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2章: 戦術なき軍師

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「・・・・・・仕方ありませんわ。それは認めましょう。しかしながら、ゲオルグ家の加盟を背負う身でありながら、神聖な決闘に対するこの不誠実な態度は見過ごせませんわ! 武人としての良識を疑います。どうか決闘の継続を・・・・・・」
「まだわかっていないのかね? 今判明した通り、この決闘は君の勘違いから端を発する無意味な抗争だ。君が勝とうが、レムダが勝とうが、勝者にメリットはない。故にレムダは無用の血を流すのを避け、自身のプライドと引き換えに最も損害の低い選択として、自ら敗北を認めたのだ。最初に私に決闘の勝敗条件を明言させたのは、そのことを強調するためであろう。この男は私が決闘の開催を宣言する以前に、ある意味で既に勝者だったのだ。それに気づかず、今なお無駄な争いを続けようとする。それこそ武人としてどうかと思うが?」
「・・・・・・くっ、わかりました」
 フェリスは渋々剣を鞘に納めた。
 レムダも立ち上がった。
「この決闘の勝者はフェリス=トレスデンとする。各々異論はあるまいな」
 会場内の拍手喝采は一向に冴えたものではなかった。
 皆、拍子抜けしたというか、一杯食わされたようなスッキリしない表情で立ち去っていく。
「私は執務に戻るが、君達はいつまでこうしているつもりだね?」
「いえ、私も戻ります」
 フェリスは振り返りざまにレムダを睨みつける。
 勝者の目つきではなかった。
「さてと、僕達も戻るとしようか。シア」
「お~、これでたらふくご飯が食えるな! でもいいのか? レムダ様は負けたんだろ?」
「いいさ。戦いは常に勝つことだけが最適解じゃないのだから」
「それってどういうことだ?」
「シアには難しいかもな。それよりもお前、頼むから今度こそ服はちゃんと着てくれよ」
 軍人ばかりが集うこの士官学校で、レムダの取った行動がおよそ認められるとは思っていなかったが、学長だけでも理解してくれていたことは救いだった。
 ただ、大半の生徒や教員は学長の考えを理解せず、結局レムダは敗者として士官学校の生活を始めることになるのだった。
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