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伯爵様の元での生活

♪真夜中の異変

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「はぁ……………あ………………」

 唇を噛み締めていても、喘ぐような声が漏れてしまう。

 身体が熱い。そしてじれったいような、もどかしいような、今まで感じたことが無い強い疼きが全身を取り巻いている。

 それは最初は眠ってしまえば、誤魔化せるものだと思った。そして朝になれば、この疼きはきれいさっぱり消えると思った。けれど、この苦痛は時間が経つごとに激しさを増していく。

 もう、眠気などさっぱり消えてしまっている。けれど、夜明けまではまだ先。こんな状態で独り夜を明かすなど、耐えられそうにない。

 ────私、どうしちゃったのかしら?

 そこまで考えても、激しい苦痛のせいで、思考が散ってしまう。そしてただひたすらに、何かを求めて喘ぐことしかできない。

 …………だから私は、気付けなかった。静かに開いた扉の音に。





「アスティア、どうしたの?」

 暗闇の中、心配そうなその声で、レイディックがこの部屋に足を踏み入れたことを知る。

 ああ、しまった。私の声が、扉の外まで漏れてしまっていたのだろうか。

「…………レイ、うるさくしてごめんなさい。だ、大丈夫。なんでもないの」

 これっぽちも大丈夫ではない。けれど、咄嗟にそう口にした私に、レイディックは眉間に皺を寄せてこちらに近づいて来た。

「こんなに苦しそうにしているのに、大丈夫だなんて…………。アスティアは嘘つきだね」

 呆れ交じりに溜息を付くけれど、レイディックの口調はとても優しいものだった。そして、私の枕元に腰かけると、そっと手を伸ばす。

「酷い顔色だよ」

 そう言いながら、彼は私の顔に張り付いた髪を優しく払ってくれた。

「…………レイ」

 堪らない気持ちで、彼の名を紡ぎ手を伸ばす。

 そうすればレイディックは、私の手を壊れ物を扱うように、そっと包んでくれた。けれど、すぐに、はっと何かに気付いたように、短い声を上げた。

「もしかして、傷口が腫れているのかな?ちょっと見せてね」
「え?いっ、嫌。駄目っ」

 止める間も無かった。

 レイディックは、私の掛布を剥ぎ取り、そしてナイトドレスの裾をめくったと同時に、下着まで剥ぎ取ってしまった。

 そして、先程薬を塗った時のように、私の足を大きく広げる。

「………………ああ、こんなにも。辛かっただろうね」
「あっ……、んっ」

 秘部に当たるレイディックの息すら、眩暈がするほど身悶えてしまう。

 そう、私のそこは、もうぐちゃぐちゃになっていた。じくじくと熱を帯び、雫が太腿まで溢れ、その奥は強い刺激を求め続けている。

 そんな自分をレイディックに見られたくなかった。けれど、彼は閉じようとする私の膝をぐっと押さえつけ、更に問いを重ねる。

「こんなふうになるまで、ずっと一人で耐えていたの?何もしないで?」

 それは暗に、自分の手で癒してはいないのかと問われているようだ。

 すかさず首を激しく振った。レイディックに言われるまでそんな発想すらなかった。それに、この熱は自分では癒すことができないものだと本能が告げている。

 なら、誰なら良いのかといえば───

「レイじゃないと…………駄目なの」

 そう口に出した途端、レイディックは小さく息を呑んだ。そして、躊躇なく、私の秘部の襞をかき分け、指を入れた。

「はぁ………んっ、そこ……あっ」

 彼の指を感じた途端、鳥肌が立つほどの快感に襲われる。

 そしてもっと激しい刺激を求め自ら求めるように、雫がぷしゅりと溢れ出す。それに応えるかのように、レイディックは激しく指を動かした。

「こうかな?」
「ええ………そう…………あっ、んっ、んんっ…………あああっ」

 ずっと待ち望んでいた刺激に、私はあっという間に絶頂を迎えてしまった。

 けれど、レイディックは指を引き抜くことはしない。絶え間なく私に刺激を与え続ける。

「ああっ…………レイ、良いの……そこ……すごく、んんっ」
「そう、ここが良いんだね」

 理性などかなぐり捨てて、甘い声を上げる私とは対照的に、レイディックの声はとても冷静だった。けれど、その温度差に恥ずかしいと思う余裕はなかった。

 的確に気持ちの良い場所を引っ掻くように刺激され、掻きまわされる。今はもう、淫らな女と思われても良い。とにかくこの熱を沈めて欲しい。

 その思いだけで一心に、レイディックの指を嬉々として受け入れていた。───けれど、その刺激はすぐに物足りないものになってしまった。

「ん?アスティア、足りないの?」
 
 まるで私の思考を読んだかのように、レイディックが優しく問いかける。

 それは、とてつもなく淫らなこと。そんなふうに頭の隅でそれに気付いたけれど、もう私はどうでも良かった。

「…………ええ、そう。レイ、もっと」

 レイディックの問いに、私は何度も何度も頷く。そして更なる刺激を求め、腰が誘うように動いてしまう。

「うん、わかった。良いよ、アスティア。もっとしてあげる」

 私の淫らなおねだりに、レイディックは応えてくれる。けれど、私が求めるのは、もう彼の指ではなかった。

「ねぇ、レイ。違うの…………お願い。レイのこれで………して………」

 何を求めているのか、それを言葉で訴えることができない私は、いつの間にかレイディックにそれに手を伸ばそうとしていた。

 けれど、私の手がレイディックの下衣に触れるか触れないか、というところで彼はすっと身を引いた。

「ごめん、アスティア。そうしてやりたいのは、山々だけれど、駄目だよ」
「そんなっ。どうして!?」

 思わず肘を付いて身を起こす。

 ここまできて、それを与えてもらえないなど…………考えただけでも発狂しそうしそうになる。気付けば私は、涙が滲み視界が歪んでいた。

 そんな私を見て、レイディックは優しく手を伸ばし、目尻に溜まった涙を拭ってくれる。けれど、彼が語るのは、とても残酷なものだった。

「だって君が望むことは、特別な人………はっきり言って夫か婚約者だけしかできないことだよ。でも、僕は君の婚約者じゃないから、これ以上はできないな」

 いかにも弱ったというように、眉を下げながら、レイディックはそんな残酷なことを口にする。

 けれど、そう言いながらも彼は下衣を寛がせ、そのいきり立つ熱いものを私の秘部に当てがった。しかもそれを、くすぐるように、こすりつける。

「………………そんな…………嫌よ。お願い。私、おかしくなりそうなの」

 ぬるぬると潤った私のそこは、少し腰を動かせば彼のものを、するりと受け入れることができる。けれど、レイディックはそれをさせないように、私を膝の上に抱き上げた。

 そして喘ぐように唇を震わす私の口元を指でなぞるように触れた後、こんなことを口にした。

「そう?困ったな。じゃあ、さ」

 そこでレイディックは言葉を一旦区切って、私の耳元に唇を寄せ囁いた。

「アスティア、僕の婚約者になってよ」と。
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