱かれなくて済むぞ?

どうだ...悪くはないと思うがな?」

ズバルはそう言いながらセシリアの左の乳房を軽く揉んで、その手を彼女のくびれた右側の腰にへと回した。

そんなズバルの手を彼女の手は追って掴み、その手を自分の腰から引き離すと、ズバルの目を見て言葉を返す。

「....アルダ・ラズムの愛人になるくらいなら..

娼婦をやってる方がましですわ?」 

そのセシリアの言葉が終わると間を置いて、力んだズバルの手がセシリアの頬を打った。

「口の減らん女だ! さあ早くケツをこっちへ向けろ!

こっちは明日の大仕事の為にカリカリしているのだ! ..ええい! 早くしろ!」

セシリアは、そう言われた通りにもう1度ズバルの方へ尻を向けるとズバルは、そんなセシリアの耳元に吐息を交え、冷たく忠告した。

「そうだ..忘れておった。あのお前が怒らしたアグロだが...

周りも怖がるほどの気性の荒さでな...私も少々気を揉んでいるのだ...気をつけろよ?」

ズバルはそう言った後、セシリアの尻を強く張ると静かな部屋の中でその音が虚しく響き渡る。

(...今頃..あの子が逃がした馬は...草木の匂いに誘われて迷いの森へと向かってんだろうなぁ....

私もあの子に逃がしてもらおうかな...迷いの森へさ?)

セシリアは、打たれて痛みを感じる頬に涙が1滴零れ落ちると、こころの奥底から哀愁の交じった想いがふつふつと込み上げ、涙がもう1滴と続くのを堪えて、それを噛み締めた。
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