26 / 113
招かざる客
しおりを挟む
ビルベリーはブルーベリーよりも水が出やすいので傷みやすい。小さいし。
帰ったらすぐに洗ってジャム作りに取りかかろうね! と、私たちはウキウキ家に帰った。
ものすごくたくさんビルベリーが取れたんだよ!
私のカゴもいっぱいだし、チャーリーとアリスのカゴもいっぱいだ。ビルベリーは小さいので木綿の布巾を敷き詰めて、実がカゴの編み目に入らないようにしたんだけど、正解だった。
「ジャムを作るんだったら服の馬が必要だろう?」
チャーリーが言う。
服の馬?
大慌てで「知識」を確認して物干しスタンドのことだと理解する。
そっか。
木馬みたいに見えないことも……ない?
暖炉の熱は結構貴重だから、果物を干したり、服を干したりに利用するんだね。冬場なんかはそうするしか洗濯のしようがないし。
「服の馬、あったんだけど、壊れてて……」
これはメンストンさんたちが預かってくれなかったもので、というのもちょっと壊れていたんだ。そういうわけで物置の隅に転がっていた。
「あー。じゃあ、そのうち直してやる」
チャーリーは腰が軽い。
ありがたいけれど、子供にここまで世話になってしまうことに申し訳なさがあるなあ。
「服の馬の上でビルベリー乾かすといいよ!」
アリスちゃんがウキウキ言ってくれる。あ、それもあるのか。
ちゃっかりしてる。でも、こういうところは嫌いじゃない。
今すぐ食べるのも楽しいけど、先のことを考えるのも嬉しいよね!
三人で色々なことを話して笑いながら帰ってきたら家の前に馬がいた。
「見覚えのない馬だ……」
チャーリーは馬の判別がつくんだね。私には「茶色い馬」とか「黒い馬」くらいしか区別がつかないけれど……。
「あ、良かった!」
エレンさんが馬の向こう側に見知らぬ男性と立っていて私に手を振った。
「留守だったからどうしようかと思ってたのよ」
「こんにちわ」
頭を下げてよく見ると、男性はストウブリッジの市で、最初にガラスを買った人だった。あのヒゲモジャの人ね。
何の用だろう?
「こちら、ストウブリッジのハーマンさん。マージョにお話があるんですって」
エレンさんはニコニコしてる。
「そうですか」
私はドアを開け、チャーリーとアリスちゃんを入れると、エレンさんとハーマンさんを庭の小さなテーブルに招いた。
「それではよろしければ、こちらに。生憎、家の中は散らかっておりまして……」
数日前にメンストン家から返ってきたばかりの簡素な机とベンチだけど、何か、私はこの人を家に入れたくはなかった。
家の中にはカーテンもあるし、タオル地のラグもあるしね。見知らぬ人を入れる気はしない。女性の一人暮らしだっていうのも知られたくないんだよ。もうエレンさん経由でバレてるかもしれないけど。
とはいえ、私も長い道のりを歩いてきて疲れているし、喉も乾いた。
「大したものはありませんが、何かお飲みになりますか」と、尋ねると、ハーマンさんは頷いた。
「良ければ水を一杯いただけますか」
……今日は暑かったものね。
一応はお客様だから何かを勧めないというのもなんだろう。
「それではミント水を持ってきましょう。ここでお待ち下さい」
小屋に入るとアリスちゃんが、「あの人だれ?」と小声で聞いた。聞かれても私もよくわからないんだよね。
とりあえず、水差しに生活魔法で冷たい水をなみなみといれ、今朝摘んだばかりのミントを加えた。チャーリーとアリスちゃんにもオレンジの砂糖漬けを浮かべた水を出す。
「ごめんね、先に準備しておいてくれる?」と、尋ねると二人は真面目な顔をして頷いた。
長い話になるかなあ。
ジャムを煮たいんだけど……!
それに猿酒もちゃんと仕込みたいし、今日はやりたいことがいっぱいあるんだよ!
