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食材確保

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「肉はね~。ちょっと難しいんだよ」

リジーさんは、困ったようにエプロンで手を拭きながら言った。

「こっちとしても夏のこの時期にあまり牛も豚も潰したくないんだけれど、値段を釣り上げられて二頭ずつ潰すことにしたんだよ」

入会地のウサギあたりだったらあまり季節を考えずに潰すことはできるけど、今年に限っては今の時期、どこでも肉を分けてもらうのは難しいんじゃないかな、とリジーさんは言う。


本当、返す返すも領主は何を考えているんだろう。
前の領主はバグスブリッジから少し離れた別邸に泊まって、屋敷のそばの森で狩猟を楽しんだりしていた、と聞いたけど、それってあれだよね、地元の平民から肉を奪わないためだったんだよね、多分。

「すごく古い塩漬け肉ならあるけど、それもあまり量はないんだよね」

ウサギを取ってくるくらいだったらうちの若いのに声をかけてあげることはできるけどね。

「今取っていただいたら塩漬けにするか干すかのどちらかですね……」

私は少し考えてから、ウサギの干し肉を買い取ると農場の人に伝えて欲しいとお願いした。

「野菜は、今どんどん育ってるものがあるから漬けていけば一月はもつね。うちが作ったら買うかい?」

はい……!はいっ! よろしくお願いします。

「豆類はうちよりも隣村のジェームソンのところのほうがいいんじゃないかな」

勝手口から帰ってきたゲリーさんが言う。

「あ、そうだねー」

リジーさんが説明してくれる。ヒツジの毛刈りの時にいつもお互い助け合っている隣村の農家のおじさんが怪我をして動けなくなっているのだそうだ。息子さんたちが中心になって農家の仕事は回ってるけど、市場に作物を持っていく人手が足りないから、こちらから足を運べばそれなりの値段を出せば作物を分けてくれるだろう、とのことだった。

「ていうか、他の農家は市場に行った時に契約を持ちかけられてるだろうと思うんだよ」

ゲリーさんは言う。

なんてこと!

肉だけじゃなくて野菜まで入手が大変かもしれないとか……

「この時期だと家でたくさんとれてるのは葉物野菜と人参とかかな」
「人参はたくさんとっても後でまだ撒けるし、ギリギリ冬には間に合うからね」

二人を見ていて、夏の終わりにはもう冬支度を考えているんだなと気づく。

「そりゃあそうよ。夏中かけて少しずつピクルスや干し野菜を作るんだもの」

農場は食品製造の一大工場でもあるんだよね。

「マージョにはお世話になっているからね」

リジーさんが明るく言う。

「チャーリーもアリスもお陰で試験に受かる目処がたったし」
「そうそう。それでね、アリスをバグズブリッジに連れて行かないかい?」

え?

「3週間、バグスブリッジのギルドに泊まるんだろう? 良ければアリスを手伝いにつけるよ。買い物に行ったり、野菜の下ごしらえをしたりできるからね」


正直人手はありがたいけれど、アリスちゃんはまだ7歳だ。親元を離すのは……。

でも、この世界だと徒弟に出ていてもおかしくない年齢ではあるんだよね。

「行きたい! マージョについて行きたい!!」

そこに駆け込んできたアリスちゃんが宣言。

……マジっすか?
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