帰ったらすぐに洗ってジャム作りに取りかかろうね! と、私たちはウキウキ家に帰った。
ものすごくたくさんビルベリーが取れたんだよ!
私のカゴもいっぱいだし、チャーリーとアリスのカゴもいっぱいだ。ビルベリーは小さいので木綿の布巾を敷き詰めて、実がカゴの編み目に入らないようにしたんだけど、正解だった。
「ジャムを作るんだったら服の馬が必要だろう?」
チャーリーが言う。
服の馬?
大慌てで「知識」を確認して物干しスタンドのことだと理解する。
そっか。
木馬みたいに見えないことも……ない?
暖炉の熱は結構貴重だから、果物を干したり、服を干したりに利用するんだね。冬場なんかはそうするしか洗濯のしようがないし。
「服の馬、あったんだけど、壊れてて……」
これはメンストンさんたちが預かってくれなかったもので、というのもちょっと壊れていたんだ。そういうわけで物置の隅に転がっていた。
「あー。じゃあ、そのうち直してやる」
チャーリーは腰が軽い。
ありがたいけれど、子供にここまで世話になってしまうことに申し訳なさがあるなあ。
「服の馬の上でビルベリー乾かすといいよ!」
アリスちゃんがウキウキ言ってくれる。あ、それもあるのか。
ちゃっかりしてる。でも、こういうところは嫌いじゃない。
今すぐ食べるのも楽しいけど、先のことを考えるのも嬉しいよね!
三人で色々なことを話して笑いながら帰ってきたら家の前に馬がいた。
「見覚えのない馬だ……」
チャーリーは馬の判別がつくんだね。私には「茶色い馬」とか「黒い馬」くらいしか区別がつかないけれど……。
「あ、良かった!」
エレンさんが馬の向こう側に見知らぬ男性と立っていて私に手を振った。
「留守だったからどうしようかと思ってたのよ」
「こんにちわ」
頭を下げてよく見ると、男性はストウブリッジの市で、最初にガラスを買った人だった。あのヒゲモジャの人ね。
何の用だろう?
「こちら、ストウブリッジのハーマンさん。マージョにお話があるんですって」
エレンさんはニコニコしてる。
「そうですか」
私はドアを開け、チャーリーとアリスちゃんを入れると、エレンさんとハーマンさんを庭の小さなテーブルに招いた。
「それではよろしければ、こちらに。生憎、家の中は散らかっておりまして……」
数日前にメンストン家から返ってきたばかりの簡素な机とベンチだけど、何か、私はこの人を家に入れたくはなかった。
家の中にはカーテンもあるし、タオル地のラグもあるしね。見知らぬ人を入れる気はしない。女性の一人暮らしだっていうのも知られたくないんだよ。もうエレンさん経由でバレてるかもしれないけど。
とはいえ、私も長い道のりを歩いてきて疲れているし、喉も乾いた。
「大したものはありませんが、何かお飲みになりますか」と、尋ねると、ハーマンさんは頷いた。
「良ければ水を一杯いただけますか」
……今日は暑かったものね。
一応はお客様だから何かを勧めないというのもなんだろう。
「それではミント水を持ってきましょう。ここでお待ち下さい」
小屋に入るとアリスちゃんが、「あの人だれ?」と小声で聞いた。聞かれても私もよくわからないんだよね。
とりあえず、水差しに生活魔法で冷たい水をなみなみといれ、今朝摘んだばかりのミントを加えた。チャーリーとアリスちゃんにもオレンジの砂糖漬けを浮かべた水を出す。
「ごめんね、先に準備しておいてくれる?」と、尋ねると二人は真面目な顔をして頷いた。
長い話になるかなあ。
ジャムを煮たいんだけど……!
それに猿酒もちゃんと仕込みたいし、今日はやりたいことがいっぱいあるんだよ!
応援ありがとうございます!
12
お気に入りに追加
38
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる